外国語教育

チャンツ

音楽やリズムで学ぶ英語学習の効果は?数値データから探る


川井一枝先生

宮城大学 基盤教育群(現在は、聖徳大学 文学部 英語・英文学コース)

出会いの一冊

新編 教えるということ

大村はま(ちくま学芸文庫)

古い本ですが、教員志望の方なら読んでおいてほしい一冊です。「教えるということ」について考えさせられます。と同時に、高校生の皆さんなら自分の学びについて振り返ることにもつながるはずです。

こんな研究で世界を変えよう!

音楽やリズムで学ぶ英語学習の効果は?数値データから探る

チャンツで英単語やリズムを覚える

「チャンツ(chants)」という言葉を知っていますか。おそらく言葉自体は知らなくても、小学校の外国語活動などで体験した方は多いと思います。チャンツは歌と似ていますが、歌と比べると短く(30秒~2分程度)、メロディの起伏も少なく、同じ単語や短めの表現が繰り返されるのが特徴です。

1970年代後半にニューヨーク州立大学で教えていたキャロリン・グレアム(Carolyn Graham)がジャズチャンツ(Jazz chants)を考案したことがきっかけとなり、特に子どもを対象とした指導法の一つとして広まりました。

楽しく学べるが、実証研究が必要

効果としては「英語のリズム習得」や「単語や表現の記憶」の促進、「楽しい気持ち」で学習できる、また使用教材によっては「異文化に対する興味や関心」も促進されるといった点が挙げられています。

実際に子どもに英語を教える中で、チャンツを楽しみながら学ぶ子ども達の様子を見てきました。しかし子どもを対象としたデータを得るのは難しく、上記の効果については実証研究の積み重ねがまだまだ少ないのが実情です。

果たしてチャンツは英語のリズムを習得するのに本当に効果があるのでしょうか。英単語などを覚えるのに、本当に役立っているのでしょうか。

より良い指導法を模索

2020年度、全ての公立小学校で3年生から外国語活動が始まりました。より効果的な指導のために、方法を模索・改善しつつ、過去の知見・観察・実験などの数値データ等から答えを探っています。音楽やリズムは外国語の学習にどのような影響を与えているのでしょうか。

人間が言葉を獲得・習得していく過程にはまだまだ多くの謎が山積しています。皆さんもその謎について一緒に考えてみませんか。

第19回小学校英語教育学会会場にてポスター発表。その後「小学校第6学年の児童を対象とした書く活動の報告:ワークシート, 質問紙, 観察に基づいて」(川井一枝・栄利滋人・鈴木渉)として論文化、小学校英語教育学会の学会誌Jes Journalの20号(2020年3月)に掲載されました。2021年4月頃にはWEBでも閲覧可能になります。
第19回小学校英語教育学会会場にてポスター発表。その後「小学校第6学年の児童を対象とした書く活動の報告:ワークシート, 質問紙, 観察に基づいて」(川井一枝・栄利滋人・鈴木渉)として論文化、小学校英語教育学会の学会誌Jes Journalの20号(2020年3月)に掲載されました。2021年4月頃にはWEBでも閲覧可能になります。
音響分析ソフトによる分析の例。音声データを音響分析ソフトで分析した結果の一部です。英語の(強勢拍)リズム習得の指標として、強勢と強勢の間(図の黒い部分)の時間変化を用いました。
音響分析ソフトによる分析の例。音声データを音響分析ソフトで分析した結果の一部です。英語の(強勢拍)リズム習得の指標として、強勢と強勢の間(図の黒い部分)の時間変化を用いました。
書く活動に対するアンケート。 アンケートの自由記述部分をKH Coder(データマイニングソフト)を用いて分析した共起ネットワークの図です。語と語のつながりを示しています。また〇(まる)の大きさは単語の頻出度を表しています。〇が大きいほど自由記述の中で多く使用されていた語になります。
書く活動に対するアンケート。 アンケートの自由記述部分をKH Coder(データマイニングソフト)を用いて分析した共起ネットワークの図です。語と語のつながりを示しています。また〇(まる)の大きさは単語の頻出度を表しています。〇が大きいほど自由記述の中で多く使用されていた語になります。
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「小学校英語教育におけるチャンツの効果とメカニズムの解明」

詳しくはこちら

注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
もっと先生の研究・研究室を見てみよう

川井先生のページ

児童英語教育論@医療創生大学(旧いわき明星大学)での写真 2018年9月、「児童英語教育論」授業後、福島県いわき市にある医療創生大学の教室で、受講生達と撮影した写真です。
児童英語教育論@医療創生大学(旧いわき明星大学)での写真 2018年9月、「児童英語教育論」授業後、福島県いわき市にある医療創生大学の教室で、受講生達と撮影した写真です。
中高生におすすめ

殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

清水潔(新潮文庫)

権力に立ち向かい、1人で取材を続けたジャーナリストの実話です。仕事に向き合う姿勢に感動します。またジャーナリズムの意義や警察の捜査など、考える視点がたくさんある本です。将来の仕事について考える時、読んでもらいたいと思う本の一冊です。


LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

シェリル・サンドバーグ、訳:川本裕子、村井章子(日経ビジネス人文庫)

男女平等が当たり前と思われるアメリカで、女性軽視や出産・育児などの問題に悩みながらも第一線で仕事を続けてきた、著者の体験が綴られています。共感を覚えると同時に勇気をもらえる本です。21世紀の新しい「働き方」を模索していくために、女性に限らず男性にも読んでもらいたい本です。こちらは翻訳版ですが、英語もとても読みやすいので、ペーパーバック版もお勧めです。


言語起源論 旋律と音楽的模倣について

ジャン=ジャック・ルソー、訳:増田真(岩波文庫)

ルソーが言語の起源と本質を論じた本です。外国語を学ぶ上で、言語の起源はまず「音声」にあったという事実を、再認識してほしいと思います。知らない英単語を辞書で調べる時、意味だけ確認して終わっていませんか。必ず、発音・綴り字・意味の3点を確認しましょう。言えない単語は聞き取りできません。覚えられません。


英語教師のための第二言語習得論入門

白井恭弘(大修館書店)

第二言語習得論は、母語(第一言語)を獲得した後、第二言語(外国語)がどのように学習されていくかについて記述する、またその過程における様々な疑問について解明を試みている学問です。

言語学、心理学、脳科学、教育など様々な領域にまたがっているため大変複雑でつかみどころがないものですが、この本は「英語を教える」という視点に立っているのでわかりやすく解説されており、第二言語習得論の全体像を把握しやすいと思います。また小学校・中学校・高校それぞれの指導についても触れているので、自分の学びにも役立つのではと思います。

より簡単に第二言語習得理論の概要を知りたい場合は、同著者による『外国語学習に成功する人、しない人』(岩波科学ライブラリー)がお勧めです。もう少し「研究」寄りの視点で読みたい人には、同じく『外国語学習の科学』(岩波新書)があります。


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ