数理情報学

数理最適化

複数配送手段のより良いルートを最適化理論で高速計算


山下真先生

東京科学大学 情報理工学院 数理・計算科学系

出会いの一冊

「ファインマン物理学」を読む 量子力学と相対性理論を中心として

竹内薫(ブルーバックス)

量子力学と相対性理論が発展したことで数学の理論が発展した部分もあるし、数学の理論が発展したことが量子力学と相対性理論の発展につながった部分もある。量子力学の基礎数式の一つであるシュレディンガー方程式について数理最適化の国際研究会議で聞くこともある。「研究分野はそれぞれが独立しているのではなく、みんなつながっているんだ」ということを実際に知るには、専門だけでなく、いろいろな知識を吸収してほしい。

こんな研究で世界を変えよう!

複数配送手段のより良いルートを最適化理論で高速計算

ドローンと船 どう使うといちばん良いか

遠くの初めての駅に行くとき、路線検索で「どこで乗り換えれば最短で着くかな?」と調べるようなことがあると思います。このような「最短ルートを見つける計算」は、宅配便のルート作りの計算にも利用されています。

いま研究しているのは、ドローンと船が連携するような協同配送です。ドローンは船より速いけれど飛行距離が短く、船はゆっくりでも遠くまで運べる。複数の離島に配送するときに、どこでドローンを船から飛ばして、どこで戻ってくるようにするのがいちばん良いのか、選択肢は膨大です。ここで数理最適化の出番となります。

数学の面白さとコンピュータの面白さ

数理最適化は複数の選択肢からベストなものを数学の理論に基づいて探す研究分野ですが、ドローンの飛行座標をコンピュータ上で計算するために錐最適化理論と呼ばれる理論を用いてプログラムを作っています。

錐最適化理論は対象となる問題の構造をどれだけ上手く利用できるかで、同じベストな結果を見つけるのでもコンピュータ上で計算にかかる時間が1000秒から1秒まで短くなったりします。どれだけ計算時間を短くできるか、まるでパズルをやっているような面白さがあります。

数理最適化は、数学の理論で考えてコンピュータで試す、つまり数学の面白さとコンピュータの面白さ、一粒で二度おいしい。通学の乗り換えや文化祭での役割分担など、“全体が良くなる一手”を考えることが数理最適化へとつながっています。

ドローンと船が協同配送しているイメージ。船にドローンを載せて、ある程度訪問先に接近したらドローンだけが飛び立って訪問して、その間にゴールに向かって移動している船に戻ってくる。このようにすることで船だけのときよりも短い時間ですべての訪問を行うことができる。
ドローンと船が協同配送しているイメージ。船にドローンを載せて、ある程度訪問先に接近したらドローンだけが飛び立って訪問して、その間にゴールに向かって移動している船に戻ってくる。このようにすることで船だけのときよりも短い時間ですべての訪問を行うことができる。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと錐最適化理論を研究していましたが、ドローンと船が連携するような協同配送に興味を持ったのは、海外の研究者から「錐最適化理論がこんなふうに使われているよ」と教えてもらったことがきっかけです。

数理最適化はいろんな分野とつながっているので、いろんな研究者と共同研究できるところが面白い。以前は錐最適化理論を使って遺伝子関係の最適化計算の研究も行っていましたが、これも海外の研究者に教えてもらった内容がベースになっています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「錐最適化理論に基づく協同配送ルート最適化問題に対する数値解法の開発」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
2025年11月、台湾オペレーションズ・リサーチ学会での基調講演
2025年11月、台湾オペレーションズ・リサーチ学会での基調講演
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) ソフトウエア、情報システム開発

(2) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

(3) コンサルタント・学術系研究所

◆主な職種

(1) システムエンジニア

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 設計・開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

簡単なニューラルネットワーク(2入力、2出力で中間層が1層程度)で学習する場合に、最急降下法で計算した場合とNesterovの加速法で計算した場合にどれくらい計算時間が変わるかを比較してみましょう。

中高生におすすめ

彼女は一人で歩くのか?

森博嗣(講談社文庫)

ウォーカロンというアンドロイドよりも人間に近い存在が登場する未来のSFで、Wシリーズの1作目。Wシリーズと続編にあたるWWシリーズでは、ウォーカロンだけでなく人工知能や仮想世界の内容も大きなウェイトを占めるようになる。実際の世界で人工知能が発展したら、こういう世界になっていくんだろうか、と考えてみたりもする。


第六大陸

小川一水(ハヤカワ文庫)

月面に新しい生活の場を作るというチャレンジ(こちらもSFだけど時間軸は現在に近い)に、新しい科学と人と人とのつながりで開拓していくところが、まさに科学のフロンティアが人類のフロンティアであることを教えてくれる。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

夏は韓国で冬は台湾で暮らしたい。共同研究でお世話になったし、両方ともご飯がおいしい。

Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

サガ・フロンティア2:サガフロ2は人生だから。いろんなことの節目で「あのときのセリフはこういう意味だったのか」とわかるようになったりすることがある。

Q3.好きな言葉は?

Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.
(個人的には、Learn は Research にしても良いと思っている。出版された論文は研究者個人が亡くなっても残るから。)


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ