2種類の制御×AIで、家事も農作業もできるロボットに
初めて見るものは操作できないロボット
ロボット技術が非常に発展してきているにも関わらず、料理・掃除・洗濯のような家事から農作業・建設作業に至るまで、多くの肉体労働を機械化することができていません。工場内での繰り返し作業ならば人間より遥かに早く正確に作業できるはずのロボットですが、人間にとっての単純労働が逆に難しいのです。
これは、統制された環境である工場と異なり、この世界はあまりに多様で微妙な変化に富んでいるため、システムをモデル化して制御系設計するというやり方が通用しないからです。「初めて見たものを何となく掴んで操作する」、人間が無意識に行っているこの動作こそが、今のロボットに決定的に足りていない能力なのです。
人間の動作=位置の制御+力の制御
人間の動作というのは、2つの制御の組み合わせでできていることはわかっています。どんなに押されても指令された位置にたどり着こうとする位置制御と、どんなに押されてもそれに倣って適切な力応答となるようにする力制御です。
前者は硬い制御、後者は柔らかい制御とも言えますが、この2つをどのように組み合わせればよいかは全く自明ではありません。本研究では人間の位置と力の技能を保存できるハプティクス技術と最新のAI技術を組み合わせることで、硬い制御と柔らかい制御をロボットに模倣させることを目指しています。
本研究が究極的に達成されたら、すべての肉体労働をロボットに代替させることが可能になるかもしれません。
→先生のフィールド[社会デザイン] 平成29年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!ソフトを変えるだけで一台のロボットが何でもできるようになることを目指しています。汎用計算機であるPCのように、ロボットも汎用的になり、みんなが一台ロボットを所有する時代になるかもしれません。
◆テーマとこう出会った
学生の頃、人間の運動時の位置や力応答を計測制御するハプティクス技術を研究していましたが、産業応用にはなかなか結びつきませんでした。
その後しばらくしていわゆるAIブームが起こりました。ある時、AIを用いたロボットの物体操作の研究を学会で見ました。それは画像認識に新規性があったものの物体操作能力は低くく、思わず「なんでハプティクス技術を用いないのか?」と質問しました。位置と力を制御できればもっとよくできると思ったからです。質問して、すぐに自分が本当にやりたかった研究がこれだと気づきました。
それからはもう今の研究に夢中です。長らく培ってきたものと、時代の流れがちょうどうまくマッチして新しい研究が芽生えたのです。
◆高校時代は
高2まで筋トレやゲームのレベル上げをよくやっていました。少しずつではありますが、やれば必ず成長することが楽しかったからです。現在の研究でもこれは同じで、急に革新的な結果が生じるのではなく、地味で苦痛を伴うような作業を毎日こなしていくうちに他の人には見えない世界が見えてくるのだと思います。
◆出身高校は?
麻布高校
尾形哲也
早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科/基幹理工学研究科 表現工学専攻
【ロボットによる汎用的な肉体労働のためのAI技術】AI冬の時代からずっと信念を持って当該技術の研究を進め、第一人者となったので注目しています。
藤本博志
東京大学 工学部 電気電子工学科/新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻
【モーションコントロールの基盤技術から応用技術まで】基礎から応用まで全てにおいて、制御の世界の第一人者です。
応用研究に強みを持っており、非常にバラエティに富んだ専門家が多いです。特に、ロボット系の研究者が一か所にこれほど集まっている大学は日本でもかなり少ないのではないでしょうか。また、産学連携や大学発ベンチャーなどに強みを持っているのも特徴です。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? Underground Resistance 。特に、『Hi-Tech Jazz』 |
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Q2.熱中したゲームは? 『ぷよぷよ通』 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 子供の成長 |