商学

ユーザーが自ら考えヒット商品を生み出す「ユーザー・イノベーション」研究


清水信年 先生

流通科学大学 商学部 マーケティング学科/流通科学研究科 流通科学専攻

どんなことを研究していますか?

良い商品を生み出して人々に喜んでもらえるビジネスは、どのように展開できるでしょうか。少し前まではプロの技術者や専門家しか、新商品を開発したり、新しいサービスを生み出すことはできませんでした。しかし最近、インターネットを用いて様々な情報に触れることができるようになり、ユーザー(商品の使い手)でも、欲しいものや必要なサービスを自ら考えて実現するということが可能になってきました。私はこのトレンドを、「ユーザー・イノベーション」という概念を用い、今まで存在しなかった新しいモノや仕組みを創造する仕組みとして研究を行っています。既に多くの企業が実践し、高い販売成果を挙げている事例も報告されています。

プロが思いもつかなかったアイデア!無印良品の消費者による商品開発

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その先駆的な取り組みの例に、「無印良品」の行っている消費者参加型の商品開発クラウドソーシングという方法があります。これは、消費者自身が無印良品のインターネットサイトに欲しい商品のアイデアを投稿し、それをもとに無印良品が商品化するというものです。私の関心は、こうした一般ユーザーのアイデアを企業側がちゃんと理解できるのか、ユーザーのアイデアを商品化するためには具体的にどのような課題やその解決法があるのか、という問題にあります。実用化に至らないアイデアも多いですが、時に素人であるユーザーの発案した商品の方が、専門家が作るものよりも高い価値を生み出す事例もあり、面白い現象だと思います。

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流通科学大主催の商品企画コンテスト・I-1グランプリで2018年度、優勝した私のゼミの4年生2人組です。そのときのプレゼンの様子です。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→流通業、サービス業
  • ●主な職種は→営業担当
  • ●業務の特徴は→会社が自信をもって扱っている商品やサービスの価値を、取引先やお客さんに伝えるための活動
分野はどう活かされる?

お客さんの立場から価値ある商品やサービスを提案することが重要となる業務ですので、日頃から社会の様々な情報を収集したり、人々の行動を観察したりすることが大事です。ゼミではそのための基礎知識を学び、実際の企画提案活動も行います。

先生から、ひとこと

マーケティングは、顧客をはじめとした「他の誰かと良い関係を築くための方法」です。企業はもちろん、現代社会で生きる我々すべてに関係する学問分野だと信じて、学生にも指導をしています。魅力的な新商品や心に残る広告、社会問題の解決に挑戦する活動などに興味がある方には、ぜひマーケティングの知識や考え方を身につけていただきたいと思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

流通科学大学は3つの学部しか持たない中規模大学ですが、マーケティング論や流通論に関しては、国内で他に類を見ないほど充実した研究スタッフを擁しています。開講している科目についても、この分野において非常に詳細かつユニークなものがそろっており、また講義だけではなく、学んだ知識を実践的な知恵として展開できるための機会(学生による商品企画提案、地域振興活動の展開など)も豊富に設けている、実学重視の学びの場です。

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I-1グランプリ、2019年度に準優勝だったゼミの4年生たち

先生の研究に挑戦しよう

どんな地域にも地元の名産品や伝統技術があるかと思います。若い方々の感覚からすると、それらはちょっと「古くさい」と感じるかもしれませんが、では現代の消費者にそうした地元が誇る商品や技術について価値を感じてもらうには、どのような提案の仕方をすれば良いか考えてみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

マーケティングを学ぶ

石井淳蔵

マーケティングとは、会社・組織が消費者や他の会社・組織と良い関係を構築するための活動だ。様々な技術発展や経済のグローバル化、人々の価値観の変化などが生じている現代の社会において、マーケティングという活動がどういった意味で重要であるのか、身近な企業や商品の例に触れながら論じている書籍。 (ちくま新書)


働く力を君に

鈴木敏文

セブン-イレブン・ジャパンを創業し、日本の小売業をリードし続けてきた鈴木敏文氏が著者。商売を通じていかに社会に貢献するかということの重要性と、その実践方法について学ぶことができる本。 (勝見明:構成/講談社ノンフィクション)


ゲームのルールを変えろ ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営

高岡浩三

著者は、スイスに本社があるグローバル食品メーカー・ネスレ社の日本法人元社長。同社の他国のリーダーからも注目されている経営手腕を持つ著者の考えから、新しい時代の企業経営のあり方について学ぶことができる。 (ダイヤモンド社)


ともにしあわせになるしあわせ フェリシモで生まれた暮らしと世の中を変える仕事

矢崎和彦

フェリシモは、神戸市に本社がある大手通販企業。同社は、単に利益をあげることだけが自分たちの存在意義ではないという理念を持つユニークな会社だ。価値観が多様化する現代社会における企業経営について、多くのことを考えさせられる書籍。 (英治出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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