船舶海洋工学

コンクリート材料

微生物が海のコンクリート構造物の寿命を延ばす


牧田寛子先生

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科(海洋科学技術研究科 海洋資源環境学専攻)

出会いの一冊

生命はなぜ生まれたのか 地球生物の起源の謎に迫る

高井 研(幻冬舎新書)

地球の生命の起源をテーマに、40億年前の原始地球の過酷な環境下で最初の生命がどのように誕生し進化していったのかを、生物学と地質学の両面から、私の研究所時代のボスである高井研博士が自身の研究を通して解き明かしていきます。

こんな研究で世界を変えよう!

微生物が海のコンクリート構造物の寿命を延ばす

洋上や海中に広がる可能性

現在、海洋環境の利活用が注目されています。陸地が少ない日本では、エネルギー生産を洋上や海中で行おうと考えています。また海底の広く安定した低温環境を活用して、巨大サーバーやエネルギー物質のパイプラインなどの設置場所として活かそうとしています。その際には必ず陸地と同じような人工構造物を建造することが必要となります。

私の研究では、今後海洋環境中に陸上と同じような社会基盤を支える人工構造物(インフラストラクチャー)を建造した際に、それらの建造物が周囲の環境にどのような影響を与えるのか、またその構造物に周囲の生物はどのような影響を与えるのかを明らかにし、双方にとって良い影響を与え合うような材料開発や形状の選定等に役立てたいと考えています。

インフラストラクチャーを守る微生物

以前は、微生物とコンクリートの関係は、あまり良いものとは考えられていませんでした。微生物の中には、鉄を腐食させてしまう微生物や、硫酸を硫化水素に変換してしまう微生物がいて、そのような微生物の影響により建物の崩壊につながることもありました。

しかし、微生物の中には、多糖とペプチドからなるバイオフィルムを作る微生物や、コンクリートの成分と似ている炭酸塩鉱物を作り出す微生物もいます。バイオフィルムを作る微生物がコンクリートの表面を覆うことで外部からの物質の侵入を防いだり、また炭酸塩鉱物を作る微生物は、コンクリートのひび割れを直したりすることで、コンクリート構造物の寿命を延ばすということが期待できます。

そこで、とくに深海環境に生息する微生物の機能を用いて、コンクリート材料の耐久性を向上させる方法やメカニズムを解明することを目的に研究を進めています。

船の中で研究室メンバーが作業をしています
船の中で研究室メンバーが作業をしています
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「深海環境での微生物機能を用いたコンクリート材の耐久性向上に向けて」

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研究室でのゼミの様子
研究室でのゼミの様子
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 非鉄

(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(3) 鉱業・資源

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 設計・開発

(3) システムエンジニア

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私の所属している東京海洋大学は、海に関わる様々な研究を行なってます。海の環境や海の生物、養殖や海産物加工、船のエンジンや洋上風力発電に関することなど、とても多岐にわたっています。そのため、講義や実習だけでなく、部活やサークルも海に関わるものが多いです。

東京海洋大学は、練習船を3隻持っています。大学2年生から船を使った実習にも参加できますし、海技士を目指したコースでは、7ヶ月の乗船実習で南極洋の観測にも行きます。海や海の生物、環境が好きな方にはぜひおすすめの大学だと思います。

研究のために海洋研究開発機構(JAMSTEC)の船舶による研究航海に参加することがあります。
研究のために海洋研究開発機構(JAMSTEC)の船舶による研究航海に参加することがあります。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

生命の起源を問う 地球生命の始まり

関根康人(ブルーバックス)

岩石の惑星である地球に、いかにして生命が生まれたのか、また現在の人類にも繋がる地球の循環と生命の関係について、あなたの理解を助ける一冊だと思います。


スノーボール・アース 生命大進化をもたらした全地球凍結

ガブリエル・ウォーカー(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

地球の歴史での大きなイベントである「全球凍結」について、地質学者がどのようにそれらの証拠を探し検証し、議論や論争をしてきたかがわかります。彼らの情熱に引き込まれ、きっと地学や地球科学の分野に興味を持つと思います。


極限環境の生き物たち

大島泰郎(技術評論社)

極限環境とは何か?過酷な環境に耐え、過酷な環境を好む生物等と、それらの生物から得られる我々の生活に役立っている事柄などが、とてもわかりやすく書かれています。

この本を読んで、好熱菌に興味を持ったら、『生命は熱水から始まった』(大島泰郎、東京化学同人)もおすすめです。私が大学生の時に読み、極限環境生物に興味を持つきっかけとなりました。

ちなみに私が大学生の時に読んだ中でおすすめの本としては、『生命の星・エウロパ』(長沼毅、NHK books)があります。地球上のさまざまな環境での生物の研究が宇宙生物学、他の惑星の生命の研究に繋げることができると示してくれた本でした。


決定版!グリーンインフラ

グリーンインフラ研究会:編(日経BP)

「グリーンインフラ」についてぜひ知ってもらいたいです。グリーンインフラは、自然が持つ多様な機能を賢く利用することで、持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用計画のことです。

これまでの堅牢であるが限られた目的のみに起用するインフラ(いわゆるグレーインフラ)だけでなく、自然の機能をうまく取り込んでいるグリーンインフラをうまく使うことが、より良い社会基盤を作ることができると考えられています。私の研究の一部もグリーンインフラの一端と言えるかもしれません。

また、『エネルギーと私たちの社会: デンマークに学ぶ成熟社会』(ヨアン・S・ノルゴー、新評論)などで、エネルギーの問題についても考えてもらいたいです。本書は約20年前に出版されたものですが、自分たちの生活と環境、エネルギーの問題をしっかりと理解し、どこに重きを置いて生活するか考え、私たちの未来は選択できるということを理解できるとても良い本だと思います。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ノルウェー:一年ほど在外研究で過ごしていましたが、素晴らしい自然、環境に配慮した生活、暖かな人柄など、とても素敵な時間を過ごすことができました。私が滞在していたのはルンデ島とベルゲンで、どちらも素敵な場所でした。ルンデ島には5月をピークに渡鳥のパフィンが戻ってきます。オーロラも見えますし、お魚も美味しいルンデ島にぜひ一度皆さんにも訪れてもらいたいです。

Q2.好きな言葉は?

心想事成


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