脊椎側わん症という病気を耳にしたことはないでしょうか。背骨が側方にわん曲する病気です。思春期の女子に発症することが多く、痛みをともなうことがまれなために発見が難しい病気です。体や姿勢に変形を生じたり、内臓機能低下を起こしたり、腰痛の原因になったりします。また、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)という病気があります。思春期前後に謎の炎症が起こって、骨痛や骨破壊を起こします。
これらの疾患の原因はわからないことがばかりですが、実験動物を使った実験から手がかりが得られています。動物が人間の病気の完全なモデルになるわけではありませんが、人間の疾病において新たな治療法の発見につながります。
慢性再発性多発性骨髄炎の原因遺伝子を、ひとつ特定!
私はいろいろな変異マウスを用いて、骨格系に関連する疾患を研究しています。特に古くからある遺伝学とエピジェネティクスという新しい分野に興味があります。エピジェネティクスは先天的な遺伝情報だけに頼らずに、環境や生活習慣といった後天的な化学修飾によって遺伝子が制御される現象を調べます。最近、私たちの変異マウスの研究がきっかけとなり、国際共同研究によりCRMOの原因遺伝子がひとつわかりました。しかし、十分ではありません。
多くの患者を悩ませる骨格系の疾患は側わん症をはじめ、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、関節リウマチなどたくさんあり、原因の多くはわかっていません。これは疾患の原因が遺伝子だけではなく、生活習慣や化学物質など後天的な環境要因が複合的にからみあっているためです。そこがエピジェネティクスを研究する大きな理由です。骨格系の疾患の治療は対症療法がほとんですが、遺伝子と環境要因の研究で原因をつきとめて根本的な治療を目指します。
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「8.食・農・動植物」の「29.獣医・畜産、応用動物学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→大学院、研究所、再生関連、教育、飲食業、水産業、医薬品開発支援
●業務の特徴は→研究に携わる職種
分野はどう活かされる?
実験手技や研究計画立案などを学んで、研究所や企業で研究技術員や補助員として業務に活かしています。また、出身学部での専門を活かして水産業に就職した卒業生や医薬品開発支援で活躍する卒業生もいます。