アフリカの人々を尊重する紛争後支援を考える
内戦後も銃を持ち続ける姿を見て
私はEUが当時カンボジアで行っていた小型武器回収事業について学部卒業論文を書きました。
現地で情報収集をすると、内戦後に一般の人々が小銃を手放さない要因として警察・政府に対する不信感、自分の家族を自ら守ろうとする人々の想いに気づきました。この経験から警察を切り口に、紛争後社会の平和構築について研究するようになりました。
突きつけられた「なぜ警察を支援するのか」
英国の大学院に進学し、第一線の研究者・実務家から平和構築の理論・政策を学びました。修士論文のためにケニアの警察改革(支援)について調査した際に、現地の方から「なぜ警察を支援するのか?」と問いかけられました。
とてもシンプルな問いですが、紛争後に警察・国家の再建を「当たり前」と考えていた当時の私は困惑しました。この違和感を忘れずに研究を続けていく中で、その違和感を自分の言葉で説明できるようになりました。
国際社会が規定する違和感
それは国際社会の政策に私たちの価値観が投影され、被支援国がどのような道を歩むべきか、国際社会が規定してしまっているのではないかという違和感でした。
理論上は各国の社会的文脈に即した支援を行うべきですが、現実は必ずしもそうではありません。「おかしい」と指摘もできますが、なぜそうではないのか考えることも大切です。
私の研究は国内・国際政治の様々な力学がどのように紛争後社会の政策決定に影響を与えているのか可視化する作業ともいえます。紛争を経験したアフリカの国々は今後どのような道を歩むのでしょうか。
「16.平和と公正をすべての人に」に記載されている「司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築」しようとするのがまさに平和構築ですから、私の研究課題と直結しています。
同時に、紛争後・移行期社会における平和の実現には「5.ジェンダーの平等」「10.人や国の不平等をなくそう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」などといった課題への対処も不可欠であり、課題間の横の連携も大切だと思います。
「平和構築の力学と国家に関する研究:サブサハラ・アフリカの事例に着目して」
オーウェン・グリーン(Owen Greene)
University of Bradford School of Social Sciences
小型武器の規制など、紛争後社会の平和構築政策に関する研究をされています。各国政府の政策顧問を務めた経験を有し、英国の著名な国際NGOセーファーワールドの評議員でもあります。研究をする際に、常に政策・実務を意識している姿勢が素晴らしいと思います。
オリバー・リッチモンド(Oliver Richmond)
The University of Manchester School of Social Sciences
平和研究におけるポストリベラル・ピースに関する理論研究をされています。Failed Statebuilding: Intervention, the State, and the Dynamics of Peace Formation(Yale University Press)やPost-Liberal Peace(Routledge)など多くの著作を出されています。研究に対する熱意とその真摯な姿勢に影響を受けました。
ケネディ・ムクトゥ(Kennedy Mkutu)
United States International University-Africa School of Humanities and Social Sciences
国際関係論、平和紛争研究が専門。東アフリカの牧畜社会における紛争から資源紛争、小型武器問題、地方の「開発」の問題など幅広く研究されています。「ケニアのために何ができるのか」ということを常に意識しながら研究すると同時に、若手育成にも力を入れているその姿勢は素晴らしいなと思います。
例えば開発援助・平和構築において、こちらが良かれと思ってしたことが、必ずしもそのように現地社会の人たちに受け止められないことがあります。「人の話に耳を傾け、常に学ぼうとする姿勢が大切」と学生達に伝えることを心がけています。
◆学んだことはどう生きる?
各自の関心に即した進路に進むため、就職先も多様です。例えば以下のような就職例が過去にありました。
卒業生Aさん:在学中にアフリカに私費留学。ビジネスを介し発展途上国と関わることを視野に大手自動車メーカーに就職。
卒業生Bさん:英語+αを教えることができる教員を目標に、在学中に教員免許を取得。国内の教育系大学院に進学し、修士号取得後に英語教員として就職。
卒業生Cさん:在学中にフランスに交換留学。給付型奨学金を獲得し、フランスの大学院修士課程に進学。国際協力業界就職を視野にフランスで奮闘中。
国際学部の特徴として少人数教育をあげることができます。2018年には「教員一人当たりの学生数(ST比)」に関する雑誌の特集で国際学部は取り上げられたこともあります。また、例えば私の担当している「紛争解決論」を受けながら「国際金融論」や「国際教育論」を学ぶといった柔軟な履修登録が可能なのは、「学際的」な学部の魅力ともいえます。英語以外に8つの外国語を学ぶこともできます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 昔、音大進学を断念したので、今度こそチャレンジしてみたいですね。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? テューバ、ギター、ピアノのトリオによるジャズCD Travelin’ Light をよく聞いています。収録されているWhen You’re Smiling, Someone to Watch Over Me などを聞きながら原稿を書いてます。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 古い楽器の手入れ。 |
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Q4.会ってみたい有名人は? 少し前に亡くなられてしまいましたが、サム・ピラフィアンというテューバ奏者。 |