水工学

流体

防災・減災に貢献! 河川や大気の流れを高精度・高効率に予測する手法の開発


横嶋哲先生

静岡大学 工学部 数理システム工学科(大学院総合科学技術研究科 工学専攻 数理システム工学コース)

出会いの一冊

面白くて眠れなくなる流体力学

石本健太(PHP研究所)

一般向けの流体力学の書籍はいろいろありますが、本書は気軽に読めるレベルであり、身近な例を足掛かりとしてわかりやすく書かれています。「流体力学」という耳慣れない学問が実はとても身近に存在していることを実感できるとともに、「オレオ」の話に代表されるように、そんなことも研究テーマになるんだ!(=学問って自由なんだ!)といったことも感じ取れる内容になっています。

こんな研究で世界を変えよう!

防災・減災に貢献! 河川や大気の流れを高精度・高効率に予測する手法の開発

障害物の抵抗の推定精度が流れの予測を大きく左右する

河川や大気の流れを正しく予測することは、天気予報をはじめ、私たちの生活を安全で快適にするために欠かせません。ところが、こういった自然の流れには建物や樹木など、さまざまな形や大きさの障害物があり、それらが流れに及ぼす抵抗(流体力)をどれだけ正確に見積もれるかが、予測の精度を大きく左右します。

巨大なスーパーコンピュータを使えば、個々の障害物の形やその周囲の流れを正しく考慮できて高精度な予測が可能ですが、膨大な時間とコストが必要です。私たちは、もっと身近なパソコンでも手軽に高精度な予測ができることを目指し、そのカギとなる「流体力を巨視的に(個々の障害物形状やその周囲流れの細部がわからなくても)正しく推定する方法」に挑戦しています。

障害物に乱されない流れこそ基準

流体力は「流れの速さの2乗に比例する」ことが経験的によく知られていますが、障害物が複数並んでいるとき、基準とすべき「流れの速さ」が何を指すのか、実はまだはっきりしていません。

私たちは、その障害物を除いた場合にそこを過ぎる流れ(その障害物に乱されない流れ = undisturbed flow)こそが基準とすべき「流れ(の速さ)」だと考え、このアイデアの実証と、障害物を実際に取り除かなくてもundisturbed flowを推定できる方法の確立に挑んでいます。

これが実現すれば、大雨や強風による河川氾濫や建物被害を前もってより正確に予測でき、より適切な避難誘導や事前対策につなげることで、防災・減災に寄与すると期待されます。

樹木群模型(図中の矩形領域内に9行33列の円柱群を正方格子状に配置)を左から右に過ぎる流れの数値シミュレーション例(平均主流速分布):左 - 7920x1274の計算格子点を用いた高解像数値シミュレーション結果;右 - 660x293の計算格子点を用いた疎視化数値シミュレーション結果(Undisturbed Flowを考慮して流体力を巨視的に評価)。計算格子点数が1/50倍以下で、障害物の形や大きさ、配置パターンの詳細な情報を与えられていないにもかかわらず、流れの主要な特徴(障害物群の特に下流寄りで流れがかなり遅く(青色)なり、他方で障害物を回避してその両脇で速い流れ(赤色)が生じる)が良く捉えられていることがわかる。
樹木群模型(図中の矩形領域内に9行33列の円柱群を正方格子状に配置)を左から右に過ぎる流れの数値シミュレーション例(平均主流速分布):左 - 7920x1274の計算格子点を用いた高解像数値シミュレーション結果;右 - 660x293の計算格子点を用いた疎視化数値シミュレーション結果(Undisturbed Flowを考慮して流体力を巨視的に評価)。計算格子点数が1/50倍以下で、障害物の形や大きさ、配置パターンの詳細な情報を与えられていないにもかかわらず、流れの主要な特徴(障害物群の特に下流寄りで流れがかなり遅く(青色)なり、他方で障害物を回避してその両脇で速い流れ(赤色)が生じる)が良く捉えられていることがわかる。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学3年生までに学んだ専門科目の中で水理学が最も難しく感じられたことに加え、担当教員の人柄・個性に興味があって、4年進級時に環境流体力学系の研究室を選びました。卒業研究でプログラムを組んで流体の振る舞いをコンピュータ上に再現する「計算流体力学」に夢中になりました。実際の実験はさまざまな物理的制約に縛られますが、数値シミュレーション(数値実験)にはそういった制約がなく、工夫や想像力次第で何でもできる(未だにできていないことも多々ありますが、きっといつかは…)点に惹かれたように思います。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「Undisturbed Flowを基盤とする流体力の巨視的評価の高精度化」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室のメンバーと。大学の屋上で、浜松市中心部を背景として撮影。
研究室のメンバーと。大学の屋上で、浜松市中心部を背景として撮影。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等

(3) ソフトウエア、情報システム開発

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私は一貫して土木工学で教育を受けましたが、現在の所属学科はとても学際的・分野横断的で、数学・物理学・情報科学・経営工学・土木工学など多様なバックグラウンドを持った教員で構成されています。きっとみなさんの興味と一致する学問や研究分野・テーマに出会えるはずです!

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

100万回生きたねこ

佐野洋子(講談社)

高校生のときに、国語の先生に紹介されて出会った絵本です。主人公のねこは100万回の生と死を繰り返しますが、あるできごとを経て、「ねこはもう、けっして生き返りませんでした」。どうして生き返るのをやめたのか?という謎に想いを巡らせてみてください。


生物と無生物のあいだ

福岡伸一(講談社現代新書)

分子生物学の面白さはもちろん、日本では偉人とされる野口英世に対するアメリカでの評価や、20世紀最大の発見とされるワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の発見をめぐる舞台裏など、さまざまな科学者の素顔が赤裸々に描かれています。さらに若手研究者のアメリカ滞在記としての一面もあり、研究や研究者に少しでも興味がある人には、ぜひ手にとってほしい一冊です。


砂時計の科学

田口善弘(講談社学術文庫)

物理学者の友人から勧められて出会った一冊です(注:私が読んだのは『砂時計の七不思議:粉粒体の動力学』ですが、こちらはもはや絶版状態で、最近、これを原書とした『砂時計の科学』が新たに出版されました)。

私の専門は流体力学(水や空気などの「流体」の運動を扱う学問)ですが、この本は砂や雪といった「つぶつぶ」の集まりである粉粒体の特徴を、身近な現象を切り口にして、ときに流体と比べながらわかりやすく説明してくれます。私は特に「第2章 吹き飛ばされる」に強い興味を持ち、そこから学部3年生向けの実習科目に「風紋形成」の数理モデリングとコンピュータ・シミュレーションを取り入れるようになりました。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

生物学。流体力学は基本原理が既に確立されていますが、生命現象は未だにわからないことだらけのように見えます。そんな生命の謎とじっくり向き合ってみたいと思います。


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