経済政策

経済ネットワーク

保護主義が広がるなか、いまこそネットワークの力で豊かに平和に


戸堂康之先生

早稲田大学 政治経済学部(経済学研究科)

出会いの一冊

経済学って何だろう 現実の社会問題から学ぶ経済学入門

戸堂康之(新世社)

手前味噌で恐縮ですが、高校生でも読める経済学入門書です。経済学を「お金儲けの手段を学ぶための学問」とか「弱者に対する思いやりが全くない弱肉強食の思想」と思っている皆さんは、その誤解を解くためにぜひ読んでもらいたいです。

こんな研究で世界を変えよう!

保護主義が広がるなか、いまこそネットワークの力で豊かに平和に

貿易制限はアメリカにもマイナス

現在、世界中で反グローバル化の波が起きています。米中の覇権争いを契機とした関税競争に始まり、多くの国が保護主義的な政策を行って、国際貿易や投資を制限しているのです。もともと経済学は、自由に貿易を行うことで世界中の国がより豊かになれるという考え方を持っていました。実際、貿易の規制は、規制をした国の経済にとってマイナスとなることが多いのです。

例えば、アメリカは多くの国からの輸入品に関税をかけていますが、それによってアメリカ国内の物価が上がってしまいます。また、アメリカのハイテク産業は、米政府が中国への輸出を制限したことで、その分売上が減りました。

それなのに、なぜ多くの国が貿易を規制しているのでしょうか?これが、現代の経済学の重要な問いになっています。

安全保障と産業育成を理由に貿易を制限

その1つの理由は安全保障です。アメリカが対中ハイテク輸出を規制するのは、中国の経済的・軍事的成長を阻止して、アメリカの覇権を維持するためです。経済学は、これまであまり安全保障の問題を考えてきませんでした。しかし、安全保障問題を踏まえると、貿易を制限した方が国民の利益になることもありえます。

貿易を制限するもう1つの理由は、自国の産業育成です。輸入を制限することで未発達な自国の産業を育成することはこれまでも行われてきましたが、経済学はその効果に懐疑的なことが多かったのです。しかし、最近になって最新のデータ分析の手法で再検証してみると、効果があったケースもあることがわかってきました。

とはいえ、やはりグローバル化の効果を無視することはできません。貿易によって便利で安いモノが入ってきますし、自国の製品を世界で売って利益を上げることができます。それだけではなく、貿易を通じて新しい技術や知識も国内に入ってきて、技術革新を通じて国民が豊かになれます。

ですからこれからは、グローバル化と安全保障、産業育成をうまくバランスさせて、国民が豊かに平和に過ごせるようにしていかねばなりません。最近の経済学では、その方法について活発に研究が行われています。

様々な国とのネットワークが重要に

私自身も世界中の企業や貿易のデータを使ってそのような研究をしています。例えば、日本は材料や部品の輸入で中国に大きく依存しています。ですから、もし安全保障上の理由で中国からの輸入が縮小すると、日本では部品不足で生産ができなくなって、大きな影響を受けてしまいます。私の研究では、その影響を試算した上で、それを小さくするには、中国依存を減らしてより多くの国と取引をすることがよいことを見出しています。

また、自国の産業を育成するためには、政府がある程度支援しつつも、あまり保護しすぎることなく、むしろ海外とのネットワークを広げたほうがよいことも示されています。

皆さんの多くは、5年後10年後には外国人や外国の企業とも仕事をしているのではないでしょうか。海外とどのようにつきあっていくのが、自分にとって、日本にとって、そして世界全体にとっていいのかを、ぜひ経済学を学んで考えてみてください。

早稲田大学における講演の様子
早稲田大学における講演の様子
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

私の研究では、災害や地政学的問題に対して強靭な社会・経済をつくるために、日本の経済・社会が持続的に発展していくためには、どのような経済ネットワークの構築が必要かをデータで示しています。その結果に基づいた提言を政府や国際機関、新聞雑誌やインターネット媒体などに発信しています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「経済安全保障を踏まえたサプライチェーン・産業政策のあり方」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
韓国4大学、日本5大学で毎年行っている学生による研究発表大会での戸堂ゼミ学生の発表の様子(延世大学にて)。ここで発表した論文はインドネシアの中小企業データを基にしたもので、早稲田大学政治經濟學會論文コンクール佳作を受賞しました。
韓国4大学、日本5大学で毎年行っている学生による研究発表大会での戸堂ゼミ学生の発表の様子(延世大学にて)。ここで発表した論文はインドネシアの中小企業データを基にしたもので、早稲田大学政治經濟學會論文コンクール佳作を受賞しました。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

(2) コンサルタント・学術系研究所

(3) 商社・卸・輸入

◆主な職種

(1) 経理・会計・財務、金融・ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職

(2) コンサルタント(ビジネス系等)

(3) 事業推進・企画、経営企画

◆学んだことはどう生きる?

私のゼミでは、実証分析の研究を通じて、(1)興味深く独創的なテーマを考え出す創造力、(2)そのテーマを分析するためのデータや事例を集める情報収集力、(3)データを使ってエビデンス(証左)を示す分析力、(4)導かれた結論を明瞭に日英両語で文章や口頭発表で示す発信力、そして(5)それらを通して周囲を巻き込んで大きな動きをつくっていく力、の5つを鍛えることを目標としています。これらの力は、いかなる業界でも通用するものです。ですから、ゼミの卒業生の進路は多彩です。

金融、商社、コンサルティングなどが多いですが、製造業や経済産業省、JICA、JBICなどの公的機関に就職する人もいます。いったん就職した後に、大学院に入り直して国際機関への就職を目指している人もいます。

先生のゼミでは

私のゼミでは前述のような5つの力の育成を目標に掲げており、そのためにまずは自分の興味のある英語文献を探し出し、その概要を発表させます。それを繰り返して研究テーマが決まれば、データを探させ、分析をさせます。現在は、国や産業ごとのデータだけではなく、個人・世帯・企業ごとの細かなデータもオンラインで手に入るものが多く、学部生でもやる気があれば相当レベルの高いデータ分析が可能になっています。

また、韓国や国内の大学とのインゼミで研究発表をしたり、様々な学会の学部生向け論文コンクールに応募をしたりして、研究のモチベーションを上げる機会を多く設けるようにしています。これまで、ゼミ生を連れた海外研修をインドネシア、インド、スリランカ、エチオピアで行っており、現地の大学で研究を発表したり、現地の企業や開発援助プロジェクトを訪問したりしています。

最近のゼミ生の卒論のテーマとその内容をいくつか例として挙げます。

◇「途上国の貧困層はテレビを持つと食費を増やすか?」
世界銀行が収集して公開しているタンザニアの世帯ごとのデータを利用
早稲田大学第3回データサイエンスコンペティションデータ科学センター賞受賞

◇"Evaluation of Chinese Aid Projects' Effect on The Regional Economy of Sudan"
スーダンの世帯ごとのデータ、AidDataによる援助プロジェクトの地理情報、衛星画像による夜間光データを利用
エビデンス共創機構学部生論文コンクール優秀賞、日本国際経済学会関東支部第2回学生報告会 ベストプレゼンテーション賞受賞

インドネシアでのゼミ生の研修旅行で、地方都市の中小企業を訪問した時の様子。
インドネシアでのゼミ生の研修旅行で、地方都市の中小企業を訪問した時の様子。
先生の学部・学科は?

もともと日本の経済学部には、世界の経済学研究・教育の潮流から外れてしまっている教員が多くいました。しかし近年になって世代が変わり、海外で博士号をとった教員や外国人教員が増えたことで、一部の大学では急激な変化が起き、研究・教育内容に劇的な改善が見られます。

早稲田大学もその一つで、現在では世界的な研究を行っている教員が大半で、またそれをベースとした質の高い教育が行われています。研究業績を基にしたあるランキングでは、早稲田大学は慶應義塾大、東京大、九州大、政策研究大学院大学(大学院のみ)についで第5位となっています(大学ではない研究機関を除いています。※下記参照)。また、経済学だけではなく、政治学でも世界レベルの教員が増え、学際的な教育を受けられるところが大きな魅力となっています。
https://ideas.repec.org/top/top.japan.html#inst10

中高生におすすめ

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

工学:ものづくりも楽しそうだから。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

オーストラリア:都会で働いていても自然が身近にあるから。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

AMEFURASSHI:お気に入りは「WILD」

Q4.感動した/印象に残っている映画は?

ルパン三世カリオストロの城

Q5.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

六本木の居酒屋の厨房


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ