応用分子細胞生物学

植物は、なぜビタミンCを豊富に含んでいるのか?~その仕組みと機能の解明~


石川孝博先生

島根大学 生物資源科学部 生命科学科(自然科学研究科 農生命科学専攻)

どんなことを研究していますか?

私の研究室では、植物のビタミンCの研究を行っています。植物はビタミンCを豊富に含み、我々ヒトにとって重要であることはよく知られていますが、植物の中でどうやって作られ、どう運ばれ、なぜ豊富に含んでいるのかなど、実はわかっていないことがたくさんあります。私たちは、その謎を遺伝子やタンパク質を使って解明しています。

微細藻類ユーグレナが生産する有用脂質ワックスエステル代謝の謎を解く

植物ビタミンCの他にも、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を使った研究もしています。ユーグレナが生産するワックスエステルは、バイオ燃料としての利用が期待されています。その実用化のためには、代謝調節機構を明らかにし、生産性の向上を図ることが不可欠です。

私たちの研究グループでは、ワックスエステルを生産する嫌気条件や、通常の生育条件である好気条件で処理したユーグレナ細胞から、オミクス解析と呼ばれる発現遺伝子やタンパク質の包括的な解析を進めています。

民間との研究交流会での発表風景
民間との研究交流会での発表風景
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→食品・製薬・化学

分野はどう活かされる?

食品系の研究、製薬の研究・開発・営業に従事しています。

先生の学部・学科はどんなとこ

生命科学科では、生物を分子から生態系まで様々な階層からとらえ、最先端の技術を駆使し、生命現象の全体像を解明し、それらをヒトの未来社会に生かすことを目的として教育・研究を行っています。

教育では、生命現象に関する基礎から応用までの多彩な講義・演習プログラムを用意し、柔軟な発想力に基づいて自ら研究を推進する能力、コミュニケーション能力、物事を多面的にとらえて本質を見抜く思考能力などを身につけることができるよう、セミナーや研究指導を行っています。

将来、生命科学の研究・教育に携わることを希望する人、バイオメディカルや機能性食品等の分野で活躍したい人、生態系を複合的に理解して環境問題に対処したいと考えている人など、従来の生物・バイオテクノロジー関連分野の枠を超えた研究や産業の新分野を開拓しようとする人たちに、最適な教育プログラムを提供しています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

生命科学の中でも、植物科学の分野は、CO2削減や温暖化など地球環境問題や食糧問題の解決に期待されている重要な分野です。知れば知るほど、これまでに知らなかった植物の能力に驚き、きっと魅了されると思います。研究は大変で上手くいかないことがよくありますが、それだけに新しい発見をした時の喜びはひとしおです。大学には「身近な謎」を解決するための手段やアイデアがたくさんあります。あなたも一緒に研究を楽しんでみませんか。

学会会場にて学生たちと記念写真
学会会場にて学生たちと記念写真
先生の研究に挑戦しよう!

【テーマ例】

・光合成によるビタミンCや脂質などの有用物質生産
・植物の環境ストレス応答

興味がわいたら~先生おすすめ本

植物で未来をつくる

松永和紀(化学同人)

植物科学分野の研究者へのインタビューに基づき、食糧問題や環境問題について、植物科学がどのように貢献していくか、初学者向けにやさしく解説している。毎回違ったサイエンスライターが植物科学の研究者たちを訪ね、植物研究の面白さをレポートする全5冊の「まるかじり叢書シリーズ」の最後の1冊。遺伝子の組換え技術者がどのように必要で、何が問題となるのか、わかりやすく書かれている。 


生命にとって酸素とは何か 生命を支える中心物質の働きを探る

小城勝相(講談社ブルーバックス)

人間に限らず生物、特に動物は、酸素から大きな恩恵を受けている。しかし活性酸素となると話は別だ。活性酸素は、大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したもののこと。活性酸素は極めて反応性が高いラジカルであり、多くの生体損傷を招いてしまう。著者は中毒学、栄養学、生物有機化学を専門とする薬学博士。この本は、酸素と活性酸素について初学者向けにやさしく解説している。


サイト「光合成の森」

園池公毅

『光合成とはなにか 生命システムを支える力』(講談社ブルーバックス)などの著作のある、早稲田大学植物生理学研究室の園池公毅先生の運営するサイト。光合成に関する質問を受けつけるQ&Aのコーナー「光合成質問箱」や、講義や日々の生活の紹介する「光合成研究者の生活」などが設けられ、光合成に関してよくわかるウェブサイトになっている。

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