船舶海洋工学

乱流

乱流は難しいが魅力的! 船の開発に必要な模型船での乱流実験


高木洋平先生

横浜国立大学 理工学部 機械・材料・海洋系学科(工学研究院 システムの創生部門)

出会いの一冊

流体力学超入門

エリック・ラウガ 石本健太:訳(岩波科学ライブラリー)

流体力学の理論はとても難しく、特に乱流となると統計理論も出てくるため、初学者には難しい学問体系です。しかしながら、水や空気などの流体が生み出す現象や流れの模様はなぜか人を惹きつける魅力があると思います。

みなさんと流体力学との接点はいろいろなところにあると思うので、流れの不思議について解説した本を読んだら、身の回りの現象や生物の形に対する見方が変わってくるでしょう。もちろん、興味関心の対象が流体力学ではなくても構わなく、何かを学んだら違う視点でいろいろなものを観察してみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

乱流は難しいが魅力的! 船の開発に必要な模型船での乱流実験

「ゆく川の流れ」は乱流

鴨長明の方丈記では、「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と述べており、これが人生の本質であるとされています。

私は"流れ"に興味を持ち、流れを数学や物理学の視点から解明する流体力学を研究しています。特に、流れが乱れた状態(乱流と呼びます)を制御する/利用するための技術開発に取り組んでいます。

乱流は方丈記の中で述べられたような性質を持ち、同じような流れの状態が繰り返されることはなく、そのふるまいを数学的に定義することは困難であるとされています。しかしながら、乱流の性質は多くの流体力学研究者をワクワクさせ、各研究者が独自な視点で研究に取り組んでいます。

実船と模型船では、乱流が異なる

私の現在の専門分野は船舶海洋工学であり、応用面では船舶の燃費性能を良くするための方法を流体力学的な観点から調べています。一般に船を開発するときは、300メートルまでに達する実船スケールの流れでの船の流体力学的性能を推定するために、100メートルぐらいの水槽において数メートルの模型船を用いて実験を行います。

このとき問題となるのは、実船と模型船では流れの強度が異なり、実船では完全に発達した乱流ですが、模型船では乱流になるかならないかの状態(遷移状態)になってしまいます。そのため、同じような乱流状態を実現するために、模型船に小さい突起を付ける乱流促進装置が使われますが、効率的に促進されるための方法や実船との違いを見出すための研究を行っています。

回流水槽における平板抵抗試験の準備
回流水槽における平板抵抗試験の準備
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

中学生のときは部活に熱中していた以外に、休みの日は釣りに出かけていました。釣れればもちろん楽しいのですが、釣れなくても水面を眺めていると心が落ち着き、釣りに来てよかったな、といつも感じます。大学は研究者になろうというよりも、地に足をつけてものづくりをする技術者となろうと思って工学部の機械系に入ったのですが、流体力学に出会い、乱流の性質を自分なりに見つけることを日々行っています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「計算と計測のデータ同化による効率的乱流促進方法の探索」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
大型100m長水槽を用いた模型船の抵抗試験
大型100m長水槽を用いた模型船の抵抗試験
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 船舶・機器

(2) 交通・運輸・輸送

(3) 自動車・機器

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 生産技術(プラント系)

◆学んだことはどう生きる?

造船会社の技術研究所において、新しい船型開発のための研究を行っている卒業生がおり、従来的な技術手法に捉われない新規技術の開発を行っています。私たちの研究室では水槽を活用した実験と、コンピュータを用いた数値解析を両方実施しており、両者のデータを比較することによって流体の本質を見極めて流体運動を記述する代替的な手法を開発しており、そのような経験や知識が造船開発の分野でも活きていると感じます。

先生の学部・学科は?

船舶海洋工学が学べる大学は全国にいくつかありますが、船舶や海洋構造物の設計・システムデザインを体系的に学べる学科はあまりありません。本学は100メートルの大型長水槽を有しており、模型船を使った実験研究を行うことができます。実際に流れの様子や船舶の運動を目にすることができるので、そこから新たな発想や研究テーマを見出すことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

野球の球種はストレート、フォーク、カーブなどいろいろなものがあります。回転の有無、ボールが回転する向き、回転数、などをプロ野球の動画などから調べ、ボールが流体(空気)からどのような力を受けているか調べましょう。また、なぜそのような力が発生するのかを調べてみましょう。

中高生におすすめ

方丈記

鴨 長明(角川ソフィア文庫)

古典ですが、現代語訳がついており、コンパクトで読みやすいです。いわゆる古典であっても、先人の視点を現代の科学技術や世の中と結びつけて読むと面白いです。


吾輩は猫である

夏目漱石(新潮文庫)

登場人物の寒月君のモデルは寺田寅彦だと言われています。寺田寅彦に興味を持った方は随筆集も読んでみてください。


MASTERキートン

浦沢直樹 脚本:勝鹿北星、長崎尚志(ビッグコミックススペシャル)

少し古くなりましたが、地政学、人生哲学、研究・勉学への情熱、などが学べる漫画です。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ノルウェーなどの北欧諸国:住んでいる人の気質が日本人に近く、自然が豊富なところ。

Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

教科書販売:3月にまちの書店のお手伝いで市内の中高を巡って販売してました。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

土日は平日のための弁当作り置きを作っています。慣れると1-2時間で4-6品作れます。

Q4.好きな言葉は?

明日できることは今日やらない


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