日々の天気現象の発生・発達過程について、風や気温・大気中の水分など気象要素の分布を観測やコンピューターによる数値計算などによって明らかにする「気象学・気候学」を専門としています。個々の現象の発生・発達の詳細を扱うのが「気象学」、個別の現象ではなく長期的な観点から現象の傾向を捉えていくのが「気候学」と理解して差し支えはないでしょう。
大気の流れや空気中の水分や物質の移動、化学反応などを知るには、物理・化学に関する知識や、微分積分などの数学に関する専門的な基礎知識が必要です。気象情報の膨大な量・回数の計算をする情報処理に関する知識も必要です。水蒸気や二酸化炭素などの温室効果ガスの移動を知るには、光合成などの生物に関する知識も必要となるでしょう。一人の研究者がそのすべてを網羅しているわけではなく、個別の研究テーマに応じてそれぞれの得意とするところを駆使して研究に励んでいます。
気象災害を全球規模でもとらえ、被害軽減に役立てる
気象災害のメカニズムを解明し、実践的な対策につなげるべく研究を進めています。災害対策をする上で、現象自体の発生原因や災害に至る過程を科学的な視点から解明することが第一に必要になります。災害発生直後に被害状況を調査し、気象庁や国土交通省などの様々な気象データを入手し、これらのデータを基に数値シミュレーションを行います。地形条件や雲の発達条件、観測誤差など様々な要素を考慮に入れつつ、発生要因を解明することが求められます。
気象現象自体が、局所的規模から全球規模まで様々な規模の現象と密接に連動していることから、例えば東アジア域全体や太平洋・インド洋海域などの大規模な現象から捉えていく必要があります。大規模な現象から何らかの顕著な兆候が明らかになれば、その分だけ対象地域で災害を伴う現象に至るまでの時間的余裕ができ、現象の進展の監視・情報発信・伝達、現場・住民レベルの対策が着実に行われ、被害軽減につながると思います。
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「1.環境・防災」の「1.気象・海洋、地震・津波、火山、防災・復興学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→専門サービス業(建設コンサルタント、環境アセスメントなど)、教育サービス業
●主な職種は→土木建築系の技術職
●業務の特徴は→防災関連業務、建設現場の施工管理
分野はどう活かされる?
防災に関する内容として、ハザードマップの構築業務や河川・道路の整備計画などの業務に役立っています。
広島工業大学環境学部地球環境学科は、気象・海洋・自然災害システムなどの地球科学、生態系や環境衛生などの環境共生、空間情報処理や人工衛星データ解析などの環境情報の三分野から成っており、地球環境問題に対して、幅広い視野を持って学ぶことができます。
私の研究に関する分野は、上記の中の地球科学分野に該当し、気象・気候・海洋に関する大気・水圏・地圏それぞれのシステム、および、風水害・土砂災害などの自然災害に関する専門科目を学修します。私は主に風水害に関する研究に従事しており、2014年8月に広島市で発生した線状降水系などの急速に発達する積乱雲による降水の数値シミュレーションや、海上の気圧のゆらぎによって発生する気象津波と呼ばれる、地震津波と同じ周期の波の解析や海洋気象観測に取り組んでいます。
なお、気象津波に関して、気象現象のメカニズム解明から取り組んでいるのは、国内で唯一といっても過言ではありません。また、ドローンを用いた気象観測や小型気圧センサーを使った災害発生の兆候を早期に検出するシステムの開発にも取り組んでいます。
私たちが直面している様々な問題の解決に向けて取り組むには、分野の境界を超えた幅広い視野やアプローチが不可欠です。一方、広い視野を持って物事を捉えるためには、自分自身の芯となる専門分野の基礎をしっかりと身につけることが大事になってきます。
高校までの学びは、これから専門的人材として育つための土の役割を担うと考えます。専門的人材として育つために必要な養分をしっかりと蓄えることで、主に大学の学部で学ぶ専門分野の基礎(根や幹)を強固なものに育てていくことができ、そこから異分野との接点を見出しながら枝葉を拡げ豊かな果実を実らせることができるようになるでしょう。
また、学びの土台をしっかり築き上げられていれば、たとえ一つの道筋が途絶えてしまっても、新たな枝葉(あるいは幹になるかもしれません)を伸ばし、実を結ぶことができるようになるでしょう。現在の目標を通過した先にどのような形で活躍できるか、時々前向きに想像しモチベーションを高め、これからの成長に不可欠な基礎を築き上げてください。
ヒートアイランド、局地風、山岳地域の降水などをテーマに、野外観測に挑戦してみましょう。