自然現象でもっとも美しいものの一つであるオーロラ。オーロラは、太陽から運ばれる電気を帯びた粒子「プラズマ」が、地球大気の上層の最も宇宙空間に近いところ「超高層大気」と衝突し、発光する現象です。プラズマの流れは地球磁場の影響を受けるので、磁極の近くの極地方に多く見られます。オーロラが発生する高さは、地上約80~数百キロメートルです。この高さは人工衛星や宇宙ステーションが飛翔する人類の活動領域であり、その安全な利用のためには、そこでの自然の成り立ちやふるまいを物理的に理解する必要があるのです。
私の専門とする超高層物理学は、地球の大気と宇宙空間の接する「超高層大気」に起こる自然現象を理解する学問分野です。超高層大気ではオーロラや夜光雲などの美しい発光や、オゾンホールや地球温暖化など我々の生活に関係する現象が起こります。私が追及しているテーマの一つは、オーロラの発生メカニズムとその超高層大気への影響です。
オーロラの複雑な色・形・動きを研究することで、大気や宇宙環境のしくみがわかります。そして、太陽から地球へ至るエネルギーの流れや、地球温暖化や気候変動を理解していきます。この理解は、人類が人工衛星や宇宙ステーションで活動することに加えて、将来の月面探査と火星探査にも役立ちます。身近な宇宙の理解は、私たちの知的好奇心に応えるとともに、より豊かな生活につながっています。
地球以外で生命は存在するか
私の二つ目の研究は、普遍的な惑星大気の理解です。地球は、今のところ生命の存在が確認されている唯一の惑星ですが、他の天体で生命が存在するかどうかはわかっていません。それを理解するためには、現在の地球環境だけではなく、異なる環境下における大気や水のふるまいを知る必要があります。その実験場として、金星の高温高圧環境大気、火星の低温希薄大気、木星の高速自転する強磁場環境など、極端な環境の惑星大気の調査は重要です。最近の研究からこの理解が進み、太陽系外の惑星についても水や生命の存在を具体的に検討することが可能となってきました。私たちは、ハワイにある望遠鏡を使って様々な惑星の観測を行っています。
また、太陽系以外の惑星「系外惑星」が現在数千個発見されています。これらには、液体の水が存在する惑星もありそうです。近い将来、地球以外に生命が存在することが証明できる日が来るかも知れません。
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「1.環境・防災」の「1.気象・海洋、地震・津波、火山、防災・復興学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→大学・高専等教員、官公庁、メーカー、公共科学館、ソフトウェア会社等
●業務の特徴は→自然科学の研究者や宇宙開発、関連ソフトウェアやエンジニア開発が多い
分野はどう活かされる?
研究者(大学、高専、ポスドク、官公庁等)。大学院・学部の経験を生かした、宇宙航空開発(人工衛星や宇宙ステーション等)の官公庁、メーカー特に光学レンズメーカー研究所等。大学院・学部のデータ解析経験を生かした、ソフトウェア開発者。大学院・学部の装置開発経験を生かした、大規模メーカー。
東北大学は研究第一主義を掲げており、研究中心の大学として世界中の大学から高い評価を受けています。私が所属する理学部物理系の地球物理学は、物理学の手法を用いて地球の現象を支配する法則を解明することが魅力です。その対象は、地震、火山、海洋、大気、オーロラ、惑星と多岐に渡ります。JAXAの宇宙ミッションや国立極地研究所の南極観測に関わったり、アメリカやヨーロッパの大学とプロジェクトに取り組んだりと、国内・国際プロジェクトが活発なことも特徴です。
また、地球物理学は、地震・火山・気象災害などの自然災害や、地球温暖化などの環境問題に立ち向かう上でも、大きな役割を果たすことが期待されています。宇宙空間を含む人類活動のフロンティアを開拓する上でも、重要な役割を果たします。
私は元々天文が好きでこの大学を選びました。大学の学部で授業を受けるうちに、身近な宇宙環境に関係するオーロラに強い興味をもち、現在の研究テーマを選びました。学生時代に南極昭和基地に越冬してオーロラを観測しました。その後、オーロラを観測する人工衛星や宇宙ステーションに載せる装置をJAXAと共同で作ったり、アラスカやノルウェーでオーロラ観測したりしています。また惑星オーロラにも関心を広げ、ハワイ・マウナケア山頂のすばる望遠鏡を使って木星のオーロラを観測しています。今もオーロラや地球と惑星大気のわからない謎は深まるばかりで、研究はどんどん拡がっています。皆さんも大学で想像をこえるような体験をすることができると思いますので、期待と希望をもって進学してください。
【テーマ例】
・太陽、月、惑星の光の分光実験とガス大気成分の検出
・太陽電波の変動の観測
・電離層の高度変動の観測
・地磁気の測定
・音速の測定
・雷に伴う超高層大気発光「スプライト」の観測