社会問題にもアプローチ 施設や里親家庭で育った子どもの心理支援
周囲の人々や社会の仕組みに左右される
私たちの暮らしには「当たり前」とされることが数多くあります。しかし、家族と暮らせない子どもや、経済的に困窮する若者にとって、その「当たり前」は決して当たり前ではありません。
私はこれまで、里親家庭や施設など社会的養護の下で育つ子どもや、貧困の影響を受けた人への心理支援に関する実践や研究に携わってきました。そうした方たちは心に深い傷を抱えながらも少しずつ未来を描こうとしていますが、その可能性は本人の努力だけでなく、周囲の人々や社会の仕組みに大きく左右されます。
従来は、個人の内面に焦点
従来の心理学は、適応や回復を考えるとき、個人の内面に焦点を当てることが中心でした。また、欧米で「エビデンスがある」とされた方法が社会的背景の違いを十分に考慮せずに広まり、日本やアジアで積み重ねられてきた実践が過小評価されることも少なくありません。
私は臨床心理学に関する研究や支援を「社会の中で生きる人」を軸にとらえ直すことを大切にしたいという考えに基づき、里親家庭や施設での暮らしを経験した子ども若者や貧困の影響を受けた子ども若者への心理支援についての実践や研究に取り組んでいます。
心理支援者は「社会」にも働きかけていく
近年、心のケアを個人の内面に閉じず、社会の不公平を変えていこうとする「社会正義アプローチ」に注目が集まっています。社会的養護や貧困の中で育った人が安心して生きられるようにするには、心理支援者は「心」だけでなく「社会」にも働きかけていく必要があるのです。
心理学を学ぶことは、人の心を理解するだけでなく、社会のあり方そのものを問い直すことにつながります。社会に埋もれがちな声に耳を傾け、公正な未来を創出していくために、心理学を通して社会問題にアプローチしてみませんか。
「社会的養護に内在する喪失とそれに伴う悲嘆に対する包括的理解とケアの構築」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 福祉・介護
◆主な職種
(1) 福祉・介護関連業務・関連専門職
(2) その他
◆学んだことはどう生きる?
所属する北海道大学教育学部、大学院教育学研究院では所定の単位を修得すると公認心理師の受験資格が得られます。卒業生、修了生にも公認心理師を取得した人たちがいて、様々な領域で心理支援の仕事に従事しています。特に児童相談所や家庭裁判所など子ども若者に関わる支援の現場で活躍している方が多いと思います。
北海道大学教育学部では、困難を経験した子ども若者の育ちや暮らし、あるいは彼らへのケアを教育、福祉、心理、制度といった様々な角度から捉えようとする学際的な学びの機会があります。私の専門は臨床心理学ですが、臨床心理学を学ぶというよりは、あなたが関心を持った社会問題を理解したり、解決したりするために、臨床心理学を含む様々な観点を組み合わせて考察する力を身に付けることができると思います。

