理論経済学

行動経済学

心の葛藤に着目した経済学で、消費者保護の政策を


室岡健志先生

大阪大学 法学部 国際公共政策学科(国際公共政策研究科)

出会いの一冊

世の中を知る、考える、変えていく 高校生からの社会科学講義

編著:飯田高、近藤絢子、砂原庸介、丸山里美(有斐閣)

環境、貧困、テクノロジー、ジェンダーという問題のそれぞれに対して、経済学、政治学、法学、社会学の4つの立場から各専門家が書いた本。現代の社会科学について知りたい学生に強くおすすめ。

現代の経済学は、多くの高校生が「経済学」と聞いて想像する内容よりも、分析する対象が大きく広がっています。その広がりを知っていただければ嬉しいです。

こんな研究で世界を変えよう!

心の葛藤に着目した経済学で、消費者保護の政策を

時間やお金を浪費する行動を分析

行動経済学とは、経済学の考え方に人の心理や考え方の癖等を組み入れて分析する、近年注目を集めている研究分野です。

研究トピックのひとつとして、ある人の経済活動がほかの人に及ぼす影響を経済学では「外部性」と呼びますが、行動経済学では一個人の中での葛藤である「内部性」に着目します。

例として、ゲームや動画等に、自分でも思いがけないほどハマってしまうことがあります。最初のうちは時間を使いすぎないようにと考えていたのに、次第に熱中してどんどん長くなり、課金し、最後には後悔する結果になることもあります。

こうした、時間もお金も浪費するような効率性・合理性から外れた行動になぜ走ってしまうのかを、行動経済学では内部性に着目し分析します。

ジムや塾は「コミットメント」を提供するビジネス

内部性を克服するため、将来の自分の行動を制限する「コミットメント」を提供するビジネスが近年増えてきています。

例として、運動や食事の指導を行うトレーニングジム、健康増進を促進する生命保険等があります。塾や家庭教師も、勉強しないことを防ぐコミットメントとしての機能もあるでしょう。

内部性を悪用するビジネスも

他方で、内部性を克服するためではなく、内部性を利用して消費者を搾取するようなビジネスもあります。

例として、インターネットのデザイン等を消費者にとって不利な選択に誘導する「ダークパターン」があります。私は、それに対しどのような消費者保護政策が消費者および社会にとって望ましいかを研究し、また政策現場でその知見を提供しています。

ヨーロッパ経済学会(於スイス・ジュネーブ、2016年)にて、消費者保護政策に関連する研究報告を行っている写真。
ヨーロッパ経済学会(於スイス・ジュネーブ、2016年)にて、消費者保護政策に関連する研究報告を行っている写真。
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中高生におすすめ

ひたすら読むエコノミクス

伊藤秀史(有斐閣)

現代のミクロ経済学の「考え方」を、数式やグラフを一切使わずに伝えている本。経済学や隣接分野を志望するすべての学生に手に取ってみてほしい。


行動経済学の使い方

大竹文雄(岩波書店)

日本の政策に実際に用いられた事例を含めた、行動経済学の応用について解説している入門書。行動経済学について興味をもった学生に強くおすすめ。

一問一答

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