アポロ11号が人類史上初の月面着陸に成功したのは1969年です。その2年後、4度目の月面着陸に成功したアポロ15号の宇宙飛行士は、月面で3日間過ごし、NASAはこれまでで最も成功した有人宇宙飛行であったと表明しました。
半世紀後、この時持ち帰った月の石から、私たちは世界で初めてある物質を発見しました。その物質は月に巨大な物体が超高速で衝突した時にできたものでした。つまり、月で過去に起きた天体衝突の名残りです。この物質の発見は月の地形の発達史、地球への隕石落下の頻度などの謎を解き明かす新たな手がかりとなります。
地球宇宙化学の分野の中で、私たちは高圧惑星科学という研究を専門にします。私たちの発見のきっかけになった月の石以外にも、日本の小惑星探査機はやぶさが持ち帰った星のかけらや、火星を飛び出し地球に飛来した火星の石などをニュースで聞いたことがあると思います。このような石には、太陽系内の天体の誕生と進化の謎を紐解くヒントが隠されています。
地球宇宙化学という学問分野は、宇宙から地球にやってきた石を調べ、太陽系内の天体がいつ、どのようにして誕生し、どのような過程を経て現在の姿となったかを明らかにすることを目指しています。
地球に落下した石を調べる
天体が成長するには、天体同士が衝突し、合体して大きくなる必要があります。衝突の際には瞬間的に膨大なエネルギーが解放され、天体を構成する物質に様々な変化が起きます。この変化は、現在の天体を構成する物質や地形を形づくる重要な要素です。私たちは地球に落下した石に記録された天体同士の衝突の痕跡に着目し、太陽系内天体の進化を解き明かすことを目指しています。様々な過程を経て地球に落下した石には、地球には存在しない未知の物質も存在し、新たな素材開発のヒントともなります。
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一般的な傾向は?
●主な業種:公務、教育、素材・エネルギー系メーカー、学術研究
●主な職種:公務員(国家・県)、高校教員、研究員、営業
分野はどう活かされる?
研究には様々な分析装置を使います。その分析技術は様々な分野の仕事に活かせます。
地球惑星システム学科に入学するほとんどの人は高校で地学を受講していません。当学科ではそのような人でも地球科学を学べるよう体系的にカリキュラムが組み立てられています。地球科学で扱う地震や宇宙といった課題は世界共通のものです。世界中の研究者とも共同して課題の解決に取り組めるよう、英語を用いた授業や発表の訓練にも力を入れています。
地球にやってくる月や火星の石ははるか昔何十億年も前にできたものです。そのような石には人間の目では見ることができない小さな物質がたくさん含まれています。そうした物質は月や火星で昔起きたいろいろな出来事のタイムカプセルです。私たちは様々な顕微鏡を使って月や火星の石を観察します。皆さんも一緒に顕微鏡を通してはるか遠くにある月や火星の歴史を見つめてみましょう。