創薬化学は、新しい“薬”を開発し、薬の使い方を創る分野です。例えば、現在では有効な治療法がない、あるいは諸事情により注目されてこなかった疾患(デング熱、ヒトパラインフルエンザなど)をターゲットとして、治療薬の開発を行ったり、迅速な検出法の開発を行ったりします。デングウイルスの小規模な流行や、抗生物質に関する研究がノーベル賞を受賞したことで、関連分野の研究が一時的に流行しています。
しかし、これを別とすれば、やはり抗がん医薬品や血圧・心臓・アレルギー関連、精神疾患関連の研究が主流となっています。
病気に応じた適切な対応を早期に取ることが可能に
現在、インフルエンザウイルスを家庭で簡単(5分以内)に検出できる技術(化合物)の開発を行っています。完成すれば、家庭でインフルエンザかどうかを簡単にテストできるようになります。それによって、普通の風邪であれば、様子を見る、インフルエンザであれば、医療機関で薬剤耐性ウイルスかどうかなどの精密な検査をしてもらい、有効な抗インフルエンザ薬を早期に処方してもらう、という対応を取ることができます。
病気に応じ適切な対応を早期に取ることで、治療効果の最大化を図ることができます。また社会的には、現在よりはインフルエンザの流行を小規模に抑えることができ、インフルエンザにかかる人の数はもちろん、医療費の削減も可能となります。
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「10.薬」の「36.創薬系化学、製剤学」
一般的な傾向は?
●主な職種は→病院薬剤師、薬局薬剤師
分野はどう活かされる?
調剤、治験(「薬として使っても良いか」を調べること)遂行に関する業務(安全・倫理管理、データ解析など)。
医療・健康・福祉に関連する学部学科(薬学部、看護学部、栄養学科やスポーツ・健康に関する学部など)で構成されています。偏っているとも言えますが、多数の学部所属の学生による共同課目も設けられていて、他の関連分野の考え方に触れることができるように配慮しています。
大失敗(学生)の写真。人差し指の先にあるガラス器具:三方コック。空気を送ったり吸い出したりを切り替えるために使います。親指の先の丸い(茶色の液体が入った)器具:液貯め。上から送り込む有機溶媒をためておくもの。ガラスの筒:カラム。粉を詰めて、混合物から目的物を純粋な状態に分ける。本来は、液貯めに“透明な有機溶媒”を入れて、上から下へ押し出しながら、カラムを通して、混合物を分離します。この学生さん、三方コックにつなぐポンプを逆向きに接続しました。結果として、空気を吸い出すことになり、下から上へ逆流させて泥水のようなものが出来上がりました。
私たちの分野の研究を端的に表現するならば、完成した暁にはノーベル賞受賞など大きな成果として認められる反面、そこに至るまでの過程は極めて地味な分野です。量って、混ぜて、処理して、精製して……それでも100回に1回も好ましい結果にはならず、仮に好ましくても、より好ましいものを追求しなければならない宿命にあります。完成したと思っても、十分だと言われても、ずっと未完成です。最近は、人の思い付きよりもAIによる提案の方が優れていることもあったりして寂しくもあります。
でも、「こんな“もの(化合物)”が欲しい」と思えば、工夫と時間と根気で“(ほとんどのモノは)創れます”。誰でも、文字通り人類史上知れていなかった新しいモノを創ることができます。こうした知識や技術は、その気になれば、数年の時間は必要かもしれませんが、誰でも身につけることができます。それゆえに、その知識や技術がより良い世界になるよう活かされることを願っています。
・化学をうまく組み合わせることによって、犯罪捜査などに応用されています。
・血液の検出で知られる(自分で作った)カスルマイヤー試験による、法生化学(科学捜査)体験。
・2010年のノーベル化学賞に選ばれた“鈴木カップリング反応”を用いる蛍光色素(光る分子)の合成体験。