心の葛藤に着目した経済学で、消費者保護の政策を
時間やお金を浪費する行動を分析
行動経済学とは、経済学の考え方に人の心理や考え方の癖等を組み入れて分析する、近年注目を集めている研究分野です。
研究トピックのひとつとして、ある人の経済活動がほかの人に及ぼす影響を経済学では「外部性」と呼びますが、行動経済学では一個人の中での葛藤である「内部性」に着目します。
例として、ゲームや動画等に、自分でも思いがけないほどハマってしまうことがあります。最初のうちは時間を使いすぎないようにと考えていたのに、次第に熱中してどんどん長くなり、課金し、最後には後悔する結果になることもあります。
こうした、時間もお金も浪費するような効率性・合理性から外れた行動になぜ走ってしまうのかを、行動経済学では内部性に着目し分析します。
ジムや塾は「コミットメント」を提供するビジネス
内部性を克服するため、将来の自分の行動を制限する「コミットメント」を提供するビジネスが近年増えてきています。
例として、運動や食事の指導を行うトレーニングジム、健康増進を促進する生命保険等があります。塾や家庭教師も、勉強しないことを防ぐコミットメントとしての機能もあるでしょう。
内部性を悪用するビジネスも
他方で、内部性を克服するためではなく、内部性を利用して消費者を搾取するようなビジネスもあります。
例として、インターネットのデザイン等を消費者にとって不利な選択に誘導する「ダークパターン」があります。私は、それに対しどのような消費者保護政策が消費者および社会にとって望ましいかを研究し、また政策現場でその知見を提供しています。