日本は温暖で雨量も多く、植物資源が豊富にある国土です。私は、この植物資源を、家畜の「放牧」という飼育方式を通して利用することを研究テーマにしています。近年、生産効率が低いことを理由に里地里山にある農地、草地、林地が次々と利用されず、放棄されています。こうした地域では人口の減少・高齢化が著しく、もはや人の手だけでは土地の管理ができません。そこで牛や山羊などの草食家畜を利用して、放棄された土地の管理を行うのです。
里地里山を再生し、生物多様性を保全したい
広い放牧地では、ウェアラブルセンサなどで動物の行動や生理状態(心拍数など)を測定し栄養や健康の状態を管理するなど、ICT技術を積極的に活用することが不可欠になってくるでしょう。里地里山を再生し、自然やコミュニティを維持し、生物多様性の保全を行うことが最終的な研究の目標です。
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「8.食・農・動植物」の「29.獣医・畜産、応用動物学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→農畜産業、食品製造業、学術研究、専門・技術サービス業
●主な職種は→技術系(生産・製造)、公務系(国家・地方公務員、農林水産関連職)、営業職
●業務の特徴は→畜産業、特に動物の飼育、飼料、乳肉などの畜産物に関わる職種が中心
分野はどう活かされる?
卒業生の多くは学部や大学院で学んだ専門と関連する業務に就いているため、動物の飼育管理に関する基礎的な知識や技術はそのまま活かせていると思います。
本学部の生産環境科学課程応用動物科学コースは、動物科学の基礎となる「生命科学」、家畜を中心とする「生産科学」、動物園動物を中心とする「保全科学」の3つを教育の柱としているところが他に類のない特徴です。教育においては、キャンパス内にある農場や牧場(フィールド科学教育研究センター)、連携する動物園・水族館での実習をふんだんに設け、実際に動物を扱うことを重視しています。
動物のことを学ぶためには、動物だけでなく、例えばその食物となる植物のこと、動物と植物を取り巻く生態系のこと、動物の生産(畜産業)を含む社会のことに広く関心を持ってください。
勉強で言えば、生物学だけでなく、化学、数学、英語、社会など分野横断的な知識が、動物(家畜)が快適に暮らせるような飼育方法を考えたり、資源を活かして持続可能な生産方法を確立したり、新しいアイデアを生み出すことに役立ちます。皆さんと大学のキャンパスでお目にかかれることを、心待ちにしています。
動物がそれぞれの飼育環境でどんな行動をしているかを調べてください。そのことによって、飼育環境が動物に及ぼす影響を評価することができます。身近に家畜がいないなら、犬や猫、あるいは動物園の動物たちを対象としてください。
まず、鉛筆とノートを持って、対象とする動物を観察し、どんな行動があるか言葉で記述してください(行動のレパートリーを作る)。次に、このレパートリーのうち、継続時間や発現回数が測れそうなもののリストを作ってください(行動リストを作る)。これをもとに、時計かストップウォッチを持って、動物を少なくとも数時間観察し、その行動の継続時間や発現回数およびリストには入らないけど、特徴的な行動を記録してください。
もし可能なら、同じ動物種で違う飼育環境にいる動物、あるいは同じような飼育環境にいる違う動物種を調べて比較することで、飼育環境が動物の行動に及ぼす影響を評価できます。専門の本を少し読めば、それがどのように動物の生活の質に関係しているかを理解することができると思います。
ソロモンの指環 動物行動学入門
コンラート・ローレンツ 日高敏隆:訳(ハヤカワ文庫NF)
動物の行動を科学的に捉え、そのメカニズムや本質をわかりやすく、かつ面白く伝えている。この本を通して、著者の動物に対する愛情が非常に感じ取れる内容でもある。著者はオーストリアの動物行動学者。刷り込みの研究者で、近代動物行動学を確立した人物のひとりとして知られる。
刷り込みとは、鳥に、孵化後一定時間内に人や動物、あるいは物体を見せ追尾させると、その鳥は一生それを追尾するようになるという現象のこと。またこの本の翻訳者、日高敏隆博士は、日本の動物行動学の第一人者。日本に動物行動学を最初に紹介した人であり、ヨーロッパの代表的な動物行動学者の日本語訳も多い。