人工関節の摩耗メカニズムを明らかにし、炎症を防ぐ
微小に動くことで生じる摩耗に興味
私は、摩耗という現象が、繰返し負荷をうける実用的な環境で成長するメカニズムを解明する研究をしています。機械部品は部品同士で相対的な運動をして、動力を伝えます。その一方で、部品の表面に大きな力がかかると摩耗して材料が削れるなど損傷します。
この現象は、タイヤや軸受といったおなじみの部品から、生体内の人工関節まで幅広く見られます。私は特に、本来動いてほしくない場所で、微小に動くことで生じるフレッティング摩耗という現象に興味を持っています。
人工関節との摩耗で炎症が起こる
例えば、生体内に埋入した人工関節の金属表面と、生体組織の間で摩耗粉が生じます。このような摩耗粉は炎症の原因になるとされています。摩耗を防いだり、生体内であまり悪さをしない摩耗粉を作れないのか? 摩耗メカニズムの解明を通じて、健康寿命を伸ばすという高齢社会に対応する技術を開発したいと考えています。
摩耗を原子レベルでシミュレーション
摩耗の発生量は、簡単に言えば運動速度と接触する力で決まります。ですが、その過程で材料がどれだけ削れるのか?極限では原子の集団がなぜその面から離れていくのか?という基本的な問いに対し、理解は十分ではありませんでした。
ナノレベルで表面に接触させ、その摩耗過程を詳細に観察することで、繰返しにより特徴的に生じる組織損傷を明らかにすることを目指しています。また、原子レベルでのシミュレーション技術を用いて、摩耗によりナノレベルで原子集団が表面から離れていく過程を検証しています。
あんまり人には勧められませんが、大学時代は卒業論文から博士論文までテーマはすべて変わっています。それでも、大学院時代の恩師との議論の中で、き裂とは何なのか?どう取り扱うのか?には強く関心を持つようになっていました。生体材料やフレッティング摩耗についても、き裂を扱う力学の一環として考えるようにしています。
◆ 大塚研究室HP
◆主な業種
(1) 自動車・機器
(2) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等
(3) 医療機器
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 生産技術(プラント系)
(3) 品質管理・評価
機械工学分野では力学か材料を作るかのどちらかしか研究されていない事が多いです。長岡技術科学大学は実学志向ということもあり、機械工学分野も材料の力学特性を研究する人と、その材料の特性を研究する材料研究者の両方が一緒にいるのは珍しいかなと思います。
・生体内で起こる摩耗について調べよう
生体骨を置き換える人工関節は金属製のものが多いです。そのため、お互いの力学的性質が大きく異なり、表面で摩耗が発生します。摩耗が起こるとどのようなことが生体内で起こるのか、調べてみましょう。そして、摩耗を防止するための技術についても調べてみましょう。
石の目を読む 石器研究のための破壊力学とフラクトグラフィ
原著 :アレ・ツィルク、訳・編・著:上峯篤史 (京都大学学術出版会)
材料に生じるき裂を取り扱う力学を破壊力学と言いますが、一般的には機械構造物や橋梁などの重厚長大な構造物について語ることがほとんどです。き裂を取り扱う力学は、壊れない構造物を作ったり、逆にきれいに切ったりするためにも活用されます。
破壊力学の解説は高校生の方には難解ですが、それでも石の破面の美しさと力学がどう関係するのか を感じていただくのにおすすめです。きれいに割りたい、それがなぜこれほど難しいのか? 石器時代からの経験を20世紀に生まれた破壊力学で紐解くという点でユニークな本です。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 中世アジア史。昔から歴史学には関心がありますが、仕事にするだけの細やかさはありませんでした...。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ポルトガル。故郷の長崎と同じ港町なんですが、夕陽に染まった風景は今でも忘れられません。 |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? 『RRR』。ナートゥダンスはできない...。植民地支配についてインドが思い描くことにも触れることができます。あと単純に面白いです。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 舞台鑑賞。夢を見られます! 自分たちの仕事で、学生さんに夢を見せるための工夫をもっとすべきだと、強く感じるようになりました。 |