特別支援教育

発達性読み書き障害

読み書きが困難な子どもの語彙力を高める


後藤隆章先生

横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 特別支援教育講座(教育学研究科 高度教職実践専攻)

出会いの一冊

イン・ハー・シューズ(映画)

カーティス・ハンソン(監督)

発達性読み書き障害は、欧米でディスレクシアと言います。日本語と比べて英語圏でのディスレクシアの出現率が高いことが知られており、海外の映画などでは珍しくない存在として描かれています。

本作では、読み書き困難を示す登場人物が出てきますが、障害の重さは個人の能力だけでなく、周囲の人々や環境との関係性の中で変化していくことをドラマティックに表現しており、障害の克服が個人の努力だけによらないことを理解することができるものです。

こんな研究で世界を変えよう!

読み書きが困難な子どもの語彙力を高める

読み書きが困難な子どもたちは、2〜3%

私の研究テーマは、発達性読み書き障害のある子どもへの学習支援法の開発です。発達性読み書き障害とは、知的に問題がなく、視覚や聴覚の異常も見られないのですが、読み書きに著しい困難症状を示す人たちです。

人口に占める割合は約2〜3%と報告され、小学校や中学校の通常学級に在籍しています。日本人学校も例外ではなく、どの環境でも利用できるような学習支援法の整備が重要です。

「ナース」の後なら「ドクター」は読みやすい

私たちの研究グループでは発達性読み書き障害のある子どもに対して、どのような手続きを踏めば単語の音読のスムーズさが高まるのかについて、心理学の実験手法を用いて研究を進めてきました。

特に意味的プライミング効果に着目して研究を進めています。これは、例えば「ナース」という単語を見た後に「ドクター」という単語が読みやすくなるように、事前に意味的に関係する単語を見た後、その後に出てくる単語の読みがスムーズになる心理的現象です。

サポートの薄い遠隔地をネットでつなぐ

従来の研究により、発達性読み書き障害において、語彙力が単語読みにおける意味的プライミング効果と関係することがわかってきました。これは発達性読み書き障害に対して語彙力を高める支援に読み能力の向上に有効である可能性を示唆しています。

現在は、日本人学校のような専門的サポートが受けにくい遠隔地をインターネットで結び、制約のある状況下でも実施可能な学習支援法の開発に取り組んでいます。一緒に誰もが学べる世界を作っていきませんか。

遠隔指導の様子
遠隔指導の様子
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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特別支援教育の対象とされる子どもは、得意・不得意の落差が大きいです。そのため、どのような手がかりや状況、環境が整えば、自分の力を発揮できるのかについて、本人や周囲の人々が認識しておくことにより、日常生活が過ごしやすくなります。

現在、取り組んでいる研究テーマでは、読み書きの困難さがあっても、読みやすくなる手続きを認識してもらうことで、より積極的に学習課題に向き合えるようになることが期待され、生活のQOLの向上を図ることができると考えています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「日本人学校の発達性読み書き障害児に対する遠隔教育による読みの代償的方略の形成支援」

詳しくはこちら

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もっと先生の研究・研究室を見てみよう

後藤先生のページ

「学習障害(LD)研究を通じ子どもの学習を支援」(横浜国立大学 受験性のためのYNU教員紹介)

学生による授業での話し合いの様子
学生による授業での話し合いの様子
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な職種

(1) 小学校教員

(2) 中学校・高校教員など

(3) 福祉・介護関連業務・関連専門職

◆学んだことはどう生きる?

私の研究室を卒業した卒業生は、ほとんどが教員として働いています。特別支援学校の教員だけでなく、小学校や中学校などの通常学級の教員として働いている卒業生が多くいます。研究では、発達性読み書き障害の当事者だけでなく、保護者の方とも連携を取りながら進めていくため、発達性読み書き障害に対する専門的支援スキルとともに、コミュニケーションスキルを磨く機会として機能しているようです。

先生の学部・学科は?

特別支援教育に関する分野では、医学、心理学、福祉学など、教育学以外の分野との連携が多岐にわたって求められています。これまで特別支援教育の分野では、障害と医学的診断された人を対象としていましたが、近年では、母国語が日本語以外である外国につながる子どもや、家庭状況によって学習支援のニーズを有する子どもの教育も含まれるようになってきており、教育の多様性に対応するための研究が進められています。

中高生におすすめ

学びとは何か <探求人>になるために

今井むつみ(岩波新書)

学びという発達期の内面の変化を、近年の発達心理学や脳科学研究の知見に基づいて整理しており、学習とは何か、教育とは何かについて考える際の必読書です。


読む心・書く心 文章の心理学入門

秋田喜代美(北大路書房)

心理学の観点から、読むというプロセスをわかりやすい表現で説明しており、入門書としては最適です。無意識に行っていた読むという脳内処理を、意識して再確認することができる本であり、教育学や心理学に興味を持つ中・高校生にとっておすすめの本です。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

iMusicで、落語家の春風亭一之輔を聞いています。特に『鮑のし』。講義を行う上で、勉強になることが非常に多いです。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『スティング』、『十二人の怒れる男』、『インファナル・アフェア』

Q3.熱中したゲームは?

『信長の野望』。

小学生時代から、歴史にはまっています。小学校の朝読書の時には、学研から出されている歴史群像シリーズを読んでいました。『関ヶ原の戦い』が最高です。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

選挙開票場づくり。机の間隔や配置などが詳細に決まっていて、それにしたがって準備を進める手際の良さに、ちょっとしたことなのですが、感動してしまいました。


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