教科教育学

小学校の英語教育

英語で対話したい気持ちを高める体験を授業で


物井尚子先生

千葉大学 教育学部 学校教員養成課程 英語教育コース(教育学研究科 学校教育学専攻)

出会いの一冊

英語学習のメカニズム 第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法

廣森友人(大修館書店)

最新の第二言語習得理論(Second Language Acquisition, SLA)研究の成果に基づいて、効果的な英語学習法や指導法を提案している一冊です。学習動機、学習方略など、心理学や教育学の情報がふんだんに含まれているのですが、「英語の勉強」という学習者にとって身近なテーマと関連づけながら説明されています。

「なぜ、英語をたくさん読み、聞くことが必要なのか」「なぜ、単語帳で何度も覚えた単語を忘れてしまうのか」など、普段の生活の中でふと感じる疑問に、丁寧に答えてくれる一冊です。自分の性格や行動パターンに合った英語学習法が見つかると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

英語で対話したい気持ちを高める体験を授業で

英語の授業で流暢に話す子、じっと耳をすます子

私は早期英語教育を専門に研究しています。大学で講義をする傍ら、小学校で英語の授業を行っています。授業では、全員を同じように指導しているはずなのに、流暢に英語を話しだす子がいる一方で、なかなか自分から声を出さず、他の人の声にじっと耳をすます子がいます。この違いは何によって起こるのでしょうか。英語力、集中力、それとも性格でしょうか。

子どもが英語を積極的に使う心の動きを観察

学習者のパフォーマンスの違いは、必ずしも英語力だけでは説明できません。私が注目しているのは「気持ち」です。小学校での英語教育における心理的効果に着目するのが私の研究です。L2 Willingness to Communicate(L2 WTC)という「英語を用いて他者と対話しようとする態度」が子どもたちの英語でのコミュニケーションに与える影響を解明しようとしています。

2020年度から、小学校では3、4年生から英語学習が開始されました。子どもたちが、教室内で英語を積極的に使うまでの心の動きを、アンケートや授業観察をしながら、子どもたちの言葉や、授業での様子を細かく確認することで、より客観的に彼らの反応を読み取ろうとしています。

海外への興味や自信を持つ体験が大事

今わかっているのは、L2 WTCが高まると、英語を使う行動につながること、このL2 WTCを授業で高めるためには、学習者が授業の中で「海外に興味を持つ」「英語を勉強するやる気が高まる」「自分の英語力に自信を持つ」という経験ができることが大事だとわかってきました。

今後は、L2 WTCと英語の成績には相関があるのか、L2 WTC向上のためにはどのような授業を提供できるのか、そのプログラム開発に取り組む予定です。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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公教育において質の高い内容を提供することが、私たちの人生を盤石にするものと信じています。小さい時に学んだことを忘れるのは、たやすくありません。また、忘れたように思っていてもちょっとした拍子に思い出すもの。そんな力を、英語の授業と通じて学習者にプレゼントしたいです。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「児童のL2 WTCを促進する英語教育プログラムの開発・検証とその普及」

詳しくはこちら

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先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な職種

(1) 小学校の教員

(2) 中学校、高校の教員

(3) 教材開発関連企業

◆学んだことはどう生きる?

千葉県内外で教員になっている卒業生が多いです。校種も、小学校、中学校、高校、大学と様々な場所で活躍しています。英語教育について専門的に学んだ学生たちですので、特に小学校では、学校の英語の授業を取りまとめるような役割をして活躍している卒業生もいます。

先生の学部・学科は?

千葉大学教育学部では、小学校での英語教育を指導するための力をつける大学独自の科目群が用意されています。英語教育コースがその中核を担いますが、教科を超えての研究も盛んです。また、附属幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校との連携授業も盛んで、実践を伴う研究が行われています。

中高生におすすめ

ちいさい言語学者の冒険 子どもに学ぶことばの秘密

広瀬友紀(岩波科学ライブラリー)

言語学者でありお母さんでもある著者が、子どもの言葉の成長をたくさんの例をあげて説明しています。思わず、そうそう!とうなずきたくなる一冊。ぜひお家の方に「自分もこんなこと言ってた?」と聞いてみてください。


スター・ウォーズ シリーズ(映画)

ジョージ・ルーカス他(監督)

多くを語る必要がない名作中の名作。心のアンテナが敏感な10代のみなさんにぜひ見ていただきたいです。善と悪が表裏一体であること、人間の強さと弱さ、世界、宇宙の広さ、自分とは何かを見つめるきっかけにしてほしいと思います。


20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

ティナ・シーリグ、訳:高遠裕子(CCCメディアハウス)

とにかく前向きになれる一冊です。固定概念を覆すための具体的な道筋が、大学の講義内での活動を通して描かれています。私も大学生に戻って同じ授業を受けてみたいです。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

アメリカ。学生の頃からの憧れの国だから。

Q3.熱中したゲームは?

『バイオハザード』

Q4.大学時代の部活・サークルは?

アーチェリー

Q5.会ってみたい有名人は?

イチロー


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