腫瘍治療学

がん治療

実験の失敗が新がん治療法「光免疫療法」の開発へ


小川美香子先生

北海道大学 薬学部(薬学研究院)

先生のフィールドはこの本から

化学・意表を突かれる身近な疑問 昆布はなんでダシが海水に溶け出さないの? 

日本化学会(ブルーバックス)

私たちのすぐ身近なところに化学があり、化学が私たちの生活や健康に役立つことがわかります。日々の生活で「なぜ?」の気持ちを持つと、自然に化学・科学が身につくと思います。

世界を変える研究はこれ!

実験の失敗が新がん治療法「光免疫療法」の開発へ

アメリカで、がんだけ光らせる薬剤を研究

理系学部では、大学卒業前に研究室に配属されます。私は、病気をイメージング(画像化)するための薬を開発する研究室を選びました。研究室での実験はそれまでの学生実習と異なり、答えがわからない問題に取り組むという点で非常に楽しいものでした。

大学院卒業後は、研究所などでイメージングの研究を続けていましたが、日本を一度出てみたいという思いが強く、アメリカの国立衛生研究所(NIH)へ研究留学しました。NIHでは小林久隆先生のもとで、がんだけを光らせることのできるイメージング剤の開発に取りくみました。

「細胞が死んでしまった」

ある日、新しく作ったイメージング剤をがん細胞にふりかけて顕微鏡で観察していると、がん細胞がみるみるうちに死んでいきました。がっくり肩を落として「細胞が死んでしまった」と小林先生に報告すると、小林先生は「治療に使える」と仰いました。これが、新しいがん治療法「光免疫療法」の始まりです。

新しいメカニズムの治療薬

日本に帰国後も、小林先生と共同研究を続け、光免疫療法のメカニズム解明を行ってきました。この薬のメカニズムを明らかにすることが新しい治療薬の開発には絶対に必要だと、薬学者として考えたからです。研究の結果、細胞膜上での凝集体形成という、まったく新しいメカニズムによる治療薬であることがわかりました。

現在も、学生・スタッフとともに、新しいイメージング法や新しい治療薬の開発に取り組んでいます。どこに答えがあるのかはわからないけれど、ヒトの役に立つという答えに向かって、一歩一歩進んでいけたらと思います。

小林久隆先生の講演会にて

先生のフィールド[光極限]ではこんな研究テーマも動いている! 
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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私が大学を卒業した頃は、まだ女性が広く社会で活躍する時代ではなく、特に仕事をしながら結婚・出産するのは普通の女性には難しいことでした。仕事も家庭も両立されてきた「スーパーウーマン」の方々は本当に能力が高く、また、多くの苦労をされたと思います。

でも、これからの時代は、スーパーウーマンでなくても、仕事と家庭を両立できる社会であるべきだと考えます。学生さんと話していると、男女とも若い世代は意識が改革されていると感じます。上の世代の意識を変えて、男性も女性がどちらも仕事と家庭を両立できる社会にしていければと思います。

◆先生が心がけていることは?

女性研究者支援

きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

この新しい光治療法が見つかった時は、なぜがん細胞が死ぬのかわからなかったのですが、ただ、今までの治療法とは違うというのは顕微鏡を見て感じました。どうして死ぬのかがわかれば、創薬につながります。臨床試験へ向けて進む一方で、薬学研究者としては基礎に立ち返りたいと思い研究をしています。

私は妄想するのが大好きで、秘密ですが、つまらない会議中は妄想が止まらなくなります。たいてい妄想は妄想でしかなく、冷静になって考えると論理破綻しているのですが、たまに、実現しそうなテーマに当たります。学生やスタッフ、共同研究者とともに妄想を議論し実験し実証していく過程が、研究者としての醍醐味だと感じます。

◆高校時代

英語教育に力を入れている高校でしたが、反発心からか英語が嫌いになってしまい、とにかく理系に進んで早く英語から離れたいと思っていました。しかし、いざ研究を始めてみると、論文を英語で読み書きし、国際会議では英語でプレゼンテーション、共同研究者とは英語で打ち合わせです。英語漬けの毎日です。今は、理系でも英語は絶対必要だから勉強するようにと学生には言っています。

◆出身高校は?

南山高校女子部

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!


小川美香子先生 の研究・研究室を見てみよう
研究室の学生が新しい薬を作っている様子
所属する学生の英語論文が受理されたお祝いのお寿司会
薬学部で学ぶとは

薬学部は、4年制の学科と6年制の学科に分かれています。一番大きな違いは、薬剤師国家試験の受験資格が得られるかどうかです。

6年制に進学した学生だけが受験資格を得ることができます。また6年制の学生は薬局や病院での実習など、薬剤師になるための教育を受けます。

一方、4年制の学生は多くが大学院へ進学し、研究者になるためのトレーニングを受けることになります。6年制の学生でも大学院博士課程へ進学し、研究者への道を進むこともできます。

中高生におススメ

負け犬の遠吠え

酒井順子(講談社文庫)

やや古いので現代の女性には当てはまらないこともありますが、「30歳以上・未婚・子ナシ」女性を負け犬と定義し、女性の自立について様々な観点から解説されています。いろいろな価値観があること、人それぞれで良いんだということを感じられる本です。男性にもぜひ読んでいただきたいです。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

アメリカ:広いから

Q2.印象に残っている映画は?

『レインマン』

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

普通に、マクドナルドで働いていました。・・・

Q4.研究以外で楽しいことは?

スキー

Q5.会ってみたい有名人は?

皇后雅子様


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