森林科学

森の木々はどうやって病気と闘っているのか~森林の樹病研究


横田信三先生

宇都宮大学 農学部 森林科学科(地域創生科学研究科 工農総合科学専攻 農芸化学プログラム)

どんなことを研究していますか?

森林には、木材となる木々を育てる機能、土砂災害の防止や水源、野性動物の生活の場といった様々な役割があります。これらを研究する分野が、「森林科学」です。具体的な研究テーマは、森林・林業政策や、造林や林業経営、樹木の育成など、実に幅広いものです。さらに今日的な問題として、木質由来の再生可能資源である「バイオマス」を使った発電研究や、樹木の遺伝子を網羅的に解析する研究などがあります。

食用キノコの菌床からバイオ燃料(バイオエタノール、バイオブタノール)や有用酵素製剤を生産する

私は様々な森林科学の分野の中で、樹病に取り組んでいます。シラカンバ(シラカバ)の樹木が病原菌に感染した際、樹木はどのような仕組みでこれと闘うのか、抵抗性機構をタンパク質及び遺伝子レベルで解明する研究を行っています。この研究が進めば、樹木が病原菌に対して抵抗する仕組みの基礎的な情報が得られます。そして、樹木の病気診断や病気の処置法の開発につながります。

また、食用キノコの栽培に使われた菌床の有効利用の研究も行っています。通常、キノコの菌床は、キノコを収穫した後、産業廃棄物として処理されています。この廃棄菌床から、バイオ燃料(バイオエタノール、バイオブタノール)及び有用酵素製剤を生産することに取り組んでいます。

2019年10月13日~22日に開催された「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」「さくらサイエンスプラン」(国立研究開発法人科学技術振興機構主催)で招聘した、インドネシア・ガジャマダ大学及びモンゴル科学技術大学からの学生・教員との記念撮影。
2019年10月13日~22日に開催された「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」「さくらサイエンスプラン」(国立研究開発法人科学技術振興機構主催)で招聘した、インドネシア・ガジャマダ大学及びモンゴル科学技術大学からの学生・教員との記念撮影。
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→水産・農林業

●主な職種は→公務員

●業務の特徴は→森林・林業・林産業に関する政策等の立案・執行を行っています。

先生の学部・学科はどんなとこ

宇都宮大学農学部森林科学科では、育林学分野、森林社会科学分野、森林工学分野、林産学分野に関する教育・研究を行っています。農学部附属演習林が2箇所あり、これらの演習林を利用した多くの実習があります。また、当学科のカリキュラムは、日本技術者教育認定機構(JABEE)によって認定されており、学科を修了すると国際的に認知された森林技術者として認定され、技術士補の資格が授与されます。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

森林生態系は、樹木をはじめ他の植物、野生動物、昆虫、微生物を含む非常に複雑なシステムを構成し、様々な生物間の相互作用が存在します。従って、研究テーマの宝庫であると言うことが出来ます。若い皆さんが、森林に関わる非常に多くの研究テーマの内、一つでも興味を抱いていただけたら幸いです。

先生の研究に挑戦しよう!

【テーマ例】

・広葉樹のプロトプラスト融合による新樹種の作成

興味がわいたら~先生おすすめ本

森をとりもどすために2 林木の育種

林隆久:編(海青社)

人類の誕生以来、地球上の森林破壊が進み、その結果、温室効果ガスの濃度上昇による地球温暖化が深刻な問題となっている。そして、森を取り戻して森林を持続させるためには、成長や性質の優れた樹木の育種が重要である。

この本は、この林木育種に関して、育種の歴史、花粉スギの少ない育種、形質転換ポプラの作出、樹木生理、樹木のバイオテクノロジー、樹木の分子育種、樹木の遺伝子組換えなどが記載されている。「森林科学」という学問領域では、「林木育種」は非常に重要な分野である。


木のびっくり話100

日本木材学会:編(講談社)

見開き2ページで1コラムという構成で、木にまつわる様々な100の話題を、大学や国立の森林総合研究所の研究者たちが書いている。科学技術で解明された点、暮らしと木の関係、世界の森林に関する点、豊かな社会の構築などに関する、木のびっくりする話が満載の本。


キノコ学への誘い

大賀祥治:編(海青社)

著者の専門は、きのこ学、森林資源学。とくに食用、そして薬用キノコの生理特性や生産技術などに強いキノコ博士である。キノコと人類の関わり、キノコの成分、キノコのバイオテクノロジー、及びキノコと健康に関して記載されている。写真、多くのイラスト及び一口メモがあって、親しみやすい本である。