過去の人々の建築観を浮き彫りにし、建築の歴史を学ぶ意味を問う
人は建築にどのように向き合ってきたか
過去の建築について研究すること、あるいは歴史的な建築を壊さずに保存することに、どのような意味があるのでしょうか。建築の歴史を研究する建築史学という学問があり、歴史的な建築を保存する文化財の制度があるので、普段はわざわざ疑問に思うこともないかもしれません。
しかし、あえて問いを立ててみると、そこから、人が建築にどのように向き合ってきたか、建築をどのように意味づけてきたか、など、人と建築との根源的な関係を読み解く手掛かりが見えてきます。
江戸時代以前にも建築の歴史に関心を向ける人はいた
建築という概念も、建築学や建築史学という学問も、建築を保存する文化財の制度も、いずれも日本においては近代の産物です。しかし、江戸時代以前にも、建築(と近代になって事後的に認識されるようになったもの)の歴史に関心を向ける人びとは確かにいました。大工のみならず、武士、公家、神職、国学者など、その立場や目的はさまざまです。
近代の建築史学成立期、彼らは何を学んだのか
彼らが集積した知識・情報の一部は近代に建築史学が成立する段階で利用され、現在まで通用しているものもあります。それでは彼らは具体的にどのように過去の建築に関心を向け、何をどのように学んだのか。そして、それらは現在の建築史学の関心や扱う範囲、研究視角とどのように違うのか。それが、最初の問いにつながるのです。
建築の歴史へ向けられた多様な視点を拾い上げることで、過去の人々の建築観・歴史観を浮き彫りにするとともに、現在の建築史学という学問の枠組みについても問い直したいと考えています。
「明治前半期を中心とする日本建築史学成立前史の解明」
◆学んだことはどう活きる?
設計・施工などの建築業界や、行政の建設部局に進む学生が多くいます。専門性を活かすのであれば、大学や博物館等の研究職や、自治体の文化財担当職員、あるいは修理技術者などの道もあります。
身の回りの建築をよく見てみましょう。その屋根の形、天井の高さ、窓の位置、さまざまな材料や細かな寸法も、誰かが選択・決定したのです。いつ、誰が、どんな制約のもとで、どんな意図を持ってその建物をつくったのか、どんな人がそれを守り伝えてきたのか、想像してみてください。
また、玄関で靴を脱ぐこと、畳の和室での座り方、椅子やソファがある部屋での過ごし方、あるいは神社や寺院に行ったときのお参りの作法など、それぞれに文化的な背景があります。なぜそうするのか、昔はどうだったのか、他の国や地域ではどうなのか、調べてみてください。
当たり前と思っていたことを改めて見つめなおすと、意外な発見にたくさん出会えると思います。

