生命には、様々なリズムがあります。生物体内には、心臓の拍動、脳波など短い周期で刻まれるものから、女性の月経周期、鳥の渡りや魚の回遊とか植物の開花などのように季節単位のものまで様々あります。特に、24時間の体内時計や心拍は身近なものです。睡眠のリズムや血液の循環など、生命活動に不可欠な機能を持っています。
生命におけるほとんどのリズムは、個々の細胞が作り出すリズムが、細胞間のやりとりを通してタイミングを合わせることによって作られています。このような現象は同期(シンクロ)と呼びます。シンクロは生物だけでなく、メトロノームのような機械や化学反応系にも現れる一般的な現象です。このようなリズムの機能や制御方法についての数学的な研究が盛んです。
体内時計に異常が起こる仕組みを数式で説明
数理物理・物性基礎の分野の中で、私は複雑系科学、非線形ダイナミクス、数理生物学と呼ばれる研究を専門にします。特に、シンクロについて数学的・物理学的に研究を行っています。数学や物理と聞くと生命現象とは関係のない世界と思うかもしれませんが、私は、体内時計に異常が起こる仕組みを理解することに取り組んでいます。
例えば、体内時計の動作を記述する数式の構築を行い、それをもとに、時差ボケが起こる仕組みを説明できました。さらに時差ボケを回避する方法を予測し、この方法によって時差ボケの解消時間が有意に短くなることを実証しました。このような研究は看護師など深夜も交代制で働くいわゆるシフトワークの影響を予測し、また、少しでも悪影響を避けるためのスケジュール作りにも活かすことができると考えています。
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一般的な傾向は?
●主な業種は→IT企業、メーカー
●主な職種は→SE、技術職(研究開発など)
大学では自分の好きなことに取り組み、どんどん探求してください。
シンクロ(同期現象)やパターン形成などの複雑現象や、ネットワーク科学の数学的研究に関して取り組めるテーマがあります。
カオスとフラクタル
山口昌哉(ちくま学芸文庫)
カオスとは、ギリシャ語で混沌という意味で、自然の中の複雑な現象を解く数学のこと。例えば竜巻のように、最初の動きがわかっても、その後のでたらめな動きから生じる数的誤差により予測できないような複雑な様子を示す現象を扱います。
フラクタルとは、やはり複雑な自然の形象を幾何学で表したもの。図形の部分と全体が自己相似になっているものなどがさします。身近な例では、ロシアのマトリョーシカ人形のように入れ子構造になったものや、リアス式海岸のような自然の複雑な形象があります。
カオスとフラクタルは、身近で美しい現象であり、物理学、数学においても大変面白い話題です。この本はその一般向けの解説書です。