植物保護科学

病原菌に打ち勝つ植物の秘密を解明する


石川敦司先生

福井県立大学 生物資源学部 生物資源学科 分子生物学研究領域

どんなことを研究していますか?

植物が病気にかかると生長が止まったり、実がならなくなったりします。そのため、病気は作物の生産量を減らしてしまいます。実際、世界の農作物の1割程度は、植物の病気で失われています。

世界人口は、現在の73億人から2050年には97億人以上に増加すると予測されており、世界の食料需要は今後ますます増加すると考えられています。そのため、植物に病気を引き起こす病原菌との戦いに勝利することは、私たち人類にとって重要な課題になっています。

今後、植物の病気の原因を突き止め、その発生メカニズムを明らかにすることを通して、植物を病気から守る方法を研究する「植物保護科学」が世界規模の課題解決に大きな貢献をすると期待されています。

イネいもち病菌を一蹴するシロイヌナズナ

植物にとって病原菌の感染は大きな脅威です。しかし植物は、ほとんどの病原菌の感染に対して強固な抵抗性を示します。ところが、これまで、植物がどのように強い抵抗性を発揮するかについては、謎が多く、研究は困難を極めていました。そこで私は、植物のこの頑強な抵抗性の仕組みの解明に取り組んでいます。

具体的には、シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する抵抗性を細胞レベルで研究し、2種類の強い抵抗性があることを見出しました。今後こうした研究が、病気に強い植物の開発につながり、ひいては、農薬をなるべく使わない農業、手間を省く農業につながると期待しています。

研究材料のシロイヌナズナを植物培養施設内で生育させています。研究では、このシロイヌナズナにイネいもち病菌を接種し、いろいろと解析しています。
研究材料のシロイヌナズナを植物培養施設内で生育させています。研究では、このシロイヌナズナにイネいもち病菌を接種し、いろいろと解析しています。
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種→公務員

●主な職種→農業関係

先生の学部・学科はどんなとこ

植物保護科学関係の研究を行っている教員が複数います。植物の抵抗性にかかわる遺伝子および病原菌の病気にかかわる遺伝子のはたらきについて明らかにし、それら遺伝子を利用することにより、新しい作物を創り出したり、新しい栽培技術の開発に貢献することを目指しています。 

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

病原菌の感染現場では、植物と病原菌が互いにいろいろなアイテムを使用して戦っています。彼らはどんなアイテムを使って戦っているのでしょうか。まだ誰も知らないアイテムを一緒に見つけませんか。 

先生の研究に挑戦しよう!

・身近な植物はどんな抵抗性を持っているのかな?調べてみよう!

・植物が置かれている環境も病気に影響するよ。植物が病気にかかりやすい環境条件はあるかな?調べてみよう!

興味がわいたら~先生おすすめ本

チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話 植物病理学入門

ニコラス・マネー 小川真:訳(築地書館)

表題のチョコレートとは原料のカカオのことだ。カカオ栽培が、カビ・キノコの病害で激減したことを指している。この本は、ほかにも歴史上破滅的な被害をもたらした菌類による植物の病気について記載している。植物病理学について歴史を通して触れることができる。この本を読むと、植物の病気について研究し、その病気に対する防除法を開発する「植物保護科学」の重要性が理解できる。


植物のパラサイトたち 植物病理学の挑戦

岸国平(八坂書房)

パラサイトとは寄生生物ということだが、植物のパラサイトとは、植物にとりつき病気を引き起こしてしまう病原微生物のこと。主なものにカビ、ウイルス、細菌の三種類あり、植物を枯らせたり、果実などを絶滅させてしまう厄介な存在だ。このような様々な植物の病気について記載されている。



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