昔からのものづくりは、手作りの職人技だったり、とてもアナログ的なイメージがあります。コンピュータのような最先端のデジタルな世界の技術になじむのでしょうか。手作りの楽しさを奪ってしまわないでしょうか。梅谷先生は、コンピュータの数値シミュレーションという、賢いコンピュータ技術を使った、楽しさを損なわない、新しいものづくりに挑戦しています。
デザインを形に。コンピュータ数値シミュレーションが支援する、ものづくり新時代!
服の型紙を自動的に作ってくれる
近年、コンピュータグラフィクスや3Dプリンター、レーザーカッターを使って、コンピュータ上でデザインし、ものづくりすることが、大変身近になってきています。家庭でも、個人に合ったものをカスタマイズして、自由にオリジナルなものが作れる、そんな時代が到来しています。
私はコンピュータを使って、ユーザのものづくりを支援するシステムの開発を行っています。デザインを形にすることは、とても難しいんです。そこを解決するためには、いかに賢いコンピュータを使うかが大きなポイントになります。
私は、どんなユーザでも使える服のデザインシステムを開発しました。このシステムは、実際にみなさんが着ている服のデザインから、2次元の型紙をおこしてくれます。この時、型紙を自動的に作るのに、数値シミュレーションという模擬実験をしてくれる賢いコンピュータを使っています。ユーザは画面に表示されている服の形をなぞっていくだけで、型紙ができます。あとはこの型紙をもとに生地を裁断して縫い合わせれば、服のできあがりです。
次に、コンピュータで楽器を作るシステムを開発しました。このソフトを用いて実際にウサギ型の笛を作ってみました。まずウサギの形を入力します。画面には立体ウサギが表示され、画面下に音階や、笛を吹くときの指の使い方などの音響シミュレーションデータが表示されます。このデータを頼りに、ユーザは、音響的に適切な大きさの空洞の形や、指を置くドレミの穴や吹き口の穴の位置を調整しながら、笛を作っていきます。できあがったウサギ型の笛のデザインを出力し、3Dプリンターを使って造形すれば完成です。
自動車メーカーと燃費の良い車のデザインを開発
さらに紙飛行機を作るデザインシステムを開発しました。まず紙飛行機の簡単なスケッチをし、これを入力します。コンピュータは飛行を最適化するように設計されていて、最適化ボタンを押すと、画面上で、羽根の位置や角度が自動的に調整され、よく飛ぶ紙飛行機の形がデザインされていきます。
できあがった紙飛行機は、見た目にちょっとへんてこな形をしていますが、飛ばしてやると、たいへんよく飛びます。実はこのシステムは、実際の高速飛行機の飛ぶ様子を、機械学習という人工知能技術を使った数値シミュレーションで再現しているのです。
最近では、日本の自動車メーカーと産学協同で、空気抵抗が少なく、燃費の良い車のデザインの開発を行っています。この開発にも、数値シミュレーションとして得られたデータを用い、車の周りの空気の流れや、空気抵抗の予測をしています。
かつて日本はものづくり王国と言われたほどでした。私はこのような賢いコンピュータをうまく使って、日本のものづくり新時代を盛り上げていきたいと思っています。