薬理学は、薬が体の中でどのように作用するかを学ぶ学問です。例えば、高血圧症の治療薬では、高血圧症の発症や病態に関係する因子について学び、それらを標的にした薬が作用する仕組みについて学びます。薬理学分野の最近の研究テーマとしては、がん、痛み、脳神経、生活習慣病、難病に対する新規治療薬の開発などが注目を集めています。
肺高血圧症の治療薬の開発へ
私たちの研究室の主要なテーマは「肺高血圧症の新規治療薬の開発」です。肺高血圧症は、20年以上前は不治の病とされていた難病の一つです。現在、いくつかの治療薬が開発されましたが、それらの薬が効かない患者さんが多くいます。そのため、新しいタイプの薬が期待されています。私たちの研究室では、細胞膜に発現するイオンチャネルや受容体と呼ばれるタンパク質に作用する新しいタイプの肺高血圧症治療薬を開発しています。
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「10.薬」の「37.薬理・薬物動態、臨床薬学・検査」
一般的な傾向は?
●主な業種は→製薬会社、病院
●主な職種は→研究職・臨床開発職、薬剤師
●業務の特徴は→新規治療薬の研究・開発、調剤・服薬指導
分野はどう活かされる?
・製薬会社の研究職に就職し、脳神経、循環器、呼吸器、消化器、がんなどに対する新規治療薬の開発を行っています。具体的には、様々な種類の化合物の効果を細胞レベル、組織レベル、動物個体レベルで検討し、特定の病気の薬になるかを評価しています(前臨床試験と呼ばれています)。
・製薬会社の臨床開発職に就職し、研究所で開発された薬を患者さんで評価しています。その結果を基に、薬が特定の病気に対する新規治療薬(新薬)になるかを評価しています(治験もしくは臨床試験と呼ばれています)。
・病院に薬剤師として就職し、処方箋調剤や服薬指導を行っています。薬に対する知識と技術を最も活かせる職業です。
名古屋市立大学薬学部には、薬学科(6年制)と生命薬科学科(4年制)の二つの学科があります。薬学科では、薬剤師に必要な知識・技能を身につけ、基礎的な研究能力を育て、医療チームの薬のスペシャリストを目指します。生命薬科学科では、薬と医療を中心とした科学を幅広く学び、研究の基礎を身につけ、薬の科学のスペシャリストを目指します。
薬学部出身者の多くは、病院や製薬会社に就職します。病院では、薬剤師として、目の前にいる患者さんを薬で治します。製薬会社で開発した薬は、世界中の患者さんを治すことができます。薬学部の特徴である「くすりづくり(創薬)」はとても夢のある仕事です。
【テーマ例】
・「心臓に対するくすりの作用」
心臓標本に交感神経作用薬(アドレナリン、ノルアドレナリン)や副交感神経作用薬(アセチルコリン)を投与し、それらによる心拍数と収縮力に対する効果を観察する。
・「高血圧症の治療薬の効果」
高血圧症マウスに高血圧症の治療薬を投与し、その血圧を測定する。私たちの研究室で開発した高血圧症の治療薬であるベニジピンを用いる。
・「カフェインの作業能率におよぼす影響」
コーヒーに含まれているカフェインの精神運動興奮作用を評価する。具体的には、コーヒー飲用前後の暗算作業(クレペリンテスト)の正解数で評価する。
医学と医療における日本の薬理学の貢献
日本薬理学会
日本薬理学会が作成し、ネット上で配布している小冊子。くすりの作用機構を明らかにする「薬理学」がどのような学問であるかについて、高校生も含む、専門領域外の方に向けて簡単に紹介している。薬理学の歴史から概念、くすりの具体例などが挿絵とともに解説されている。