睡眠の変化はGDPレベルの経済変動を引き起こす!?~睡眠の経済学

ダイナミックな動きを捉える
私の専門はマクロ経済学になります。その名前の通り、経済を「大きな視点」で見ることが特徴で、主に経済成長や不況などが分析対象になっています。
他にもう一つ比較的知られていないけど大事な特徴があり、専門用語で「動学」と呼ばれるのですが、時間を通じたダイナミックな変化を捉えるということです。この点で、「環境経済学」や「国際経済学」のようなテーマで区切られた学問に比べて、マクロ経済学は分野ではなく「大きな動き」という特徴を捉える学問です。
貨幣、女性の労働形態、コロナ禍の経済政策
そういう意味で、私の研究は一貫しつつもテーマは多岐にわたります。一番長く続けているのはマクロ経済学の中心テーマでもあるお金についての研究です。お金は人から人へと手渡されて循環していくもので、またその価値の変動はインフレやデフレを引き起こしますが、これらの現象の数理的研究を行ってきました。
また、まったく別のテーマでは、農業から工業、サービス業へという半世紀以上にわたる産業構造転換の中で、女性の労働形態がどのように変化したかを長期的に検証しました。政策問題としては、コロナ禍で刻一刻と変化する感染状況の中で、緊急事態宣言や10万円給付金など経済政策が、日本全体という規模でどのような経済的影響をもたらすかという研究にも従事しました。
「睡眠」を社会活動全体の活性化に
最近は、意外かもしれないですが、睡眠の研究に注力しています。深夜まで勉強すると次の日に授業中に眠くなり、寝不足はその後も影響するというように睡眠はまさに動学です。また睡眠を夜に行う昼間の活動への投資だと捉えると、全国民が一日に何時間もコストをかけている投資というわけで、睡眠の変化はGDPレベルの経済変動を引き起こします。
人々が学校や職場など生活の中でどのように睡眠のタイミングを決めるのかメカニズムを解明しつつ、そして逆に睡眠の変化を昼間の社会活動全体の活性化に繋げていくようなイノベーションを目指しています。

私が高校生だった頃は平成不況と呼ばれていた時期で、日本経済の低迷から脱するための方策として構造改革か景気対策かという論争が日々行われていました。それを見ながら、どっちなんだろうかと疑問に思ったのがマクロ経済学に興味を持ったきっかけです。
また、クジラが好きで、経済学以外では海洋哺乳類の鳴き声の音波について大学で研究をしたいと思っていたのですが、実はそれが大きなものに興味を持つきっかけだったのかと思っています。
「新型コロナウイルス危機のマクロ経済分析」

◆ 久保田先生のHP

私のゼミは今年から始まったばかりなのですが「社会科学をエンターテイメントにする」という内容で行っています。たぶん日本で唯一のゼミだと思います(笑)。
経済学部では、通常は何かを調べたりデータを分析したりして卒論「論文」を書きます。私のゼミでは卒業「制作」を目指していて、例えば企業合併をテーマにしたカードゲームを作る、不正会計などの推理小説の執筆、貧困問題を風刺画として絵に描くなどが目標です。もしご興味があればぜひ!
高校生が経済に興味があって例えばレポート課題などを書く場合、数理モデルや統計分析は大学で学べると思いますので、経済を実地体験するのをお勧めします。例えば、失業問題に興味があれば、地域のハローワークに行って職員に話を聞いてみるのが良いです(大学時代ですが私も行きました)。興味がある対象を書籍やインターネットで調べるのも重要ですが、直接担当者に聞くというのは一次資料として貴重な研究になります。
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Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? トルコ:文化とネコが好きなため |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? ヴァイオレット・エヴァーガーデン |
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Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? ポケモン(今でもやっています) |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? ウクレレ:中学生の頃から、ずっと一人で弾いています |