20世紀末頃から地球温暖化と呼ばれる問題が指摘され、それに関連した環境問題について考える機会が皆さんの周りでも増えてきたと思います。近年、異常気象や生態系変化など、温暖化による自然環境の変化は国内外で懸念されつつあります。
現在の気候状態を把握し、近未来の環境変化を予測するためには、過去の気候変動を理解することが重要です。しかし、観測などによる連続的な気象データは期間が数十年程度と限られているため、18世紀後半の産業革命の以前や以降の気候変化を示すような長期の環境データを取得(=復元)する研究が求められています。
私は、地球科学の分野のなかで、古環境学や地球化学を専門にしています。自然界の試料(氷床や樹木、岩石や堆積物など)には、過去の環境情報が記録されていることが知られています。その中でも、私は「サンゴ礁」と「鍾乳洞」を研究対象として、地球化学的な手法によって環境情報を抽出し、過去数百年〜数千年の自然環境がどのように移り変わってきたのかを調べています。
特に、琉球列島を舞台として、サンゴと鍾乳石による環境解析を進めており、我が国の亜熱帯地域における「海」と「陸」の環境変化を、有史時代、産業革命〜現在について明らかにして、温暖化の長期傾向を正確に評価したいと考えています。沖縄の自然は黒潮や台風の影響を強く受け、高い生物多様性と島嶼特有の文化が広がっています。我が国のみならずアジア・太平洋地域の数多くの島々に対して、自然環境-人-生物-社会の持続可能なモデルを提案する上で、過去の環境を復元する「古環境研究」は貢献すると期待されます。
サンゴ礁生物や洞穴遺跡に関する異分野融合研究
その他に、様々な研究分野とコラボレーションした異分野融合研究も進めています。例えば、生物学者らとともにサンゴ礁調査を行って生物の骨格や殻の化学組成を調べる研究や、考古学者や人類学者らとともに遺跡から出土した化石試料を分析して、先史時代人が生活した当時の環境や気象変化を復元する研究なども行っています。
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「3.地球・宇宙・数学」の「8.地球科学・古生物、惑星圏科学・宇宙塵」
一般的な傾向は?
●主な業種は→海運業界、教育、国家・地方公務、金融など
●主な職種は→総合職、コンサルタント、システムエンジニア、小中教員、警察官、消防員など
東北大学理学部地球科学科は1911年に開設され、同分野では我が国で二番目に長い歴史があります。教員数は約40名と同分野では国内最大級を誇り、地球環境や生命進化、地震、火山、太陽系進化、人文地理や災害など、多様で最先端な科学研究が展開されています。
私が所属する「炭酸塩堆積学・地球化学グループ」では、炭酸カルシウムからなる生物骨格や堆積物について古生物学的・堆積学的・地球化学的手法を駆使した解析から、過去の海洋環境変動や気候変動を様々な時間スケールで明らかにすることを目指し、現在、学部生・大学院生の計24名が日々研究に取り組んでいます。詳しくはホームページへ。
東北・仙台で、沖縄のサンゴ礁について一緒に研究しましょう!
【テーマ例】
・サンゴの骨の年輪から過去数百年の連続水温時系列データを取得し、海の温暖化傾向を調べる。
・サンゴの化石を分析して、縄文時代の気候変動や異常気象を復元する。
・鍾乳洞の調査と分析から、過去数万年間の陸上環境の変化を調べる。
・洞穴遺跡の遺物から当時の気象変化や生活様式を復元する。