多くの薬は体の中に入って、初めて効果を現します。そのため、服用した薬がどのようにして血液中に入り、血液中から様々な組織に広がっていくのかを、研究対象としてきました。これは薬の効果や副作用に直結するため、その仕組みを知り、さらにはそれを制御することは非常に重要です。専門的には「薬物動態学」と言います。
薬の副作用や、飲み合わせの害を防ぐ
特に追求しているテーマは、薬物を細胞内に取り込むシステム、あるいは細胞内から薬物を排出するシステムです。さらに薬が細胞の中に入った後、有害な反応を引き起こす場合があります。一般的に副作用と言われるものですが、薬が副作用を引き起こすメカニズムや、その防御方法についても研究しています。
これらの研究を進めることで、例えば「トランスポーター」と呼ばれる薬を運ぶタンパク質が原因となって生じる、薬の飲み合わせによる有害な反応を回避したり、薬の副作用を低減することで治療を成功させたり、患者さんの負担を減らせたりすることにつながると思っています。
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「10.薬」の「37.薬理・薬物動態、臨床薬学・検査」
一般的な傾向は?
●主な職種は→製薬企業の創薬研究者・開発者
分野はどう活かされる?
多くの製薬企業には、薬物動態研究所や安全性研究所があります。そのため、研究室において経験した薬物動態研究や副作用研究の知識や技術は、卒業後の業務に直接活かすことができます。
広島大学の薬学部は入学定員が60人と少ないため、学生一人一人に行き届いた教育が行われています。
大学では「知識」を得ることも大事ですが、それを活かすための「知恵」を身につけてもらいたいと思います。
薬物動態を制御するための学問領域の一つに「ドラッグデリバリーシステム」があります。これは、目的とする組織・細胞へ選択的に薬を送り込むための方法を考え、実証するための学問です。高校生のフレッシュな感覚で、新しい「ドラッグデリバリーシステム」を考えてみるのも面白いと思います。