社会学

天皇と日本人意識

映画の中の天皇は、20世紀はじめの「日本人意識」形成にどう影響したか


右田裕規先生

山口大学 時間学研究所

出会いの一冊

都市のドラマトゥルギー

吉見俊哉(河出文庫)

19世紀から20世紀の東京の盛り場が、人々にとってどういう意味を持ち、またどう体験されていたのかという問題を扱った研究です。特に読んでほしいのは、盛り場での人々のふるまいから、次第にお祭り的な要素が消えていった経緯についての分析です。

出来事に参加するのでなく、出来事を見ようとする態度が、なぜ近代社会では一般に広がるのかという、より大きな問いに対する答えがクリアに提示されています。

こんな研究で世界を変えよう!

映画の中の天皇は、20世紀はじめの「日本人意識」形成にどう影響したか

100年前、どう「日本人意識」が広まったか

ここ何年か取り組んでいるのは、100年ほど前の日本社会で、「自分は日本人だ」という意識がどういう仕方で、どの程度まで、一般の人びとに広まっていたのかという問題についてです。この意識の拡がり方を、特に映画産業の成長とからめながら考えるというのが、現在の研究テーマとなっています。

天皇が日本人の代表者

近代の日本社会の場合、君主、つまり天皇が、特に人びとの日本人意識が生み出される上で、最も重要な「シンボル」となって働いたと長い間考えられてきました。つまり、天皇が日本人という民族の代表者であるという教育を行うことで、「何々藩」とか「何々村」とかよりもずっと広い世界に自分は属しているという意識を人びとは獲得していったと見られていました。

人々が天皇をどう眺めたのか、資料から明らかに

ただし、当時の人びとが、君主やその家族について新聞や雑誌や映画で見たり聞いたりすることで、「自分は日本人だ」という意識を本当に持つようになっていたのかどうかは、実のところきちんと検証されていないままにあります。

新聞や雑誌や映画に現れた天皇を、20世紀はじめの人びとがどのように眺め、またそれらを観ることでどのような感情を刺激されたのかについてのいろいろな資料を集めて、この検証されてない論点を埋めるというのが、今進めている研究の目的です。こうした昔の民衆の意識についての研究作業の面白さは何よりも資料探しにつきるので、感覚としては宝探しに近いように思います。

戦前の映画雑誌などを見て調査を行ないます。  見開きになっているのは昭和の即位礼のニュース映画の特集号の目次です。
戦前の映画雑誌などを見て調査を行ないます。 見開きになっているのは昭和の即位礼のニュース映画の特集号の目次です。
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「天皇実写映画の上映・鑑賞様式に関する歴史社会学的研究」

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中高生におすすめ

限界芸術論

鶴見俊輔(ちくま学芸文庫)

〈芸術〉なるものについての面白い見方が書かれているので、芸術や大衆文化に関心がある人におすすめです。鼻歌や学芸会の台本など、芸術だとは普通思われていない日常的な事柄を含めて〈芸術〉と見る視点をこの本で教えられてから、書類を作るのが比較的好きになりました。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

世界史

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

中国

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『E.T.』

Q4.熱中したゲームは?

ファミコン全般。


チャーハンなら毎日食べても飽きないので住むなら中国がいいと思いました。 上の写真は、チャーハンやラーメンなどの中華料理が日本社会で定着した歴史にも ナショナリズムが深く関係している、という話を扱った本です。
チャーハンなら毎日食べても飽きないので住むなら中国がいいと思いました。 上の写真は、チャーハンやラーメンなどの中華料理が日本社会で定着した歴史にも ナショナリズムが深く関係している、という話を扱った本です。

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