物理系薬学のキーワードであるドラッグデリバリーシステム(DDS)は、薬を必要な時間、必要な量、必要な場所に送達するシステムのことです。目的の患部に効率的に運ぶ、あるいは長期間にわたり、薬を徐々に放出するために、種々のカプセルや剤形の開発、物性研究が行われてきました。
死因別死亡率の高いがんや虚血性疾患を始め多くの疾患が対象となっており、実際に多くのDDS製剤が医療現場で役立っています。DDSは患者に優しい医療を提供できるため、超高齢社会を支える技術としても注目されています。また分子構造学、構造生物学などは、薬剤と標的分子との相互作用の解明と、新たな薬剤の開発に有用であり、特に創薬に関して物理系薬学分野の貢献は高いと考えています。
上記のDDS研究は主に2018年まで所属していた静岡県立大学薬学部で行ったものです。同年より帝京大学薬学部に移り、学部運営と学生の教育に力を入れています。帝京大学でもDDS研究を行っている研究室もあり、静岡県立大学でも引き続きDDS研究がなされています。
患者の生活の質を高く保つ治療の実現へ
私は低分子から核酸医薬品など今後の発展が期待できる医薬品を対象として、がんや脳梗塞治療のための製剤を開発してきました。薬剤カプセルとしては、細胞膜脂質を用いたリポソームという、生体適合性が極めて高く副作用がないカプセルを用いています。
先に述べた薬物送達(DDS)はこれまで副作用が問題となっていた薬剤の副作用軽減や薬理効果の増強、投与経路を注射から経口に変更したり投与回数を減ずるなど、患者の生活の質(QOL)を高く保てる技術であり、超高齢社会をマネージメントする上で、極めて有益な製剤の開発が可能となります。
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「10.薬」の「36.創薬系化学、製剤学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→製薬企業
●業務の特徴は→製剤開発、DDS製剤の創製に関わる研究
帝京大学では病院や薬局で薬剤師として働く卒業生が多くいます。
分野はどう活かされる?
大学での研究に極めて近い分野で、新たな製剤開発が行える点。
薬学部のある板橋キャンパスには医学部、医療技術学部があり、多職種連携の中で医療人養成や共同研究が可能です。
医薬品の研究、医薬品を扱う薬剤師の仕事はいずれもヒトの健康に貢献します。
高校生を対象とした静岡県立大学サマーカレッジでは、細胞レベルの遺伝子導入の可視化などを行っています。薬の保持や、放出制御、動物を用いた動態など、いろいろなテーマが可能です。帝京大学でも卒業研究では幅広い分野の研究がなされています。