建築環境・設備

環境負荷の解析

約100件の建築物を徹底分析 環境への負荷が小さい建築の提案


小林謙介先生

県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 環境科学コース(総合学術研究科 生命システム科学専攻)

出会いの一冊

みんなで考える脱炭素社会

松尾博文(日本経済新聞出版)

脱炭素社会の構築に向けて、現状や課題などがわかりやすく、ビジュアル解説された書籍です。はじめに、地球温暖化の原因や化石燃料等の使用実態、世界や日本における取組や課題などについて述べています。それを踏まえて、脱炭素社会の実現に向けて、様々な業界における挑戦の様子などをわかりやすく説明しています。

こんな研究で世界を変えよう!

約100件の建築物を徹底分析 環境への負荷が小さい建築の提案

環境影響を計算する手法=ライフサイクルアセスメント

私は、CO2排出量などの環境影響を計算する手法であるLCA(ライフサイクルアセスメント)をテーマに研究を行っています。その中でも、環境への負荷が小さい建築物づくりに役立つ研究に力を入れています。

これから建てる建築物の環境負荷をより小さくする方法を提案するためには、これまでに建てられた建物を対象に、環境負荷がどこでどのように発生していたかを把握することが重要です。そこで、過去に建設会社によって建築された約100件の建築物を対象にして、環境負荷がどのように発生しているか、解析しました。

建築物の用途や建築資材によって環境影響が異なる

解析を進めると、建築物の用途(オフィスビル、マンション、工場、倉庫など)などによって環境負荷の排出傾向が違うことがわかってきました。また、環境問題は気候変動(温室効果ガス)だけではなく、エネルギー・資源・廃棄物・酸性化・オゾン層破壊などの影響領域もあります。影響領域ごとに分析すると、大きな環境影響を及ぼす資材の種類が異なることもわかってきました。

このように社会的に関心が高いのは気候変動ですが、それだけでは他の重要な環境影響を見落としてしまう可能性もあります。私たちの研究では、多様な環境影響を総合的に評価している点も大きな特徴です。

建築物にかかわる工程はとてもたくさんあります。これらの解析結果を踏まえ、だれが何をすべきなのかを検討しています。例えば、材料を製造する立場の人、建物の設計をする立場の人、使う人、解体・廃棄する人が、それぞれの立場で何を考え、どう行動すれば環境負荷が低減できるかを提案しようとしています。

建築物の主要材料の一つである木材の伐採現場に調査に行った時の写真です。普段はパソコンを使った数値解析がメインですが、数値解析を実施した結果を踏まえて、環境負荷削減のために、ものづくりの現場で何ができるかを調査した例です。
建築物の主要材料の一つである木材の伐採現場に調査に行った時の写真です。普段はパソコンを使った数値解析がメインですが、数値解析を実施した結果を踏まえて、環境負荷削減のために、ものづくりの現場で何ができるかを調査した例です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

学生時代は、建築を学んでいました。卒業論文・修士論文・博士論文では、当時大きな問題になっていた建築廃棄物のリサイクルのあり方について研究していました。

研究を進めるうちに、建築廃棄物の解決には、建築のことだけを考えていては解決に至らず、リサイクル製品の利用先である他産業のことも考えなくてはいけないことを痛感しました。また、廃棄物の問題だけを考えていればよいかという疑問も持つようになりました。そこで出会ったのがLCAです。それ以降、約20年間、LCAに関する研究を続けています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「約100件の実建物分析に基づく設計初期段階のLCAのための指針・データベースの構築」

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学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) コンサルタント・学術系研究所

(2) 建設全般(土木・建築・都市)

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) コンサルタント(ビジネス系等)

(2) 製造・施工

(3) 中学校・高校教員など

◆学んだことはどう生きる?

卒業生の多くは、環境をキーワードに非常に多様な職業についています。なぜなら、環境問題は、自治体であろうと、民間企業であろうと、どのような職業でも必ず取り組まなくてはならない時代だからです。

例えば、環境コンサルタントや、建設会社、自治体に就職する学生も少なくありません。中には、環境コンサルタントの会社に就職して、自分でLCAに関するコンサルタント事業を立ち上げた卒業生もいます。また、就職した会社で、その会社で生産している製品のLCAを実施することを仕事にしている卒業生もいます。

先生の学部・学科は?

私が所属している、生物資源科学部生命環境学科環境科学コースは、環境科学をキーワードに、多様なバックグラウンドを持った先生方が所属している、とてもユニークなコースです。私は建築出身ですが、化学・物理・生物など様々なバックグラウンドを持つ先生が所属しており、多様な視点から環境問題を学ぶことができるのが特徴です。

先生の研究に挑戦しよう!

(1) 環境問題に関心を持とう
皆さんが身近に手にするような製品にも、たくさんの環境に関する情報があります。中でも最も身近なものの一つに、エコマークなどに代表される環境ラベルがあります。文房具や食品など、身近なものにたくさん表示されていますから、色々なマークを探してみて、その意味を調べてみてください。

(2) LCAを実施してみよう
LCAを用いた環境負荷の算定は、掛け算と足し算を使うだけで計算ができます。自分の興味があるものや活動について、ぜひ、環境負荷量の算定にチャレンジしてみてください!

中高生におすすめ

みんなで考える地球環境 Q&A145

マイク・バーナーズ-リー 藤倉良:訳(丸善出版)

世界における環境問題(気候変動、生物多様性、廃棄物など)について、関係する統計データ等をかみ砕いて、わかりやすく解説しています。特に、私たちに何ができるのか、という視点で記述されています。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

環境学でしょうか。私は大学時代は建築学を学んでいて、大学を卒業してから環境学を学びつつ研究活動をしてきました。18歳に戻れるなら環境学を一から網羅的に学んでみたいです。

Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子育てです。楽しいことも、大変なことも、毎日毎日本当にたくさんの刺激をもらっています。


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