社会学

日本企業の転勤制度

フェミニズムの視点から、企業の転勤制度の研究へ


藤野敦子先生

京都産業大学 現代社会学部 現代社会学科

出会いの一冊

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

小熊英二(講談社現代新書)

私はこれまで、労働や人口の視点から「ジェンダー平等と出生率の安定が両立する持続可能な社会では、働き方はどうあるべきか」を考えてきました。日本では、ジェンダー平等が各国から遅れ、また少子化の進展も深刻です。そんな日本の現在地を理解する鍵は、雇用・教育・福祉などが連動する日本特有のしくみにあると考えています。

本書は、日本において、雇用・教育・福祉がどのように結びつき、どこで歯車が噛み合わなくなったのかを歴史から解きほぐしています。これからの働き方と暮らしのあり方を考えるヒントを与えてくれるのではないでしょうか。

こんな研究で世界を変えよう!

フェミニズムの視点から、企業の転勤制度の研究へ

夫の転勤でキャリアが中断

近年、日本企業における転勤制度を問う研究に取り組んできました。

この研究は夫の転勤を契機にキャリアを中断することになった個人的な経験が出発点になっています。私は、同世代の教員より遅く大学教員になりました。それまでは夫の転勤に帯同し、海外も含め、各地で暮らす主婦でした。大企業のこのような仕組みに対し憤りや無力感を覚えていましたが、転勤先にあった総合大学で学び直したことが転機となり、研究、教育への道が開けました。

転勤の実態を明らかに これからの働き方も提案

着任当初の専門は労働経済学でしたが、勤務する大学に現在所属している現代社会学部が新設され、そこへ異動することになりました。それを契機に社会学、とくにフェミニズムやジェンダーを学び直しました。こうした視点と出会い、かつて主婦だった時期の気持ちや経験も、既存の制度の「当たり前」を問い直す大切な手がかりになると気づき、転勤の研究に踏み出しました。

こうした考えを言い表すのが、フェミニズムのスローガン〈個人的なことは政治的なこと〉です。 またフェミニズムは従来の「知」のあり方も問い、社会の中で不利な立場に置かれがちな人びとの感情や経験も、十分に“知”として価値があると主張しています。

私のこの研究では、数字のデータと当事者の声の両方を大切に、アンケートやインタビューを実施し、実態を明らかにしています。また日本の転勤の歴史や海外との比較も踏まえて、これからの働き方を提案しています。身近な違和感から問いを立て、より良い社会の実現のために具体的な提言につなげることを目指しています。

台湾大学での国際学会での発表
台湾大学での国際学会での発表
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は「学びは生涯続く」と考えています。大学入学の前年に男女雇用機会均等法が成立したこともあり、経済学部を選びました。ジェンダーにかかわらず平等に働ける未来を信じていましたが、夫の転勤などが重なり、キャリアは思うように築けませんでした。

それでも学ぶ意欲を手放さず、主婦の時期に経済学の学位を取得。のちに大学教員となり、新設学部をきっかけに社会学やフェミニズムに出会って、社会学の学位も取りました。振り返ると道が曲がっていても、学び続けていたからこそ、新しいチャンスに手が届いたのかもしれません。

フェミニズム運動の中核を担った家族計画協会でのインタビュー
フェミニズム運動の中核を担った家族計画協会でのインタビュー
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学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) マスコミ(放送、新聞、出版、広告)

(2) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) コンテンツ制作・編集<クリエイティブ系>

(2) 小学校教員、中学校・高校教員

(3) 総務

◆学んだことはどう生きる?

大学院で社会学をさらに学び、社会調査を実施する研究所などで働いている人がいます。また、学生時代にジェンダーや家族社会学などを勉強し、家庭裁判所調査官となり、活躍している人もいます。

先生の学部・学科は?

京都産業大学現代社会学部の大きな特徴は、体系的にリーダーシップを学べることです。社会を変革するには、他者と問題意識を共有し、共に行動を起こしていくことが必要です。協働型を具体的にどのように身につけるのか、ユニークな授業形態で学ぶことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

自分の身近な人(祖父母など)にインタビューし、ライフヒストリー(生活史)を聞いてみてください。就職、結婚、出産、引っ越し、転職など、いつどこで、どのような理由でそれを選択、決定したのかなどに注目してください。そしてその個人の人生が社会の制度、仕組みにどのような影響を受けたのかなどもあわせて考えてみてください。

中高生におすすめ

君を想って海をゆく/Welcome

監督 ‏ : ‎ フィリップ・リオレ

ヨーロッパの難民・移民問題という複雑な社会問題を深く考えることができる映画です。また、法と良心の狭間で揺れ動く主人公を通じて、観る者に「自分ならどう判断するのか」を力強く迫ってきます。フランスに在住していたときに観ましたが、これがフランス映画のアプローチかと衝撃を受けました。その後、フランスの中学校教員から、授業の中で生徒と鑑賞し、鑑賞後に活発なディスカッションをしたと聞き、それも驚きました。

映画制作に関心がある人にもおすすめです。複雑な社会問題を映画というメディアでどう伝えるのか――視点、構成、演出まで学ぶことができます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

芸術(音楽)

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

フランスの田舎:若い頃にフランスの田舎で親切で、面白い人たちと出会いました。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

ドリーム・シアター:お気に入りは「Another Day」

Q4.感動した/印象に残っている映画は?

今村昌平監督の『楢山節考』、ミヒャエル・ハネケ監督『愛、アムール』。どちらもカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

ストリートピアノでの演奏


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