理科の学習は実物で!アカパンカビの仲間で遺伝学を学ぶ
実物で自然を理解する
「理科の勉強は実物で!」というのが、この研究の根っこです。教科書や副読本には正しく、わかりやすい説明があり、きれいな写真や図も満載です。また、ウェブやタブレットで、動きのあるものとして見ることもできます。そして、このような環境になったからこそ、学校の授業で、実物に触れながら自然を理解するチャンスが拡がっています。
思い通りにならないから、実験を続ける
研究の場では常に、自分がアクションを起こし、それに対して結果が返ってきます。しかし、生き物を相手にすると、思い通りにならないことも多いです。
理由は、たくさんのことが結果に影響するからです。ほんの数℃の温度の違いによって、まったく違う結果になることがあります。そして、その理由や原因を考え続け、実験を続けることによって、自然の姿を理解できます。
遺伝・生殖の教材は限られるが
実際には、様々な優れた実験教材が準備され、それぞれの環境の制約下で実践されています。
しかし、生物学の基本とも言える遺伝学、それも、メンデルの遺伝学を、学校の現場で生殖や遺伝の学習期間に追体験できる教材は限られています。これは、材料の維持や交配にかかる時間のためです。ビードルとテータムが一遺伝子一酵素仮説を示した際に材料としたアカパンカビの仲間を材料とすると、これらの問題を解決することができます。
この研究で開発する交配実験の教材が普及し、より多くの生徒さんたちが生き物に触れることを通じて、遺伝と遺伝子についての理解を深めることを目指しています。
ITとAIによって、教育の情報の部分は今後、より多くの人に公正に、かつ生涯を通じてアクセスが担保されるようになるでしょう。しかし、自然は多くのものが相互作用し合い、同じインプットが常に同じアウトプットを導くとは限りません。この研究で開発する教材は、情報から実際の自然につながる架け橋のうちの一つとして、既存の多くの優れた教材とともに、学校教育の質を高めることにつながります。
「遺伝に関わる実習の制約を解決する教材としての子のう菌類の研究」