教育学

留学プログラム

異文化に適応する力をはぐくむ留学プログラムを開発


正楽藍先生

神戸大学 国際人間科学部 GSPオフィス

出会いの一冊

タテ社会の人間関係 単一社会の理論

中根千枝(講談社現代新書)

日本にいても様々な国の人と関わったり、海外の情報に触れたりすることが容易になっています。日本とほかの国との垣根が低くなっていると感じることが多いのは事実です。

しかし、日本とは異なる文化の中で育ってきた人とちょっとしたことで意思疎通がうまく図れなかったり、どうしても相手の言動を理解しがたく思ったりすることはあります。そんな時に、日本の社会の特徴を冷静に考えるのにぴったりの書籍です。

こんな研究で世界を変えよう!

異文化に適応する力をはぐくむ留学プログラムを開発

海外留学をすすめるわけ

なぜ大学は、在学中の留学を推奨するのでしょうか。一つには、皆さんが入学前に身につけた外国語運用能力やコミュニケーション・スキルといった能力を素地として、入学後に問題解決能力や主体的な行動力を培いながら、異文化適応力を獲得していくという大学側の期待があり、海外留学はこうした能力の獲得に効果的であるといわれているからです。

同じプログラムなら、同じ能力を獲得できるのか

では、同じ学科や学部へ入学し、同じ教育課程を履修すると誰でも、同じような能力を獲得するのでしょうか。

次のようなケースはどうでしょうか。海外経験豊富な共働き家庭で育ち、自身も幼い頃から海外旅行へ行っている花子さんと、専業主婦(主夫)と片働き家庭の太郎くんが同じ学科へ入学、しかし別々の留学プログラムを履修した後に異文化適応力を測定したところ、花子さんのほうが太郎くんよりも高い異文化適応力をもっていることがわかったとします。

異文化適応力の獲得には、花子さんが履修した留学プログラムのほうがより効果的であるといえるでしょうか。もし太郎くんが花子さんと同じプログラムを履修していれば、彼も花子さんと同じ程度の異文化適応力を獲得することができたのでしょうか。

何が異文化適応力を獲得するカギか

問題はそれほど単純ではありません。花子さんと太郎くんそれぞれが入学前から備えていた能力、入学後の大学生活、進路計画など、様々な要素が留学プログラムの特性と複雑に絡み合って異文化適応力の獲得という結果に影響を及ぼしています。

私の現在の研究は、これらの要素を一つひとつ解きほぐしながら、どの要素がより強く異文化適応力の獲得へ影響を及ぼしているのかを見極め、より効果的な留学プログラムを開発するヒントを見つけることを目的としています。

イギリスの大学院への留学中、共に学んだコースの仲間と。2004年、Brightonにて(左端が正楽先生)
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「グローバル時代を生き抜く力を育成する大学教育―高校からの学習成果移行の観点から―」

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先生の学部・学科は?

「国際」の付く新設学部は多くありますが、神戸大学国際人間科学部のように、人文・社会科学系のみならず、工学系や教育系の学科も持つ学部は珍しいと思います。大学では専門の学問分野ごとに専攻が分かれますが、現実世界は違います。人文・社会科学系の人も、工学や教育系のバックグラウンドを持つ人と協同しなければならない場面が多くあります。

国際人間科学部には様々な学問分野の教員が所属し、学生の専攻も多岐にわたります。特定の学問分野の中でのみ、自分の学びを深めるのではなく、自分が「学びたい、追究したい」と思うことに必要な幅広い知識を身につけることができる、それが国際人間科学部の特徴です。

先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

やはり社会学を専攻すると思います。私たちの身の回りで起きているあらゆることの原因を追究し、「なぜ」の問いを自ら解明することは大変面白いと思います。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

2019年に公開された邦画、『新聞記者』。


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