教育社会学

フィンランドの教育

平等に価値をおき、発展するフィンランドの教育


渡邊あや先生

津田塾大学 学芸学部 国際関係学科(国際関係学研究科 国際関係論専攻)

出会いの一冊

日本の15歳はなぜ学力が高いのか? 5つの教育大国に学ぶ成功の秘密

ルーシー・クレハン、訳:橋川史(早川書房)

『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』という邦題が付されていますが、実際には、その副題にある通り、国際学力調査で好成績を収めた5つの国(フィンランド、日本、シンガポール、中国、カナダ)の教育を扱った書籍です。

イギリスの研究者が、実際に足を伸ばし、教壇に立ちながらまとめた記述からは、各国の教育のリアルな姿が浮かび上がります。こういった研究手法がいかに困難を伴うものであるのかは理解していても、「いつかこんな研究をしてみたい!」と思わせてくれる魅力的な一冊です。

こんな研究で世界を変えよう!

平等に価値をおき、発展するフィンランドの教育

フィンランドの教育関係者にインタビュー

大学院生だった頃、たまたま読んだ論文がきっかけで、フィンランドの教育に関する研究を始めました。以降、20余年に渡って、たくさんのフィンランドの教育関係者の方にお会いし、インタビューを行ってきました。

それらにおいて共通していたのは、「平等」に価値を置く教育観。この平等に対する絶対的な信頼はどのようにして生まれたのだろうか…そう考えたことが、現在取り組んでいる研究を着想したきっかけです。

フィンランドの謎に迫るのは今しかない

インタビューの際に特に印象的な言葉を残してくださった方々は、フィンランドの教育が平等を志向して発展するプロセスを体感的に知っている世代でした。その方たちが次々に退職の時期を迎えられたことで、「フィンランドの謎」に迫るのは今しかないと考え、現在のプロジェクトに着手しました。

平等は一朝一夕にならず

プロジェクトでは、教育政策の分析と教育関係者へのインタビューを行っていますが、特に面白いと感じているのは、インタビューを通じて伺う、教育関係者自身の教育経験にまつわるお話です。

一学習者としての学校や大学などでの思い出、教育関係の職に就いてから携わった仕事など、公私に渡る教育的経験に基づいて紡ぎ出されるそれぞれの物語は、平等は一朝一夕にしてならず、ということを実感させられるものです。

まだまだ研究は途上で、新型コロナウイルスの感染拡大により、今まさに実施上の困難に直面しているところですが、何とかやり遂げたいと思っています。

フィンランドの学校風景。子どもたちの作品の中にトトロが登場しています。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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フィンランドの教育における平等観の実相を明らかにすることを通じて、目標4のターゲットのひとつ、「2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする」ことに貢献できればと思いながら、研究に取り組んでいます。

◆先生が心がけていることは?

女子大学に勤務する中で、学生たちの無限の力を日々感じています。ともに学び、成長していくこと、それを通じて、次代を担う人材を育成していくことが、ジェンダー・エンパワメントにつながると信じています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「ライフヒストリーで辿るフィンランド教育の源泉-「教育における平等」概念の実相-」

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渡邊先生のページ

人生と学び#18-日常の中にある将来の種(津田塾大学ウェブマガジンPlum Garden)

フィンランドの学校での調査風景。ちょっとした立ち話が貴重な情報源になることもあります。
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1)中学校、高等学校の教員

(2)官庁、自治体、公的法人、国際機関等

先生の学部・学科は?

日本で初めての国際関係学を専門とする学科として1969年に設置されたのが、津田塾大学学芸学部国際関係学科です。その学際性ゆえ、学生の関心は様々です。教育=教育学部と思われがちですが、国際関係学科にも教育を卒論のテーマとして扱う学生がいます。国際的視点、あるいは地域研究的視点のもと、対象とする国や地域の歴史的・社会的・文化的・経済的背景との関係性の中で、教育という事象にアプローチしています。

教科書図書館での課外ゼミの様子。
津田塾大学では、1年を4つに分けるクォーター制が採られていますが、そのうちの第2タームは学外学修が推奨され、原則として必修科目が入りません。この間のフレキシブルなスケジュールを利用して、課外ゼミを行っています。
中高生におすすめ

生きがいについて

神谷美恵子(みすず書房)

高校時代に、少し背伸びをするような気分で手に取った本です。以来、悩みを抱えるたび、困難に直面するたび、この本を読み、「生きがい」に思いを馳せることで、励まされ、元気づけられています。人生に寄り添ってくれる本です。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

80年代のエピック・ソニーレーベルのアーティストの作品。中高生の頃は、流行りモノのわかる大人になりたいと思っていましたが、実際になったのは、その当時聴いていた曲やアーティストの作品を今なお聴き続けている大人でした…。それほどまでに、十代の頃培った感性の影響力は絶大なのだと思います。なかでも、好きな曲は、国際青年年のテーマ曲であった佐野元春さんの『Young Bloods』です。「鋼のようなWisdom 輝き続けるFreedom」というフレーズに、未来への夢や希望のようなものを感じていました。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『さらば、わが愛 覇王別姫』はアジア、とりわけ中華圏の文化に関心を寄せていた大学時代に観て、衝撃を受けた人生のベスト映画です。主役を演じたレスリー・チャンのその後の運命と重なるようなストーリーが、この作品を忘れ難いものにしています。

そして、子どもの可能性と人間の本質を考えさせてくれる宮崎駿監督の作品は、どれも印象に残っています。中でも『となりのトトロ』は、フィンランドの学校でも大人気ということもあり、思い出の多い作品です。「子どもの想像力を育むことにおいて最適の教材」とは、現地の学校の先生の弁です。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

水泳部で、専門はバタフライ。試合に出たりもしていました。

Q4.研究以外で楽しいことは?

フィンランドのヴィンテージ食器収集。美しいデザインもさることながら、当時の人々の暮らしを垣間見ることができるのが魅力です。また、趣味と実益を兼ねて、古い教科書の収集もしています。

Q5.会ってみたい有名人は?

フィンランドのサンナ・マリン首相です。フィンランドの教育における平等観というテーマを追っている今、できることならば、それを体現するようなマリン首相にインタビューをしたいです。


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