防災・減災に貢献! 河川や大気の流れを高精度・高効率に予測する手法の開発
障害物の抵抗の推定精度が流れの予測を大きく左右する
河川や大気の流れを正しく予測することは、天気予報をはじめ、私たちの生活を安全で快適にするために欠かせません。ところが、こういった自然の流れには建物や樹木など、さまざまな形や大きさの障害物があり、それらが流れに及ぼす抵抗(流体力)をどれだけ正確に見積もれるかが、予測の精度を大きく左右します。
巨大なスーパーコンピュータを使えば、個々の障害物の形やその周囲の流れを正しく考慮できて高精度な予測が可能ですが、膨大な時間とコストが必要です。私たちは、もっと身近なパソコンでも手軽に高精度な予測ができることを目指し、そのカギとなる「流体力を巨視的に(個々の障害物形状やその周囲流れの細部がわからなくても)正しく推定する方法」に挑戦しています。
障害物に乱されない流れこそ基準
流体力は「流れの速さの2乗に比例する」ことが経験的によく知られていますが、障害物が複数並んでいるとき、基準とすべき「流れの速さ」が何を指すのか、実はまだはっきりしていません。
私たちは、その障害物を除いた場合にそこを過ぎる流れ(その障害物に乱されない流れ = undisturbed flow)こそが基準とすべき「流れ(の速さ)」だと考え、このアイデアの実証と、障害物を実際に取り除かなくてもundisturbed flowを推定できる方法の確立に挑んでいます。
これが実現すれば、大雨や強風による河川氾濫や建物被害を前もってより正確に予測でき、より適切な避難誘導や事前対策につなげることで、防災・減災に寄与すると期待されます。
大学3年生までに学んだ専門科目の中で水理学が最も難しく感じられたことに加え、担当教員の人柄・個性に興味があって、4年進級時に環境流体力学系の研究室を選びました。卒業研究でプログラムを組んで流体の振る舞いをコンピュータ上に再現する「計算流体力学」に夢中になりました。実際の実験はさまざまな物理的制約に縛られますが、数値シミュレーション(数値実験)にはそういった制約がなく、工夫や想像力次第で何でもできる(未だにできていないことも多々ありますが、きっといつかは…)点に惹かれたように思います。
「Undisturbed Flowを基盤とする流体力の巨視的評価の高精度化」
◆主な業種
(1) 自動車・機器
(2) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等
(3) ソフトウエア、情報システム開発
私は一貫して土木工学で教育を受けましたが、現在の所属学科はとても学際的・分野横断的で、数学・物理学・情報科学・経営工学・土木工学など多様なバックグラウンドを持った教員で構成されています。きっとみなさんの興味と一致する学問や研究分野・テーマに出会えるはずです!
砂時計の科学
田口善弘(講談社学術文庫)
物理学者の友人から勧められて出会った一冊です(注:私が読んだのは『砂時計の七不思議:粉粒体の動力学』ですが、こちらはもはや絶版状態で、最近、これを原書とした『砂時計の科学』が新たに出版されました)。
私の専門は流体力学(水や空気などの「流体」の運動を扱う学問)ですが、この本は砂や雪といった「つぶつぶ」の集まりである粉粒体の特徴を、身近な現象を切り口にして、ときに流体と比べながらわかりやすく説明してくれます。私は特に「第2章 吹き飛ばされる」に強い興味を持ち、そこから学部3年生向けの実習科目に「風紋形成」の数理モデリングとコンピュータ・シミュレーションを取り入れるようになりました。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 生物学。流体力学は基本原理が既に確立されていますが、生命現象は未だにわからないことだらけのように見えます。そんな生命の謎とじっくり向き合ってみたいと思います。 |

