患者の回復状態が推定できる“人工知能を備えた人工心臓”
神への挑戦、人工心臓開発計画
人類最大の死亡原因は心不全であり、この疾患に挑戦するために1960年代、米国の二大国家プロジェクトとしてアポロ宇宙計画と共に、“神への挑戦”と言われた人工心臓開発計画が始動しました。人工心臓とは血液を送り出す機械式のポンプで、病気の心臓の血液循環を助ける体内埋込型の医療機器です。
適切な強さの拍動が回復に有効
半世紀以上を経て現在、人工心臓では羽根車を電磁力などで非接触浮上させつつ、連続回転させることで血液を吐出する機構が採用されています。しかし、これら最新の人工心臓は連続的に血液を送り出すので、なんと“拍動”がありません。もし、病気の心臓の回復状態に合わせて、人工心臓が適切な強さの拍動を送り出すことができれば、早期に心機能が回復することがわかってきました。
制御工学と機械学習で新しい治療技術を提供
そこで私の研究では、ロボットの分野で使われる制御工学と機械学習を組み合わせることで、“人工知能を備えた人工心臓”の開発に取り組んでいます。羽根車には、病気の心臓がわずかに送り出す拍動の力が伝わります。そして、制御工学の技術でこの拍動を推定し、その力の強さから機械学習によって心臓の回復状態を推定します。さらに、推定した拍動に合わせて人工心臓のモータ回転数を上下させることで、患者の心臓と同じタイミングで拍動を送り出す“心拍同期制御”が可能な人工心臓を実現しました。
このように、人工心臓自体が患者のバイタルサインを推定し、新しい治療技術を提供することで、患者の生存率や生活の質が向上すると期待しています。
大学入学当初は宇宙工学に興味があって、機械系の分野に進学しました。しかし様々な研究分野に触れている中で、医療機器の発展は機械工学が大きく寄与していることを知りました。病気になった患者を救うのは医師である、と思っていた私にとって、実は機械工学の研究者・技術者が創り出す技術が非常に多くの人の命を救っていることを知り、人工心臓の分野へ進むことを決めました。
◆ 土方グループHP
◆主な業種
(1) 医療機器
(2) 自動車・機器
(3) 電気機械・機器(重電系は除く)
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
私の研究室を卒業したのちに医療機器メーカーに就職し、治療機器や診断機器の研究開発に従事する卒業生が多くいます。研究室では機械工学や制御工学に加えて、生体医工学についても知見を蓄えながら研究を進めていますので、その経験が上手く活かされているのだと思います。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 考古学 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? フォレスト・ガンプ/一期一会 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 剣道部・オーケストラ(ビオラ) |
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Q4.好きな言葉は? 交剣知愛 |