原子力学

ラジオアイソトープ

体内の物質移動をラジオアイソトープで分析、医療へ貢献


富田英生先生

名古屋大学 工学部 エネルギー理工学科(工学研究科 エネルギー理工学専攻)

先生のフィールドはこの本から

元素はどうしてできたのか 誕生・合成から「魔法数」まで

櫻井博儀(PHPサイエンス・ワールド新書)

「元素がどうしてできたのか」という問いに対し、宇宙における元素合成と、そこに原子核が深く関わっていることをわかりやすく説明しています。

本書は113番目の元素がニホニウムと命名される前に執筆されているものの、その合成をどのように成功させたのか、またそれを支えた基盤である原子核や加速器の研究が如何に発展してきたのかがまとめられていて、自然科学を研究することの楽しさや、それを支える科学技術の重要さと広がりを知ることができます。

世界を変える研究はこれ!

体内の物質移動をラジオアイソトープで分析、医療へ貢献

新しい14C分析法を開発、高感度でより迅速に

レーザー光を使って、ラジオアイソトープ(RI)を分光・分析する手法の研究を行っています。

生体は酸素・炭素・水素・窒素を主成分として構成されていますが、生体内での物質の移動が解明できれば、効果が高く副作用の少ない薬を迅速に開発することや、個々の特性に適した医療を行うための診断を行うことに繋がります。

例えば、放射性炭素同位体(14C)は炭素の同位体のうちで唯一、長い半減期(5730年)を持ったRIであり、物質の移動を追いかけて測定する指標として有用です。

私の研究では、レーザー光と光共振器を組み合わせた新しい14C分析法の開発を進めています。これにより、従来法では実現することが困難であった高感度かつ迅速な14C分析が実現できます。

炭素循環解明や年代測定に期待

この手法は、環境中にわずかに存在する14Cを用いた大気中炭素循環解明や考古遺物に含まれる14Cの分析による年代測定法、他のRI分析への適用など幅広い分野への応用が期待されています。

この他にも、レーザー光によって元素や核種を選択してイオン化する手法を個別化医療にむけたRIの分析や分光に利用する研究も行っています。

上手に利用すれば大きな恩恵をもたらすRI

RIは正しく恐れて上手に利用することで、今よりももっと大きな恩恵が社会にもたらされると考えています。さらにこの研究を進めることで、ごく僅かなRIの超高感度分析法と放射線計測などの他の測定原理を融合した革新的な手法が実現できると期待しています。

RIを用いる実験室にて、開発中の分析装置の制御用PCを大学院生と一緒に見ている様子(背後に写っているのはドラフトチャンバー)。RIを取り扱うため黄衣を着用しています。

先生のフィールド[量子生体]令和元年度採択問題ではこんな研究テーマも動いている! 
きっかけ&学生時代
◆テーマとこう出会った

大学院修士課程では、プラズマ理工学に関する研究グループに所属していましたが、そこで先輩がレーザー冷却の研究をしており、レーザー光によるアイソトープの制御(励起・イオン化)とそれによる分光・分析に興味を抱くようになりました。

当時所属していた専攻に新しい放射線検出法の開発やレーザーを用いた研究を行っていた研究室があったので、博士課程になる際に移籍し、新しい研究テーマ(レーザーによる新しいアイソトープ・放射線の測定法の開発)を立ち上げて研究を始めました。

◆高校時代は

科学部に所属しており、博士の学位を持つ顧問の先生から、大学での高校生向け夏期講習などを通じて、科学を学ぶことの楽しさを教えていただきました。 

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!

富田英生先生 の研究・研究室を見てみよう

富田グループHP

アイソトープとの出会いから現在の研究について(インタビュー)(公益社団法人日本アイソトープ協会)

マインツ大と名古屋大の(部局間)国際交流協定の締結を記念して、ドイツ・マインツ大の共同研究者と撮影したもの。(撮影者 Peter Pulkowski氏)
先生の学部・学科で学ぼう

未来の社会を健全かつ持続的に発展させていくことをエネルギーの面で強靱に支えることを目指し、エネルギーを「創る」、「貯める」、「送る」、「効果的に応用・活用する」ための研究と教育を行っています。原子核・原子・分子から大気循環などのような、ナノ~マクロスケールに至る幅広い分野の個性的な研究を行っているグループが集まっており、幅広い分野に触れることができます。

中高生におススメ

NHKスペシャル 映像の世紀

(NHKエンタープライズ)

高校時代にテレビで視聴し、動画撮影・配信技術の発明・技術革新が与えた強い影響力(正負両面)を実感しました。科学だけでなく、歴史・文化を学ぶことの重要性を実感するきっかけにもなりました。


スター・ウォーズ(映画)

ジョージ・ルーカス(監督)

ジョージ・ルーカスが構想した世界を映像化し、それを映画シリーズという形で商業的に成功させています。実現したい作品(研究)を作り上げる環境を作り出し、その作品が新たな創作を生み出し、社会の新たな価値となっていくという点において、自然科学における研究にも通じていて学ぶべき点が多いです。


Teenager Forever

King Gnu

曲はいうまでもなく、悩みや将来に対する不安が多い高校生にストレートに届く歌詞が何より魅力的です。高校生だけに向けたものではないものの、自分が高校時代に聞きたかったと感じ、選びました。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

工学。といっても、既に学問に境界がなくなってきているので、工学を中心に+α。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ドイツ。博士課程の時から何度か長期・短期滞在した思い出の地で、現地の先生と研究やプライベートで今も交流が続いているため。

Q3.熱中したゲームは?

『ファイナル・ファンタジー』シリーズ。シリーズでの共通点を維持しつつ、ゲームシステムを毎回大きく変更する新しさが面白く、熱中しました。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

学会誌に掲載する原稿を校正するアルバイト。大学教員になってから学生の卒業論文などのチェックに役立っています。

Q5.研究以外で楽しいことは?

子供の成長をみること


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