新しいエネルギー利用社会に向けて、再生可能エネルギーへシフトすることが期待されています。再生可能エネルギーの代表に太陽電池があります。ただし出力の制御が難しく、電気エネルギーを安定して確保するには、大がかりな蓄電施設が必要です。それに見合う理想の蓄電池はまだできていませんが、最も近いのがリチウムイオン電池です。
リチウムイオン電池は、スマホなどの充電用から電気自動車の蓄電まで幅広く利用されています。しかし大がかりな太陽電池の蓄電には、もっとたくさんの電気エネルギーを貯蔵できなければなりません。また、リチウムイオン電池には燃えやすい電解液が使用されているため発火などの安全性の問題があります。これらの問題を解決する新しい電池が必要です。
私は、ナノカーボン化学が専門です。カーボン(炭素)、とくにナノチューブといった新しい炭素材料の機能化に取り組んでいます。リチウムイオン電池は、電極の正極におもにリチウム金属酸化物を、負極にはカーボン材料を用い、リチウムイオンを出し入れすることによって充電や放電を行える二次電池です。
私たちはナノカーボンなどを新しい電池材料として利用することで、現在のリチウムイオン電池が抱える問題を解決し、安全で大型化でき高速充電可能な次世代二次電池の開発を進めています。また、太陽光で直接充電できる革新電池の研究も行っています。化石燃料にたよらず自然エネルギーを積極的に利用できる社会が実現すれば、CO2排出削減ができ環境にやさしい、真の意味での持続可能社会が実現できるようになるでしょう。
深海や宇宙など極限環境での電気化学反応の解明と応用に向けて
私たちが日々蓄積してきたナノカーボン電極の研究を応用し、さらなる電気化学のフロンティア領域の開拓を進めています。具体的には、深海や宇宙などの極限環境での電気化学反応の解明とその応用をめざした研究を行っています。最近、4000気圧もの超高圧力を発生させられる実験装置を導入しました。
この超高圧は、マリアナ海溝最深部の水圧の約4倍に相当します。世界に1台しかないオーダーメイドの装置です。このような装置を駆使した実験で得られるデータは、深海・惑星探査機のための蓄電池開発、資源調査などへの応用に役立てられると思います。
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「16.材料」の「63.鉄・アルミ・チタン・マグネシウム・セラミックス等」
一般的な傾向は?
●主な業種は→電池関連メーカー、化学メーカー
●主な職種は→研究開発、生産技術
分野はどう活かされる?
私たちの研究室では、研究を通して材料開発を行うために必要な元素の性質・化学に関する知識、材料評価の技術を身につけることができます。こうした知識・技術が就職先で活用されています。
私たちの大学は工学部だけの単科大学ですが、化学、物理、電気、機械など幅広い工学分野をカバーしています。近隣は自動車、窯業、繊維、化学などの産業が盛んな地域として知られたところばかりです。私たちの大学はこうした産業の課題解決を図ったり、企業と一緒に製品開発を行うなど、実社会に近い研究に強みがあります。
今は何かわからないことがあっても、すぐにインターネットで答えを見つけることができる時代です。しかし、そこで一度立ち止まって考えてみてください。その答えを正しく理解しているのか、あるいは本当にその答えが正しいのかを考えてみてください。少しだけ深く考えることで、ひょっとすると新しい世界が見えてくるかもしれません。
私たちは夏にクーラーを、冬に暖房を使いますが、これはエネルギーの浪費とみることができます。夏の熱エネルギーを冬に利用できればよいのですが、熱エネルギーを貯めたり運んだりするのは簡単ではありません。熱を電気に変換する熱電変換技術というものがありますが、効率はあまり良いものではありません。熱エネルギーをうまく貯めたり運べたりできれば世界は大きく変わります。何か良いアイデアはありませんか?