天然物化学は、植物などの天然物から有用な化学成分を見つけ、薬へと発展させるための基礎的な学問です。様々な病気を治すための薬は、植物などの天然物から発見されて改良されていることが多く、現在でも有効な化学物質である「薬のもと」を天然物から見つけるという研究は重要な分野の一つです。
私たちの研究室では、薬のもとになる有用な化学成分を天然物から見つけ出し、自分たちが見つけた有用物質を化学合成し、そして、見つけた物質の活性を高めるために、有機化学の手法を用いて改良しています。単に「見つける」だけではなく、「薬のもと」として世の中に発信していくことを目指しています。
認知症の予防・治療効果が期待されるジャワショウガを発見
超高齢化社会を迎えた日本において、認知症は深刻な社会問題となっていますが、その多くはアルツハイマー型認知症です。認知症では、脳内の神経細胞の元気がなくなり、ネットワークが途切れることで記憶障害などが生じます。私たちの研究室では、神経細胞を元気にさせる成分を含む植物あるいは食品を見つけて、その中に含まれている活性成分を見つけ出し、それをアルツハイマー病の治療・予防薬、予防食品として開発できないかという研究を行っています。
今は、ジャワショウガというインドネシアのショウガの研究に力を入れています。ジャワショウガが認知症の予防・治療に有用であるという基礎研究を積み重ね、ジャワショウガエキス錠の開発に成功し、販売されています。私たちの基礎研究が社会貢献に繋がる形となって、大変嬉しいです。このような研究をもっと発信していきたいと思っています。
「化学系薬学」が 学べる大学・研究者はこちら
その領域カテゴリーはこちら↓
「10.薬」の「36.創薬系化学、製剤学」
一般的な傾向は?
卒業生の多くは病院や薬局の薬剤師として、西日本の幅広い地域で活躍しています。その他、製薬会社で研究者として新薬の開発に携わったり、薬学の知識が必要な品質管理部門、さらには大学で教員として創薬研究を行っている卒業生もいます。
分野はどう活かされる?
薬学は薬の知識に限らず、薬という化学物質を通して、とても幅広く様々なことを学びます。チーム医療の中で、物質から医療を考えられるのは薬剤師だけです。そして、薬学の知識を持った薬のスペシャリストだからこそ、多角的な視点からアプローチできます。医療現場のみならず、化学、生物、物理の基礎分野、環境衛生、製剤、法律など広範な知識、技能を持っていることから活躍できる分野はとても幅広いです。
本学では様々な薬に関する研究を行っていますが、中でも植物、生物が生産する化学物質から薬を探索する天然物化学や、化学合成により未知の薬を創り出す有機化学を得意としています。研究マインドをもった薬剤師を養成するため、少人数制を軸とした実践的教育と研究活動を行っています。また1年次から研究活動を体験できる「学内インターンシップ制度」を設けており、多くの学生が低学年次より研究活動に取り組んでいます。
私のモットーは、「とにかく何でもやってみること」です。できないかもしれないけれど、とにかくチャレンジするよう心がけています。その結果、できるときもありますが、できないときもあります。うまくいかないときは、できるようになるまで何度も繰り返したり、誰かに相談したりしますが、それでもすべてを克服することはできません。そういうときは、「私には何ができるかな?」と、自分にできることを探して、取り組んでいくようにしています。小さな成功の積み重ねを大切にするよう心がけています。まずは、興味を持ってとにかく何でもやってみる、きっと自分なりに何か大切なことを見つけることができると思います。
昔ながらのお薬である民間薬は、効能効果が現代医学で認められているもの、伝承的に伝えられてきたものなど様々です。伝えられてきたからには理由があるはずです。その理由が薬の開発のヒントにつながるケースもあります。また、日本のみならず、世界中にそういった民間薬がたくさんあります。興味をもって調べてみると、すごい発見があるかもしれませんよ!