社会心理学

謝罪

脳は、本心からの謝罪を見極められる


大坪庸介先生

東京大学  文学部 人文学科 社会心理学専修課程(人文社会系研究科 社会文化研究専攻 社会心理学)

出会いの一冊

暴力の人類史

スティーブン・ピンカー、訳: 幾島幸子、塩原通緒(青土社) 

進化心理学者である著者が、先史時代から現代までの暴力のありようを化石的証拠、歴史資料などを使って描きだし、人類史を通じて暴力が一貫して減少傾向にあるという事実を示します。その事実を受け、後半ではどのような変化が暴力の減少の原因なのかを考えていきます。とてもスケールの大きな本です。

こんな研究で世界を変えよう!

脳は、本心からの謝罪を見極められる

何度も謝罪に訪れるのは本当に赦してほしいから

私は心理学者ですが、動物行動にも興味があります。ある時、動物同士の情報のやり取りをシグナルの進化として研究できることを知りました。捕食者と被捕食者のような利害が対立する動物同士でも、コストがかかったシグナルによって、信ぴょう性のある情報のやりとりが成立するというのです。

ヒトの対人関係を考えた時に、誰かに謝るのも似ていると思いました。「ごめんなさい」だけで済むなら誰でもそう言うでしょうから、信ぴょう性がありません。

ですが、赦してもらうために何度も相手のところに足を運ぶとしたらどうでしょうか。このようなコストのかかる謝罪は、本当に赦してほしくて、二度とひどいことをしないという人しかしないでしょう。

誠意の伝わり方を実験で調査

そこで、コストをかけた謝罪は誠意を伝えるという仮説を立てて、ひどいことをした人がコストをかけて謝る場面と、ごめんとだけ言う場面のシナリオを作り、それぞれどれくらい誠意が伝わるかを調べました。

日本を含む7カ国で調査をしましたが、世界中どこに行っても、コストのかかる謝罪の方が、誠意があるとみなされました。だったら、脳のどこかに、コストのかかる謝罪から誠意を読み取る部分があるのかもしれません。

コストのかかる謝罪が誠意を伝える

そこで、上記のシナリオの場面を想像している人たちの脳活動を調べました。すると、コストのかかる謝罪で、他者の意図を読み取る領域が活動することがわかりました。脳は自動的に相手の謝罪の誠意を見極めているようなのです!

日本心理学会の公開シンポジウムでの講演
日本心理学会の公開シンポジウムでの講演
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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私の研究対象は、対人関係を円滑に運ぶために不可欠な「仲直り」です。良い対人関係があると、人々は健康で長生きすることが知られていますから、仲直りの研究は人々の幸福と健康の促進に役に立つはずです。また、最近は、集団間関係でも個人間と同じようにコストがかかる謝罪が有効という結果を得ています。国のような大きな集団にも当てはまるのなら、国際関係での「仲直り」、つまり平和維持にも役立つと期待しています。

◆先生が心がけていることは?

一応、マイバッグは持ち歩いています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「赦しの感情・神経学的基盤に関する研究」

詳しくはこちら

注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
先生の授業では
◆授業の初回などに話すこと
霊長類学の話をして、ヒトとの類似性に興味を持ってもらいます。例えば、「南米のオマキザルは、お互いに自分の指を相手の目に突っ込むことで信頼を確かめます。ヒトも秘密を明かし合うような危なっかしいことをして、信頼を確認します」といった話をします。

学会講演のため訪問したバリ島にて、カニクイザルとともに。カニクイザルは霊長類の仲直り研究で対象になったサルで、よく授業でも取り上げます。
学会講演のため訪問したバリ島にて、カニクイザルとともに。カニクイザルは霊長類の仲直り研究で対象になったサルで、よく授業でも取り上げます。
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

民間企業,情報産業,官庁など多岐にわたります

◆主な職種

人事,教育,調査,取材,システム・エンジニアリングが比較的多いようです

◆学んだことはどう生きる?

実習で実験、調査、データ分析などを学ぶことが、上記の職種につながっていると考えられます。また、大学院に進学して学部でとりくんだ研究を継続する人もいます。

中高生におすすめ

つきあい方の科学 バクテリアから国際関係まで

R. アクセルロッド、訳:松田裕之(ミネルヴァ書房)

政治学者である著者は、囚人のジレンマ・ゲームという「お互いに協力した方が得になるけれど、相手が協力してくれるなら相手を搾取する方がさらに得になる状況」を使って、どうやってお互いに協力し合う状況を持続できるだろうかという問いに挑みます。

ただし、挑み方はとてもユニークです。世界中の研究者に招待状を送り、この状況でうまくやれると思う戦略を応募してもらいました。そして、応募された戦略をコンピュータ上で競争させたのです。

果たしてどんな戦略がこのトーナメントを勝ち残ったのでしょうか。ぜひこの本を読んで、その答えを確かめて下さい。


オデッセウスの鎖 適応プログラムとしての感情 

R.H.フランク、訳:大坪庸介(サイエンス社)

皆さんは怒りにまかせて衝動的に行動して後から後悔したことはありませんか。恋は盲目で、後から考えるととても恥ずかしいことをしたことはありませんか。西洋には、感情を合理的思考に対置させて考える伝統があります。感情が、愚かな行動の源泉のように考えられているのです。

経済学者の著者は、ダーウィンの進化論に基づき、感情は実は私たちを賢く行動させるために進化したものだと考えます。そして、一見愚かに見える感情的行動の背後にある合理性を見事に解き明かしてくれます。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

データサイエンス

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

アメリカ。かつて留学していたシカゴ地区に愛着があるので。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『風の谷のナウシカ』

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

キャンプの引率のバイトをして、北海道のキャンプ地を転々としたことがあります。

Q5.研究以外で楽しいことは?

マラソンに熱中しすぎて、半月板を痛めてしまいました。次に何をしていいのか困っています。


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