科学教育

持続可能な開発のための教育

研究者と一緒に、ユネスコエコパークで生物多様性を学ぼう


永野昌博先生

大分大学 理工学部 共創理工学科 自然科学コース

出会いの一冊

博物学の時間 大自然に学ぶサイエンス

青木淳一(東京大学出版会)

「生物を研究する楽しみや意義」や「生物学における分類学や博物学の役割、博物館の重要性」が、著者の経験と実績にもとづき、わかりやすく書かれています。

こんな研究で世界を変えよう!

研究者と一緒に、ユネスコエコパークで生物多様性を学ぼう

大分・宮崎県境の山々がユネスコエコパークに

大分県と宮崎県の県境に聳える祖母山、傾山、大崩山とその周辺地域が2017年にユネスコエコパーク(以下、エコパークと略します)に登録されました。エコパークとは、優れた自然環境を適切に保全し、かつ、保全と利活用による持続可能な経済と社会の発展、つまり「人と自然の共生」を目的とする制度です。

市民と生物群を調査

人と自然が共生していくための第一歩は、人が自然を知ることです。しかし、当エコパークは高く険しい山岳地帯であるため、どのような生物がどこに生息しているのかなど、基本的な情報すらわかっていません。

また、当エコパークの面積は広大であり、かつ、調べなくてはならない生物群も多様です。そこで、研究者と市民の協働による継続的な生物多様性の調査手法(例えば、環境DNAを使った調査を市民と協働で行う方法)の開発やその成果の共有・発信のためのプラットホームとしてのGISデータベースの開発を行っています。

ESDの教材を作る

二歩目は、自然の環境保全機能や生物多様性は損なわず、その利活用によって持続可能な経済活動や社会を発展させていくための方法を市民一人一人が考えることです。そのため、当エコパークの自然と社会を題材とする当エコパークならではのESD(持続可能な開発のための教育)の教材を開発しています。

そして、これらを実践していきながら、ユネスコエコパークを活用した市民協働による生物多様性保全とESDのモデルの構築を目指しています。

創ったビオトープでサンショウウオ・水生昆虫調査のようす
創ったビオトープでサンショウウオ・水生昆虫調査のようす
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

「祖母・傾・大崩山ユネスコエコパーク」を活用したESD・環境教育の実践。

自然・野生生物を蔑ろにして進められている太陽光・風力発電について考える。

地域の生物多様性の解明、絶滅危惧種の選定。

◆先生が心がけていることは?

生物の立場になって、考える、発言する、行動する。

干潟の生物多様性調査のようす
干潟の生物多様性調査のようす
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「ユネスコエコパークを活用した市民協働による生物多様性保全とESDのモデルの構築」

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どこで学べる?
先生の授業では
◆講義の最初に
野外調査に一緒に行き、自然の中を歩きながら、生き物を探しながら、生物の暮らしぶりや生態系の仕組み、人と自然との関係について会話することで、研究の意義を理解し、研究者の思考を身につけてもらえるように心がけています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
土壌動物による環境診断調査のようす
土壌動物による環境診断調査のようす
先生の学部・学科は?

大分県で生物学が学べる唯一の学部です。自然科学コースは、生態学に関連した野外実習やバイオテクノロジーに関連した遺伝子実験などの実体験から学ぶ科目があります。また、当コースは物理学、化学、地学、天文学など様々な自然科学分野の授業・教員を揃えているため、自然科学の理論と地域社会の発展に資する科学技術を総合的に学ぶことができます。

授業で、水生生物を用いた環境診断調査を行っているようす
授業で、水生生物を用いた環境診断調査を行っているようす
中高生におすすめ

生物多様な星の作り方 生態学からみた地球システム

デイビッド・ウィルキンソン、訳:金子信博(東海大学出版会)

生態学的視点から科学、社会、地球のシステムを考え、生態学的思考からそれらのシステムの課題解決策が提案されている、学問と現実社会をつなぐ書籍です。


里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く

藻谷浩介、NHK広島取材班(角川書店)

都会のマネー経済至上主義の生活を見直し、里山を起点に発想の転換を図ることで生まれる新たな価値観やシステム「里山資本主義」を提案し、さらにその実践例を紹介した本です。


特盛山椒魚本 めくるめくサンショウウオ&イモリの世界(ぎょぶる特別編集)

関慎太郎、井上大輔(北九州魚部)

人知れずひっそりと暮らしている謎多きサンショウウオ。その魅力にとりつかれた30数名の著者(私もその一人)が、それぞれのお気に入りのサンショウウオの魅力や生態、研究成果や保全活動について熱く語っている本です。さらに、最近サンショウウオの新種が日本で数多く発見されているのですが、その最新の分類体系に基づいた図鑑としても使えます。サンショウウオという生き物とその愛好家・研究者の視点を通して、生物を研究する楽しさ、保全活動の大切さ、人と自然の関係など様々なことを吸収できる本です。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

生態学(18歳の時と変わらず)

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ブータン。未知の生き物がたくさんいて、治安が良く、英語が通じるから。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

 熱帯魚店

Q4.研究以外で楽しいことは?

釣り


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