光とともに…(漫画)
戸部けいこ(秋田書店)
自閉スペクトラム症(自閉症)というのは脳の障がいですので、外見ではわかりません。それに加えて、自閉症の示す症状は人によって様々なため、周囲からは「しつけの問題」「わがままな子」と思われるなど、理解されにくい障がいです。
この本が出版された当時は、まだ自閉症のことが今ほど世間一般に知られていませんでしたので、世間に与えた衝撃は大きかったと思います。しかし今読んでも自閉症の子どものパニックの様子、それに対応して疲弊していく家族の様子、障がいを受容していく母親の姿など、参考になる部分は大きいと思います。ぜひ一度手に取って、自閉症の世界をのぞいてみてください。
日本発!情報通信技術による発達障がい児の親支援を、世界へ
自閉症のお子さんとの出会い
私は現在、発達障がいに対する心理的支援をテーマに研究をおこなっています。そのきっかけは、一人の自閉症のあるお子さんとの出会いでした。その子は会話ができませんでしたが、ピアノの前に座ると、一度聞いた曲を完璧に再現することができました。
当時大学生だった私は衝撃をうけ、この障がいについて勉強を始めました。発達障がいは脳の機能障がいで、現代医療においても未だ治療法がありません。しかし症状を和らげたり、社会生活を過ごしやすくしたりする方法は、たくさんあります。
ICTで障がい支援サービスの地域格差を解消
私の研究では、そのような方法を考えて検証し、医療や社会へ提案しています。今私が取り組んでいる研究は、ICTを使ったペアレント・トレーニング(ペアトレ)です。ペアトレはこの10年余りで国内の研究がすすみ、発達障がい児の親支援として厚生労働省も推奨しているプログラムです。
しかし日本においてもサービスの提供に地域格差があります。ICTを使用するペアトレを開発することでそれが解消でき、日本全国どこに住んでいても同じレベルのサービスを受けることができる可能性があります。このコロナ禍において、ICTを用いたペアトレの研究が加速しています。
世界中に戦っている親御さんがいる
これは日本国内に限った話ではありません。世界の中で発達障がいへの対応方法を知らず、目の前の子どもと戦っている親御さんがたくさんいます。
そのような親御さんにICTを使ってサポートできる可能性があることは、とても夢があると思いませんか。少しずついろいろな国の言葉に訳し、多くの国に発信していきたいと思っています。
2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、すべての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け動き始めました。しかしながら、障がい等が理由で、大学や社会において様々な困難が生じていることがまだまだ多いのが現状です。
鳥取大学学生支援センターでは、困り感のある学生に対して、入学から卒業まで、学内資源を利用した連続した支援体制を構築し、すべての学生のコミュニケーションの円滑化、および問題解決能力の向上を目指す実践的活動を積極的に行っています。
◆先生が心がけていることは?
なるべくエコを意識しています。地産地消を心がけたり、生活の中でプラスチックを減らすように意識しています。
「行動障害を示す自閉症へのICTを活用したペアレント・トレーニングの開発と検討」
近藤武夫
東京大学 工学系研究科 先端学際工学専攻/先端科学技術研究センター
質的調査に基づいた障がい学生の学びの困難や解決に関する事例の収集と分析、利用可能なテクノロジーと人的配慮や実施コストの考慮、およびそれら支援や配慮の効果について、エビデンスに基づいた合理的な方法を提案しています。障がい者に対して、多くのテクノロジーを利用しながら積極的な社会参加を促し、それを社会にエビデンスとして提案しています。
熊谷晋一郎
東京大学 工学系研究科 先端学際工学専攻/先端科学技術研究センター
障がいや病気を持った本人が、仲間の力を借りながら、症状や日常生活上の苦労など自らの困りごとについて研究する「当事者研究」を行っています。この分野における第一人者です。自らも脳性麻痺を抱えながら、臨床医としても多忙な小児科業務をこなしていた点を尊敬しています。さらに近年は、様々な分野において当事者研究として新たな視点を示唆しています。
井上雅彦
鳥取大学 医学系研究科 臨床心理学専攻
自閉症研究の第一人者。近年は強度行動障がいやペアレント・トレーニングの研究も行っています。私の師匠であり、共同研究者です。ご本人や家族との臨床の関わりの中で得られたことは、きちんと論文化することで社会に還元していく必要があると学生時代に言われたことは、未だ心に刻んでいます。
私は学生支援センターの専任教員として、障がいを持ちながら学ぶ大学生のサポートをしています。近年、大学では発達障がいや精神障がいの学生が急増しています。私は学生が合理的配慮を受けながらスムーズに授業を受けるためのサポートや、コーディネートを行います。この分野では、就労に向けたSSTプログラムや自己理解プログラムの開発などが研究されており、私の研究分野である発達障がい者の支援が生かされていると思います。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 医学。小児科分野を勉強したいです。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 子どもの影響で、最近はあいみょんをよく聞きます。『さよならの今日に』がお気に入りです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? ラグビー部のマネージャー |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 心理学の学生の間ではあるあるのバイトですが、児童相談所のアルバイト。他の分野の方には珍しいかもしれません。 |
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Q5.会ってみたい有名人は? 発達障がいの分野では栗原類さん。仕事と関係なければ新垣結衣さんと山下智久さん(ドラマ『コード・ブルー』が好き)。 |