有機化学

環境発電

化学で次々、ものづくり。世界トップレベルの発電材料も


村田理尚先生

大阪工業大学 工学部 応用化学科(工学研究科 化学・環境・生命工学専攻)

先生のフィールドはこの本から

炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす

佐藤健太郎(新潮選書)

化学を専門分野とされるサイエンスライター、佐藤健太郎氏が執筆された本で、世界の歴史と有機化合物との関わりを面白くまとめられています。教養が深まると思いますので、すべての高校生に推薦します。

世界を変える研究はこれ!

化学で次々、ものづくり。世界トップレベルの発電材料も

「これからは環境発電やで」

2015年ごろ、同じ部屋で研究の仕事をされている先輩が、「これからエナジーハーベストが注目されるそうやで」と話しかけてくれました。漢字で書くと「環境発電」。化学は「もの」のサイエンス。環境発電の課題を解決する「もの」を作れるかな、そう漠然と思いました。

あふれる熱を電気に変える

環境発電とは身の周りの小さなエネルギーから電力を生み出す発電技術のことです。今日の社会は熱に満ちあふれています。例えば、自動車、家電製品、工場の配管、もちろん人や動物の体も。これらの熱を電気に変える環境発電が進化したら、コンセントや乾電池がない場所でも配線なしの電力を得ることができます。

なぜそれほど注目されているのでしょうか。それは「モノのインターネット」と呼ばれるように、何でもネットワークにつながる未来の社会では、膨大な数の無線センサの利用が見込まれているからです。

「貼り付ける」熱電デバイスもできる

有機化合物や高分子化合物で作る熱電デバイスなら、どこでも貼り付けることができますし、熱伝導率が低い性質も応用に適しています。しかし、熱電デバイスに必要なn型半導体には十分な性質を持つ物質がありません。

私は「もの」を作るデザイナーになりたいと願っています。実際に化学の研究を始めてみると、次から次へと新事実が明らかとなってきました。世界トップレベルの性能を示すn型熱電膜の簡単な作り方も見つけました。わくわくの連続です。これからも環境発電で世界を変えられるように、化学の挑戦を進めます!

熱を電気に変える新素材(もの)をつくる実験の風景

先生のフィールド[微小エネルギー]ではこんな研究テーマも動いている!
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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災害が起こっても簡単には負けないような社会を「レジリエントな社会」と言います。

電力について見てみると、コンセントの電源は配線が切れると使えなくなります。地震や津波などの災害により、電力が利用できなくなった場合でも、環境発電があれば屋内・屋外を問わず周辺の熱や振動から発電することができます。

有機化合物を用いて安価な熱電デバイスを作る研究が進めば、レジリエントな社会づくりに大きく貢献することができます。

きっかけ&学生時代
◆テーマとこう出会った

化学は「もの」のサイエンスと言いますが、すべては元素周期表にある元素の組み合わせで作られています。高校の教科書を見ると、医薬品や染料、糖類、たんぱく質など、たった数種類の元素からたくさんの重要な「もの」ができていると解説されています。難しい数式なしで面白いのが化学の醍醐味だと思います。

有機化学は、炭素を中心にいろいろな元素を結び付けて、教科書にはない世界初の分子を作ることができます。熱から電力を作る環境発電の開発においても、どんな「もの」が未来社会で求められるのか、そしてサイエンスはどこまで進んでいるのか、それらを学会や学術論文などで学んで、新しい「もの」のデザインに活かすことで研究に挑戦しています。

◆中高時代は

将来、何をしたらいいのかわからない、そんな中高生も多いと思います。私はその頃、研究という仕事が幸せで楽しいのか、まだわかっていませんでした。父親が大学で誇り高く熱心に研究に取り組む姿を見ながら育ちましたが、身近な例が少なかったのだと思います。

有機化学はやや得意でしたし、製薬や素材などは日本が強い技術分野だと知り、大学・大学院では真っすぐに化学系に進みました。そこで研究を志す素晴らしい人々から多くの刺激をいただき育ててもらったことに、今では本当に感謝しています。

◆出身高校は?

京都教育大学附属高校

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!


村田理尚先生 の研究・研究室を見てみよう

村田研究室HP

学生が学会発表の練習をしている様子
先生の学部・学科で学ぼう

環境発電の研究には、新素材を作るだけでなく先端計測の技術も必要です。当学科は、合成化学だけでなく、高分子化合物の微粒子作製や構造解析に関する研究力にも強みがあり、学生は「もの」づくりから先端計測にわたる広く深い知識を学ぶことができます。

学部では国際PBLプログラムに参加して、グローバルマインドを醸成できます。大学院に進学すると、海外の一流の研究室に留学して研究する制度があります。さらに、国際学会で発表するための費用の援助を受けることもできます。これらは当学科の併願先となるような大学にはない特色だろうと思います。

中高生におススメ

愛国心を裏切られた天才 ノーベル賞科学者ハーバーの栄光と悲劇

宮田親平(朝日文庫)

私は歴史も大好きなため、ノーベル化学賞を受賞したハーバーの人生が語られた本書を、理系に興味がある高校生には強く推薦したいと思います。第一次世界大戦の頃のドイツをイメージでき、教養になると思います。


風と共に去りぬ

マーガレット・ミッチェル(岩波文庫)

人生の糧になるという観点で、すべての高校生に強く推薦したい小説です。アメリカの南北戦争のイメージが沸くようになるだけでなく、いろんな名言が心に刻まれるでしょう。素晴らしい小説です。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

Queen。特に『Don’t Stop Me Now』

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

 『ワイルド・スピード』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

宅配便トラックに荷物を積み込む早朝バイト 

Q4.研究以外で楽しいことは?

読書、史跡めぐり

Q5.会ってみたい有名人は?

東郷平八郎とフレディ・マーキュリー


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