知能機械学・機械システム

バイオロギング

ウミガメの省エネ泳法を探れ! 海洋動物の速さを測るセンサーの開発


高橋英俊先生

慶應義塾大学 理工学部 機械工学科

出会いの一冊

バイオロギング 最新科学で解明する動物生態学

日本バイオロギング研究会(京都通信社)

高校生には、大学で行う研究というのがそもそもどういったものかがわかりにくいかと思いますが、この本ではバイオロギングという研究の方法論が、生き物のふるまいをただ観察するだけでなく、センサーとデータを使って、研究を始める上での問い→解決する方法→得られたデータ→どう解釈するか、と進む科学的なプロセスの筋道がわかりやすく示されています。

バイオロギングの研究に興味がある高校生はもちろん、そうでない人も将来の進路を考える上で視野が広がる本になっているかと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

ウミガメの省エネ泳法を探れ! 海洋動物の速さを測るセンサーの開発

ウミガメの優れた遊泳戦略がようやく見えてきた

海の中では目に見えにくい海流が常に動いており、ウミガメなどはこの流れを巧みに利用して、“追い風”ならぬ“追い海流”に乗り、泳ぐ際のエネルギー消費を抑えて効率よく移動していると考えられています。

こうした優れた遊泳戦略は、動物にセンサーとデータロガーを装着して自然環境下の行動を記録するバイオロギング研究により、近年ようやく具体的に示されてきました。さらに理解を深めるには、遊泳中の動物が周囲の水に対してどれだけの速さで進んでいるか(対水速度)を測定することが不可欠です。しかし、実際の海洋動物でこの対水速度を高精度に測定した例は、いまだ多くはありませんでした。

実験では、人のバタフライとの類似も観察

我々は、飛行機で対気速度を測るピトー管というセンサーを基に、海中の動物に装着して対水速度を計測できるセンサーを開発しています。従来のピトー管とは異なり、内部に圧縮されにくい油を満たし、孔を薄い膜で封止するなどの工夫により、動物が深く潜水しても、息継ぎで空気中へ出入りしても、内部に気泡が入らず、流速を安定して計測できるようなセンサーを作っています。

現在、完成したセンサーをウミガメのバイオロギング装置に組み込み、実際の遊泳時の対水速度を計測する実験を行っています。その結果、ウミガメのヒレの羽ばたきに同期して対水速度が増減することが、人のバタフライと同様のパターンで観察されつつあります。

今後は、GPSで得られる対地速度(地表に対する速さ)との比較などを進め、海洋動物が長距離移動を省エネルギーで実現する仕組みの理解を深めたいと考えています。

ウミガメのバイオロギング実験の様子です。背中に製作したセンサーが取り付けてあります。
(東京大学大気海洋研究所協力)
ウミガメのバイオロギング実験の様子です。背中に製作したセンサーが取り付けてあります。
(東京大学大気海洋研究所協力)
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は高校生のころからこの分野に強い志があったわけではありませんでした。大学で機械系学科に進み、4年生のときに生物規範に学ぶ微小センサーやアクチュエーターを研究する研究室に入りました。

そこで「生物はどのようなメカニズムで運動するのか」に関心を抱き、現在の研究へとつながりました。振り返れば偶然の出会いの連続でしたが、そのおかげで今は非常におもしろい研究に携わることができ、日々の探究を心から楽しんでいます。

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「海洋動物のバイオロギングのためのピトー管型流速センサの開発」

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実験室にあるセンサーを校正する回流水槽です。バイオロギング実験を行う前に製作したセンサーの応答を確認します。
実験室にあるセンサーを校正する回流水槽です。バイオロギング実験を行う前に製作したセンサーの応答を確認します。
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中高生におすすめ

BBC ライフ・イン・ザ・アンダーグロウス

デイビッド・アッテンボロー

地球上の動植物のダイナミックな営みが迫力ある映像で見ることができ、自分も子供の頃に感銘を受けました。色々なシリーズがあるので、自分の興味がどういったものにあるのかも知ることができるかと思います。

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