今やパソコンで、簡単にデザインのできる時代です。小山裕己さんは、デザインのプロセスを最適化計算としてモデル化・自動化する「コンピュテーショナル・デザイン」を研究します。できあがったデザインの機能美、見た目の感覚的な好ましさをお目にかけましょう。
デザインの機能性、見た目の好ましさをコンピュータで最適化
コンピュテーショナル・デザインの話をしたいと思います。
例えば名刺をデザインするとき、フォント(文字)サイズを少しずつ変えていくと、デザインの見た目の好ましさも少しずつ変化していきます。このことを数学的に考えると、デザイン変数とデザインの好ましさを関係付ける何らかの関数が存在しており、デザインとはその関数の最大値を発見することなんだと解釈できます。つまりデザインの試行錯誤というのは、最適化計算を解くことなんです。
このように、コンピュテーショナル・デザインというのは、デザインのプロセスを数学的な最適化計算とみなしてモデル化し、コンピュータと数学の力を駆使することによってデザインのプロセスを拡張・支援することを言います。
私たちはまず、紙飛行機のデザインについてコンピュテーショナル・デザインの立場から考えてみました。ちゃんと飛ぶためには、翼の取りつけ角度等のパラメータを細かく調整する必要があります。私たちは、最適化計算による絶妙な調整を実現しました。その結果、ご覧のように、すごく変な形だけど、ちゃんと飛ぶ紙飛行機を誰でも作れるようになりました。
最適化計算は、モデル化するとこうなります。
次に、最適化計算で日用品をデザインできるようにしました。マグカップ+机、ギター+iPhone、スピーカ+棚…という具合に、モノとモノをくっつけるためのコネクタを三次元プリンターで作ってみたのです。
デザインのもう1つの重要な指標は、感覚的な好ましさです。感覚という曖昧なものをうまく扱うために、私はヒューマン・コンピュテーションというアプローチに着目しました。簡単に言うと、人間を計算資源と見なし、システムやアルゴリズムを組み込むことです。これによってデザインの好ましさを計算モデル化しました。
これによって、例えばデザインの良し悪しを色で可視化できる新しいスライダーインターフェースが実現できました。
さらに私たちは、「最急降下法」という最適化計算アルゴリズムを使って最も好ましいデザインを探索する方法を考案しました。これは、デザイン的な「良さ」の勾配方向にデザインを更新していき、最後に収束したところが最も良いデザインになるという方法です。これを用いると、例えばフォントサイズや写真の色調を調整できます。
コンピュータをうまく駆使することでデザインをもっと面白くできる研究をしていきたいと思っています。
アニメCGの現場 2017
CGWORLD編集部(株式会社ボーンデジタル)
主に2016年に放送・上映されたアニメ作品(「魔法つかいプリキュア!」「ガールズ&パンツァー劇場版」「君の名は。」など)を中心に、その作品でどのようなコンピュータグラフィクス技術がどのように使われていたかが詳しく紹介されています。アニメ作品の制作過程を垣間見ることができ、アニメファンには特におすすめです。「ああ、あのシーンはこうやって作られていたんだ!」とわかります。そのときに、アーティストの技巧の素晴らしさとともに、そこで使われているテクノロジーにもぜひ着目してみてください。
この本は技術書や学術書ではありませんので、コンピュータグラフィクス研究について直接的に知ることはできませんが、コンピュータグラフィクス研究が支える産業の一つである日本のアニメ産業の最先端に触れることができ、そこから背後にあるテクノロジーにも興味を持っていただければ幸いです。