水中ロボットを制御!浅い海でも使える⾳響無線技術の開発
⽔中ロボットの遠隔操作技術に注⽬
近年、建設現場では、危険であったり過酷な環境に⼈が⽴ち⼊らずに作業するための無⼈化技術が急速に進んでいます。特に、波や⾵といった⾃然の影響を強く受ける海や港の⼯事では、⽔中ロボットを海上から遠隔で操作する技術に注⽬が集まっています。安全に水中ロボットを制御するためには、ロボットとの確実な無線通信や、正確な位置を知ることが非常に重要です。
浅い海ゆえの困難
ところで、水中では電波がほとんど届きません。電波を使用するスマートフォンのような通信機器やGPSのような測位装置は使えないので、⽔中でも遠くまで届く音波を使用した技術を使います。
しかし、浅い海では⾳が海底や海⾯に何度も反射する(マルチパスと呼ばれます)ことで、強いエコーが発生します。また、水中ロボットは作業のために移動すると、ロボットから発信する⾳の周波数が変化するドップラー広がりと呼ばれる現象が発生します。これらの現象の影響で、受信した⾳が元の⾳と⼤きく違ってしまい、通信に誤りが出たり、正確な位置がわからなくなったりするのです。
私たちの研究グループは、こうした問題を解決し、浅い海でも使える⾳響無線技術の開発に取り組んでいます。これまでに、送りたい情報を時間や周波数で分割して送信する手法などを使うことで、マルチパスやドップラー広がりの影響を受けにくくし、正確な通信ができる技術を開発してきました。また、誤差の原因となる不要な反射⾳を取り除き、必要な音波だけを使って、正確な位置を測れるシステムも作ってきました。
ノートとペンでアイデア そして繰り返される実験
私たちの最終⽬標は、浅い海において、誰でも簡単に確実に使えるシステムを完成させることです。でも、その道のりは決して平坦ではありません。まずは過去の研究を調べたり、実際に海へ⾏って、⾳の反射の仕⽅や、周波数の変化の様⼦を調べます。次に、マルチパスやドップラー広がりの影響をどうやって乗り越えるかを、数学を使って考え、ノートとペンでアイデアを練ります。すぐに答えが出るわけではありませんが、ある⽇ふとひらめいたアイデアを、今度は実験で試してみます。
実験は⼩さな⽔槽から始め、うまくいけば⼤学にある⼤きな⽔槽、さらに⼤型プールへとステップアップします。うまくいかないことも多いので、そのたびにまたノートとペンに戻って考え直します。最終的には浅い海での実験を⾏いますが、そこでシステムがきちんと動いたときは、それまでの苦労が⼀気に報われるほどの⼤きな達成感があります。
トラブルもある海の研究 仲間の支えあってこそ
海での研究は決して楽ではありません。⼀度沖に出ると、忘れ物をしても取りに戻るのは⼤変ですし、海⽔や⽔圧で装置が壊れたり、思いもよらないトラブルに⾒舞われることもあります。そんな困難を乗り越えられたのは、経験豊富な先輩研究者や、毎回実験に協⼒してくれる研究室の仲間たちの⽀えがあったからです。
とても難しい。でも、だからこそ⾯⽩い。それが、私の研究です。
学部時代は電波無線通信の研究室に所属し、過酷な環境下でもデータを伝送できる通信方式の研究に取り組んでいました。無線通信では、送信データをx、通信路の影響をH、受信データをyとすると、基本的にy=Hxという関係が成り立ちます。私は、このyから元のxを正確に推定する方法について、数学的手法を用いて探究していました。
大学院進学後は、縁あって音響を専門とする研究室へと移籍することになりました。音波は電波と比べて実験のハードルが格段に低いため、これまで培ってきた無線通信技術を音波に応用して実験することを思いつきました。特に、電波の届かない海中では、音波を利用した通信が行われていることを知ったことが、大きなヒントとなりました。
このように、複数の研究分野に身を置いたことが、海中における音響無線技術の研究を始めるきっかけになりました。
「海老原 格先生のページ(researchmap)」
◆主な業種
(1) 通信
(2) 電気機械・機器(重電系は除く)
(3) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
卒業生は、通信・電気電子・機械・土木・建築・農業など、幅広い分野のメーカーや研究機関で活躍しています。研究室では、各自が異なるテーマに取り組んでいるのですが、その過程で自ずと論理的思考力、国語力(読解力・記述力)、およびコミュニケーション能力が養われているようです。
また、研究の合間には、自然発生的に「ナブラ演算子ゲーム」「素数大富豪」「mod13スピード」などのユニークなゲームが流行するなど、好奇心のある学生が多い気がします。このような取り組みを通じて培われた能力もあってか、卒業生は多様な分野でそれぞれの力を発揮しています。
私が所属する筑波大学工学システム学類には、機械工学、情報工学、電気電子工学、建築学、土木工学、システム工学、原子力工学、エネルギー工学、環境工学、ロボット工学、航空宇宙工学、リスク工学など、非常に幅広い分野を専門とする教員が所属しています。
1年生から2年生前期までは、これらの分野に共通する基礎科目を学び、2年生後期からは「知的・機能工学システム主専攻」と「エネルギー・メカニクス主専攻」に分かれて専門的な学びを深めます。卒業研究では、先に挙げた多様な分野の中から一つの研究室を選び、各自のテーマに取り組みます。このように、工学を横断的かつ俯瞰的に学べることが、当学類の大きな特徴です。
また、筑波大学は総合大学であり、1年生から法学・医学・芸術など他学部の授業も履修できます。さらに、体育の授業が非常に充実しており、先生が実は元オリンピック選手だったりします。開設科目数も多く、多様なスポーツに触れられるのも魅力の一つです。なお、工学システム学類は「隠れ体専(体育専門学群)」と呼ばれるほどスポーツが得意な学生が多いのですが、その理由はいまだ謎のままです。
| Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 国土が非常に平坦で自転車社会が発達しており、自然も豊かで、私の住んでいるつくば市と環境が非常によく似ているオランダでしょうか。 |
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| Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 小学5年生の頃から、ポケモンシリーズを継続して遊んでいます。中学生のときには、「ゲームをやりたいけれど、英単語も覚えなければならない」という状況に直面し、解決策としてポケモンの英語版を購入。楽しみながらプレイするうちに、自然とさまざまな英単語を覚えることに成功(夢中になるというのは恐ろしい)。ただ、当初151種類だったポケモンも、今では数が大幅に増え、最近は名前を思い出せないことも。それでも、ポケモンの世界観は今でも魅力的ですね。 |

