大人たちの学校 生涯学習を愉しむ
山本思外里(中公新書)
教育、教育学というと、私たちは学校や子どもたちの姿をイメージしがちです。しかし実際には、大人たちが、いわゆる小・中・高・大のような標準的な学校とは違う場で、様々な学びを展開しています。そのような学校外で提供される教育のことを「社会教育」といい、このような社会教育と学校教育とを含めて包括的に捉えられた学びのことを「生涯学習」といいます。本書では、通常の学校以外の場で学ぶ大人の姿とその歴史が描かれています。
(私も含め)多くの人々は、大人になるまで、「学校」以外の学びの場に注目することがとても少ないと思います。しかし、教育学は決して子どもや学校というイメージだけでは語り尽くせない、広い範囲を対象とする研究分野であるということを、同書を通じて感じていただければと思います。
団地住民の活動から、地域がつながる手がかりを探る
団地住民が住民運動や学習活動を
かつての地域のつながりが失われていく今日の社会において、人々の間のつながりは改めてどのようにして育まれるのでしょうか。この手がかりを得る上で興味深いのが、都市近郊において高度成長期に建設された団地の住民の間に展開された住民運動や学習活動です。
出身地も職場もばらばらで、ただ結果として同じ建物・地域に住むこととなった当時の団地住民は、いかにして共同的な住民運動や学習活動を展開していったのでしょうか。また、団地が立地していた地域の行政はそのような動きをどう捉え、どのような働きかけを考えていたのでしょうか(例えば住民の学習・文化活動への場の提供など)。
知らないもの同士がいかに地域社会を築くか
具体的に私がこれまで取り組んできている研究としては、高度成長期の自治体が団地住民を対象として行ってきた調査の特徴を明らかにする取り組みが挙げられます。
当時新しく団地が建設された都市近郊の自治体、特に教育行政関係者らは、新たに出現した「まったく見知らぬもの同士の生活空間」の中にいかに「地域社会」を作り出していくのかについて、高い関心を持っていました。そこで、当時の教育学者の協力を受けつつ、各地の都市部で団地住民を対象とした大規模な調査が行われていったのです。
かつての大きな社会変動期の中での教育関係者の「団地住民」「団地社会」に対するまなざしや取り組みを明らかにすることで、現在の地域社会における人々のつながりの形成のために、どのように働きかけていくことが可能か(あるいは限界があるか)を探る手がかりとしたいと考えています。
「都市新中間層の共同性形成と社会教育に関する歴史研究:高度成長期の団地を事例として」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(3) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
◆主な職種
(1) 総務
(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(3) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
研究室出身者の中には、自治体職員として就職後、教育行政、特に社会教育行政の職員となり、大学時代に学んだ社会教育の知識を生かしつつ業務を行っている方もいます。また、大学院に進学した後、社会教育学の教育者・研究者として各地の大学で活躍している方もいます。
教育学部というと教員養成のイメージが強いですが、教育学系コースは、多様な研究手法からなる教育学の学びを基礎に、大学研究者、自治体職員、民間教育関連企業などとして働くことを目指す学生も多くいます。特に社会教育学では「学校以外の組織的な教育活動」である「社会教育」に関する基礎的知識に加え、地域社会の社会教育実践を支える社会教育士となるための、より実践的な知識・技能を学ぶことができます。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? キャンディーズ。当時の時代の雰囲気を感じさせる良さがあります。「オムレツをつくりましょう」(アルバム『春一番』1976年に収録)という曲が好きです。 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 混声合唱 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 北島三郎のバックコーラス(NHKの懐メロ番組収録で)。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? ラーメンの食べ歩き |
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Q5.会ってみたい有名人は? サニーデイ・サービスの田中貴。 |